#11 愛09歳の迷子
僕は誠一。愛の父親。
だけど僕のことを父親だと思っていない愛。
何だか悲しいがしょうがない事。
僕はいつも仕事で帰るのが遅くなるので愛はいつも家でお留守番。
今日も仕事で遅くなり急いで愛が待っている家へ帰宅。
鍵をあけてドアを開けると部屋は真っ暗。
いつもは帰るとソファに座りテレビを見ているが今日は何処にもいない愛。
慌てて外に飛び出して捜索。
一緒に捜してほしくて友達に連絡。
そして急いで駆けつけてくれた友達。
その中でも女友達の友ちゃんは相当な張り切り方。
「あたいは必ず愛ちゃんを見つけ出すわよ。頑張れ友」
捜そうとしたのは愛がよく行きそうな場所。
それと家から小学校までの通学路。
暗い道のあちこちで光る懐中電灯。
「あたい最近の愛ちゃんの顔分からないわ。見せてよ写真」
家の近所にある小さな公園に行ったがいない愛。
よく一緒に行ったことがある古い本屋にもいない愛。
通学路を捜してみたがそこにもいない愛。
帰っているかもしれないと思い家に戻ったがいない愛。
「あたいの力でも無理か。いや無理じゃないわ。諦めるな友」
警察という考えもあったがもう一度捜すことにした僕。
もう一度捜そうと言うとみんなも賛成。
また捜し始めようとした時に友ちゃんがこう発言。
「でもあたい達がこれだけ捜してもいないということは誘拐?」
一番考えたくなかった事、それが誘拐。
みんな考えないようにしていたのに、ここでその言葉を言うかいと辺りは静寂。
それからずっと僕の頭の中を占領している誘拐の2文字。
その後、何度も同じ場所を捜し諦めかけていた時に友ちゃんの声。
「愛ちゃんいたわ。あたいが見つけたわよ。よくやったわ友」
愛が見つかったのは路地裏。
路地裏で愛が一緒にいたのは数匹の猫。
猫がとても大好きで野良猫と会うとずっと遊んでいた愛。
「あたいは猫アレルギーなのよ。愛ちゃん!持って近づくのは駄目!」
愛が僕のことよりも猫が好きなのは明白。
優しい言葉をかけようとしたが僕の口から出たのは厳しい言葉。
大切だからこそ出た優しさの詰まった厳しい言葉。
「そんなに怒るのあたいは見たくないわ。馬鹿!」
考えられない愛のいない生活。
この世の全てのモノの中で一番大切。
その後真剣に怒ってくれてありがとうと僕に言ってきた愛。
僕はいろんな意味で涙。
そして愛は捜してくれたみんなに向かって謝罪。
本当に事件とかではなくて良かったと安心。
「あたいに涙は似合わないわ。泣くな友」




