予知世界
前回の法則がちゃんと実現したバージョン
「………」
『とまあ君が来る前の彼女は、最終的に自壊してしまったわけだ』
予知能力付与に失敗した彼女のあとにやってきた彼に、彼女がどう失敗したのかをわかりやすく映像つきで解説していく。見終わってから彼はしばし黙っていたが、やがて拳を握って大声で叫んだ。
「この人でなしが!!」
釣り上がった目で睨む彼に、『自分』は一瞬呆気に取られる
『……? ああ』
人でなし?
何を今更なことを言うのだろうか、この男は。
実際自分は人間ではないのだから、当然だろうに> ・。
「なぜ彼女を止めなかった!?」
「? 今見ただろう、彼女がそれを望んだからだ」
「そうじゃなくて!」
まただ。
口頭で説明するから理解できないのかと思って今回は映像をそのまま見せたというのに、なぜ理由を理解できないのだろう?
そう返すと彼は尚も忌々しいと歯ぎしりしだす。
「………お前に人の心がないことは理解した」
『まあ、人じゃないからな』
また苛立っているが、これ以上会話しても恐らく無意味だろうと判断する。
「だが、一つだけ感謝しておく。僕たちが予知能力を制御するための機能を作ったことだけはな!」
『そうか』
どうにもここへ来る者達は、『自分』が喋るだけで怒ってしまう。今後は喋らないほうがいいのだろうか?
「彼女の思いは僕が引き継ぐ。必ずお前の世界が間違いだと証明してみせる」
フィルターのおかげで自壊せずにすんだ彼は、最後に『自分』を睨みつけてから自身の管理世界に向かうのだった。
少ししてから彼の世界を覗いてみれば、また人類が絶滅していた。
まあここまでは想定の範囲内。重要なのは、その法則でどのような結果が出たかだ。なので自分はまずログを閲覧してみると、世界の履歴が異様に少ないことに気付いた。
『?』
これはつまり、世界創造から滅亡までの期間が短いことを示している。過去のデータから考えても、いくらなんでも早すぎではないだろうか。
原因を探ろうと、『自分』はその世界が辿った結末を閲覧してみることにした。
この世界では人間が危機あるいは破滅に直前した時に、予知夢のように未来の映像が頭に入ってくる。人間達はその未来を参考に、何をどうすれば最悪の未来を回避できるのかを知り、行動できるようになった。
これにより事故・災害・他殺による死亡はなくなり、人類全体における悲劇・犯罪の発生頻度は一気に激減していった。
なので少なくとも、この世界の絶頂期における幸福度と秩序の高さは、従来のものに比べて遥かに高かった。
確かに不幸な未来を回避することはできたことだろう。
だが人間とは、どこまでも欲深い生き物である。
例えば株価の暴落を事前に予知してそれを回避した会社があったとする。すると次に彼らはより利益が取れる未来を予知し、その未来に進もうとするだろう。
しかしここで、その未来によって不幸になる第三者がいたとしたら?
当然その第三者はその未来を阻止しようと行動することだろう。対する会社がそれを予知して回避しようとすれば、第三者もそれを予知して行動する。
そうなると無限のいたちごっこと成り果ててしまい、最初の段階で用意されていた幸福な未来から大きく逸れていってしまうのだ。
かくして悲劇を回避するために与えられた加護は、より甘い未来を独占するための暗躍に利用されていく。それを回避すれば未来が変わり、また回避すればまた変わる。
回避に回避を重ねるうちに、最終的に人類はどれが最適な未来なのかわからなくなっていった。最優の未来を求めた末に、本当に見たい未来が見えなくなってしまった人類達は、そうなると行動すること自体を恐れるようになってしまい、逆に回避そのものを放棄してしまうまでになる。
最終的に彼らは見えない未来に怯え、世界から逃げるように自ら命を絶ってしまったのだ。
「どうして……どうしてこんな……っ……! 一体僕は……どこで間違えてしまったんだ………?」
人類が絶滅したことで、彼は自分自身でもどう行動すればいいのかがわからなくなってしまい、最終的に自ら命を絶ってしまった
彼が思い描いたはずの未来は、人間達の飽くなき欲望によって、真っ黒に塗りつぶされてしまった。
『………欲をかくと破滅するのは、どの分野でも同じなのだな』
個人的に、私が住みたいと思う世界。
でも欲はかかないほうがいいかも




