第十二話
次回の投稿は遅くなるかもと言ったが…
別に、投稿が早まってしまっても構わんだろう?
と、小ネタを入れてみましたが
投稿が早まった分、話は短めです
予定していたところまで入れるか悩みましたが、入れないことにしました
亀裂に吸い込まれて視界が真っ白に染まった
次の瞬間、地に足が着く感触がしたので、状況が確認出来るまでは姿勢の安定を重視して、片膝を着き逆の手を地に着けて状況を窺う
どうやら視界が真っ白に染まったのは強い光のせいではない様で、視界は何事もなく確保出来た
先ず目に映るのは石造りの壁面、ここは何処かの屋内だろうか、いやまだ決めつけるのは早いな、と視線を頭上に向ける
そうすることで、早々にここは屋内であることが確定した
もしここが屋外なら視界には燦々と照る太陽か、抜けるような青空か、煌めく星空か、静謐な月光か、何れかが存在しなければならないのだから
ところが、今この眼に見えるのは斑な灰色の壁、いや天井ただ一つだ
その斑な灰色も、部屋の中が薄暗いせいで殆ど黒に近い色合いにしか見えない
では何故灰色と判断したか、その答えは再び視線を床面と水平に戻した時に示された
あれは松明、だろうか?壁沿いに立てられた木組みの台の上に突き刺さった棒状の何かの先端がぼうぼうと燃え盛り、その炎の輝きで辺りを照らしていた
更に軽く首を左右に振って周囲を見回してみると、その松明が壁に沿って等間隔に幾つか並べられている様なのだ
そこまで確かめたところで、ふと耳に聞き覚えのない声が滑り込んできた
その声はこう話していた
「姫様!私はこのことを早速陛下にお伝えしてきます!」
「あれが異世界人か…」
「彼らがこの世界の救世主…」
「天啓の通りだ!これで我らは救われる!」
「おお…慈悲深き女神よ」
最後の言葉は意図的にシャットアウトした、クソ女神に感謝する言葉なんざ聞きたくもない
それはどうでもいいとして、確認している時に何故彼らの事に気付かなかったか
言葉の聞こえてきた方を見て得心が行った
彼らは俺たちの下、床面に完全に隠れてしまうくらいの位置に居たのだ
と、同時に判った事がある
自分達はどうも、祭壇か何かの上に居るらしい
ここで召喚の儀式でもしていたのだろう
そう思い至れば、薄暗い部屋も辺りを囲む様に配された松明、というか篝火?もそれらしく見えてくる
そこまで考えて、何故かクラスメイト達が何の反応も示さない事に疑問を感じた
もしや何かしら不可思議な力による拘束を受けているのか!?と焦燥感を感じ、近くに居た百合に声を潜めて話掛ける
「百合!どうした!?大丈夫か!?」
「……え?ああ、理…どうしたの?」
「どうしたの?って…何の反応もしないから、心配したんだよ。どうしたんだ?ボケーっとして」
「いやいや、こんな光景見せられて、普通平気じゃいられないよ」
そう言われて、それもそうか、と納得しかけたが、やはり疑念は残った
「いや、さっきまでの方が余程有り得なかっただろ。それに事前に説明されたし、そんなに驚くほどか?」
「さっきまでのは、こう…現実感に欠けると言うか、真実味が無かったから」
「それなら今だって十分に現実味が無いんだが…」
「まあ、そうなんだけど…言われてみればなんでだろう?」
そこまで訊ねて、疑念に対する答えが浮かび上がってきた
と、言っても大したものじゃない
確かにどちらも現実味に欠けるが、あの謎の空間は本当に何も無かった
もしクラスメイト達が居らず女神も存在しなかったら、発狂していたんじゃないか、と思うほど何も無かった
それに比べれば、今は天井が壁が床が在る、何よりご当地のお歴々がお目見えときた
非現実の権化の様な巨女に比べれば、現実感も一入感じられるだろう
一先ず、現地人の攻撃行為では無かった事に安堵していたら、取り囲む人の壁の中から一人が歩み出して来て言葉を発した
「異世界人の皆様。私はここ、カエシウス王国の第一王女 アイギナ・ファーレン・カエシウスと申します」
どうやらお姫様らしい、そういえばさっき姫様とか言ってたな
そんな事を考えながら、彼女の言から少しでも多くの情報を得ようと集中して聴く体勢を取る
既にここがカエシウス王国という情報を得た、よしもっと寄越せ
「我々は天啓を受け、皆様にご協力をお願いする為にお呼びいたしました」
天啓?あのノッポ女の差し金で俺たちは呼び出されたってことか?あのクソアマ、自分は関係ありませ〜ん、勝手に呼んだんで〜す、とかアホ面さらして抜かしてたが、思いっきりテメエの指図じゃねえか!
