奇妙な虹色のスライム
スライムの体色は虹色に輝いていた。
それが毒々しさを感じさせる……さらには目、鼻、口といった生物的器官がいっさい見受けられなかった。
顔がない、のっぺらぼうなことがまた不気味さを加速させた。
臨戦態勢に入ったのだろう、赤字のデータ表記が視認可能となり、クライシス・モンスターに間違いはないのだが……
「ファンタジーなゲームや漫画ならスライムなんて王道中の王道モンスターだ。この世界じゃはじめて見るけどな……なに?」
ハヤトが驚くのも無理はなかった。
名称が《???》なのである。
以前にキダンの街を壊滅させた暗雲モンスター以降、《???》表記が現れたことはなかった。
さらに今回はAPもまた《?》なのだ。
その異形さと異常さに、ハヤトは用心して向かわねばならないと本能で悟った。
カードをデッキケースから引き抜く。
「召喚! 《ステッキ・インプ》」
体色が赤く小柄な魔界属インプモンスターがカードから飛び出した。
その表情やしぐさは幼少期そのもので、腕白さを感じさせる。
手には黒と白の縞模様の杖が握られており、〈特殊能力〉を発揮するモンスターだ。
ステッキインプAP5 能力:戦場に出たターンの戦闘でこのモンスターのAPを二倍にすることができる。
「こいつは素のAPは5と低めだが、場に出た瞬間の戦闘ではビギナーズラックから攻撃魔法を放つことができる。そのAPは倍の10になるのさ。いけ!」
ステッキインプAP10(能力適用) vs 謎のスライムモンスターAP?
杖を振り回しながら向かうステッキ・インプに対し、あろうことか攻撃を察知したスライムは機敏に跳ねて逃走し始めた。
「なんだ? 思ったよりもAPが低いってことなのか?」
インプと共にハヤトはその後を追う。
草木をかき分け、少しひらけた場所に出た。
そこには小さめの塔だろうか。
建築物が崩れ落ちた形跡があった。
その石の残骸が無残にも残されている。
新たにスペルカードを発動させた。
「広い場所に出たならこれが使える。《ストーンウォール》発動!」
ストーンウォール:石の壁を出現させる。以下どちらかの効力を一度だけ適用させる。①相手モンスターの攻撃を防ぐ②相手モンスターが破壊以外で戦場から離れる効力を無効化する。
カードとしてのテキストは上記であるが、この場合は②の効力を適用させた。
突如、石の壁がそびえ立ちスライムの逃げ道をふさいだ。
そこにインプが勢いよく振った杖から、星形の魔力弾が放たれた。
直撃を受けた虹色のスライムは液状の体を飛散させた。
「……やったのか?」
謎がいくつも残るモンスターであったが、飛び散ったスライムの断片がデータ分解されていった。
しかしこの時、ハヤトは見逃してしまった。
断片の一部がストーンウォールの中に入り込み、それに気づかずカードへ回収するミスをおかしてしまっていたことを――。
このまま森の道を進もうかと考えていたところ、
ババン!
と静寂が訪れたばかりの森に、凄まじい音が鳴り響いた。
爆発音とも破裂音ともとれる。
進行方向から迫りくる気配を感じハヤトは再度、身構えることとなった。




