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第6話 見ればわかる

翌日。


俺はまた南門に来ていた。



「また来たのか」


ガルドが露骨に嫌そうな顔をする。



「聞きたいことがある」


「存在値なら知らんぞ」



先に潰された。



「昔から2だったんですか?」


「いや」


「じゃあ、もっと高かった?」


「たぶんな」


「覚えてないの?」


「いちいち覚えてねえよ」



ガルドはそう言って、門番小屋へ入っていった。


俺もついていく。



「なんで来る」


「話の途中だから」


「終わった」



終わってない。



小屋の机には、小さな手帳が置かれていた。


ガルドがそれを開いて、何かを書き始める。



「それ何?」


「忘れねえためのメモだ」


「何を?」


「いろいろ」



少し覗く。



『小麦』


『石鹸』


『制服 受取済』



本当にいろいろだった。



「買い物まで書くんだ」


「忘れるからな」



ガルドがページをめくる。



その時。


見覚えのある名前が見えた。



「待って」


「何だ」


「今、俺の名前あった」



ガルドが手帳を閉じる。



「見るな」


「俺のことならいいでしょ」


「よくねえ」


「気になる」



しばらく睨まれた。



結局。


ガルドが折れた。



手帳が開かれる。



『アルト 値3』



「……3?」



少し後のページ。



『アルト 値1』



俺は日付を見る。



この世界に来て数日。


数字くらいは読めるようになっている。



そして。



その日付は。



俺がこの世界で目を覚ますより前だった。



「この時の俺、1だったの?」


「そう書いてあるな」


「誰から聞いた?」


「お前だろ」


「覚えてないの?」


「細かい話まではな」



俺はもう一度、文字を見る。



『アルト 値1』



俺がこの世界で目を覚ましたあと。


初めて測った存在値は0だった。



でも。


その前は1。



「ガルドさん」


「何だ」


「俺、前と変わった?」



ガルドがこっちを見る。


少しだけ目を細める。



「変わったな」


「記憶なくしたから?」


「かもな」


「どこが?」


「歩き方」


「歩き方?」


「前のお前は、もっと静かだった」



ガルドは俺の顔を見る。



「喋り方も違う。人の見方も違う」


「そんなの分かる?」


「見れば分かる」



またそれだ。



「じゃあ俺、別人に見える?」



聞いてから。


少しだけ後悔した。



ガルドはすぐには答えなかった。



「そこまでは知らん」



それだけ言って、手帳を閉じる。



俺はもう一度。



『アルト 値1』



を見る。



俺がこの世界で目を覚ますより前。



この身体のアルトは、存在値1だった。



そして。


俺が目を覚ました直後。



測定された数字は0。



今は、また1。



「……なんで?」



1だったものが。



俺が目を覚ました時だけ、0になった。



記憶をなくしたせいなのか。



それとも。



他に何かあったのか。



まだ分からない。



でも。



俺の存在値が0だったことと。



俺がこの世界に来たこと。



その二つは。



もしかしたら。



関係があるのかもしれない。

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