内心ブチ切れながら、王女様のお言葉に耳を澄ませる
「何を勝手な事を、とさぞやお怒りだと思います。そこを押してお願いいたします。どうか私どもの話に耳を傾け、その上で今後の事を決めていただけないでしょうか」
ふむ…どうやら、王女と言っても上から目線で偉そうにものを言ったりはしないみたいだな
話だけでも聞いてほしい、キャッチセールスの常套句だが、事ここに至ってはそんな懸念を抱く必要もないだろう、話をしたければ数に物を言わせて無理矢理断行すればいいのだから
一通り口上を述べた王女様は、言葉を切り何やらこちらをじっと見つめている
フムフム、中々、いやかなりの美人さんだな、年上かな?大人びた雰囲気を醸し出している
それにあの青紫色の髪と瞳が何かファンタジックな感じで、実に目の保養になりますな
等と人物評をしていると、突然耳を引っ張られた
すわ何事か!?と驚いて犯人を確かめるべく振り向いた俺の目に、悪鬼羅刹が佇む姿が飛び込んできた
あまりの出来事に、不覚にも硬直してしまった俺に羅刹が小声で話し掛けてきた
「理?あの人、何か返事してほしいみたいだよ?」
羅刹は何故か百合の声をしていた
…いや、現実逃避は止そう、羅刹は百合だ、百合は羅刹だったんだアハハ
と、悪ふざけはそこまでにして、現実に戻ろう
百合の言う通り、王女様はこちらの返答を固唾を飲んで待っている様だ
「これ、俺が返答しなきゃダメなの?」
俺としては当然の疑問を口にした、つもりだったのだが
「当たり前でしょ?皆を見てみなさいよ。今の話だってちゃんと聞いてたか怪しいわよ」
確かに、と納得せざるを得なかった
あの落ち着きのある木野も、冷静ではいられなかった様で、困惑した表情をしている、珍しい
俺はため息をひとつ吐き、王女様に向き合った
俺がため息を吐いた時、王女様がビクッとしたのは見なかった事にしよう、俺の心のアルバムにはしっかりと収録しておくけどね
「アイギナ王女殿下…で良かったかな?俺は舞島 理。ご存知の通り、貴方達とは違う世界からやって来ました」
そこまで述べて、相手の反応を探る
我ながら、貴人に対する言葉遣いでは無いと思うが、その事で気分を害した様子はない
周りも、不敬な!とか騒いでいないし、その表情も緊張に固くなっているだけで、敵意や悪意は見受けられない
「で、話を聞いてほしいって事なんだけど。見てもらったら分かると思うんだけど、こっちの面々、今ちょっと驚きのあまり呆けちゃっててさ。今目ぇ覚まさせるから、返答は少し待ってくれない?」
気軽に、対等な知人にでも声を掛ける様に頼む
「あ、は、はい、どうぞお気になさらず。こちらも火急の用件、というわけではありませんので…」
アイギナ王女も、多少砕けた、この場合は緊張が解れたと言えばいいのか、そんな様子で返事をしてくれた
その返答に微笑みで頷きを返すと、百合に声を掛け、手分けしてクラスメイト達に声を掛けていく事にした
俺は男子を、百合は女子を担当だ
当然、何事もなく全員をシャキッとさせることに成功し、判明した事を説明する
事前に説明があった事が幸いし、全員すんなり事態を呑み込めた様だ
「じゃあ、一先ず話をしてみる、という方針で良いか?」
皆にそう問えば、全員から肯定の頷きが返ってくる
流石に次代を担う人材を集めた、なんて言われるだけの事はある
妙な我儘を言う奴はいなかった
「アイギナ王女殿下、一先ず話を聞かせてもらう、という事で纏まった。それで、話はここでするのか?それとも、何処かに移動するのか?」
もう完全に一国の王女に対する言葉遣いではないが、気にしない
相手も気にしていないみたいだ、寧ろ好感すら感じる安堵の表情で答えてくれた
「はい、ここは畏まった話をするには些か場所が良くありません。それに、然るべき相手から聞く方が、皆様も安心出来る事と思います」
それはそうだ
下っ端が説明するのと、それなりの立場の者が説明するのとじゃあ、言葉に込められる重みが違うからな
知ってる事情にも差があるだろうから、やはり一番偉い人に説明してほしい
この場合は王女様以上の立場の人間が、恐らく国王から直接話がされるのだろう
そういえば、さっき陛下に伝える云々と言ってたな
「分かった。じゃあ、その然るべき相手の所へ案内してくれるか?アイギナ王女殿下」
「はい。では皆様、ご案内いたしますので、私に付いてきてください」
そう言って、いつの間にか開いていた部屋の大きな扉へ向かって、王女様は歩き出した
先導してくれるのだろう、俺達は彼女に付き従って部屋を出た
次回、説明回になる、予定
一応今回くらいの間隔で投稿する予定です




