森の奥に発した光
「よし、もっとだ。北へ進もう」
ハヤトは自身に気合を入れると、岩から立ち上がった。
途方もない距離をまた歩き出した。
道中、討伐隊を援助する宿屋がいくつかあり、そこでは無償で休むことができる。
かつ腕の立つ者たちが宿泊するということは、交代で宿屋の警備・監視を行えるということだ。
そこでなら安心して睡眠を取ることができる。
ハヤトにとってもその宿屋は、とてもありがたい存在だった。
他の討伐隊モンスターたちと情報共有はとても重要であった。
行く先にある宿屋の場所を地図に書き記し、未知なるクライシス・モンスターの特性・弱点
の研究を進めるものもいた。
様々な対策が講じられつつはある。
それらが有効化はまた別として……。
交流を深める中で、ハヤトをチームに迎え入れたいと声をかけられることも少なくはなかった。
しかし、彼はその申し出に応えることはなかった。
「いい関係を築けたとしても……もし、また『あんなこと』になったら――」
今でも目を閉じれば、キダンで悔しくも命を落としたゴブリンの死に際の顔。
それが浮かぶ時がある。
その度に、首に下げた〈ゴブリンの首飾り〉をギュッと握りしめた。
「俺にはカードが……仲間たちがいる」
時にはモンスターの力を借りて河を渡り、丘を越えて――。
そして、新たな森エリアが眼前に現れた。
それまでの森は丸一日歩けば突破できる規模だったのだが、先ほど丘の高台から確認した今度の森は今までの三倍はあろうかという広大であった。
こう近づいてみると天を貫くのではないかとも思われるほど高く伸びた木立が、あちらこちらにそびえ立っていた。
さらに空は少し曇り始めており、不安を煽るには十分だった。
迂回する選択肢などハヤトにはなかった。
向かって左側は波打つ海原であるし、なにより北で新種の強力なクライシス・モンスターが現れたとの情報を得ていたからだ。
それも一体や二体ではなく複数体だと云う。
「潜んでいるのか? クライシス・モンスター……望むところだ」
ハヤトが森に入ろうとしたその時だった。
森の奥に強烈な光が発生したと同時に、強い衝撃破がブワッと生まれた。
瞬時に烈風がハヤトを襲った。
「う……な、なんだ?」
衝撃はあくまでも瞬間的であった。
中腰の姿勢になりかろうじて踏ん張り耐えることができたが、ハヤトの頬を嫌な汗がつたっていた。
経験したことのある嫌な風だ……
キダンの街を襲った暗雲が現れた時に感じた風を思い起こさせた。
「嫌な予感がするな……今に始まったことじゃないが……」
――用心しながら森に歩を進めていき、一時間は経過していただろうか。
風もない森の中で不意に、上方の葉や枝がガサガサと擦れ合う音が耳に飛び込んできた。
ハヤトは条件反射で空を見上げた。
数枚の葉っぱにまぎれて――液体が目の前に落ちてきた。
注視すると、それは幅約五十センチほどあるゼリー状の物質。
ハヤトはサッと距離をとった。
それが楕円形の〈スライム〉モンスターであることを確信したからだ。




