懐かしい紅茶の香り
それからというもの、二人で過ごす時間が増え、私たちを見る周囲の目も少しずつ変わっていった。
「ねえ、ルーカスは嫌がらせとかされていないのよね?」
「ああ、俺はされていない」
「それならいいけど……。なんだか不思議なのよね。あんなに陰口を言われていたのに、ルーカスにくっついていた令嬢たちも、ぱたりと姿を見せなくなったのだもの。」
そう言うと、ルーカスが困ったように笑った。
「彼女らは、俺を好きなわけではなかったんだ。ただ政治の道具として、親から俺とライラの婚約の邪魔をするよう言われていたのだろう」
「そうなのかな……」
「それに、一人ひとりに話をつけたんだ。俺は何があっても婚約破棄はしないこと。そして、ライラに危害を加えないことをな」
彼の言葉はまっすぐだった。
「……ありがとう」
「ああ。……もし明日、ライラがよかったら」
「ん?」
「どこか行かないか?」
私は少し驚いた。学校では、彼と一緒に過ごす時間が増えていた。けれど、休日に遊びに誘われたのは久しぶりだった。
「えっと……」
もちろん、嫌なわけではない。彼の想いも、これでもかというほど伝わっている。しかし、まだ彼の気持ちに応える決心がつかない自分がいた。
「ただ、一緒に出掛けるだけでいいんだ。だめか?」
「うん、じゃあ行きましょうか」
私がそう答えると、彼は少し嬉しそうに微笑んだ。そんな彼の表情を見ると、少しだけ胸が温かくなった。
──当日。
両親も、最近のルーカスの変わりようには驚いていた。それでも、彼が本当に私を想ってくれていることが伝わったのか、どこか応援してくれている様子だった。
「行ってきます」
そう言って、私は玄関先で待つルーカスのもとへ向かった。
「今日は時間をくれてありがとう」
「いいえ、私こそ。迎えもありがとう」
それから、大きな公園を散策したり、雑貨屋を巡ったりして、二人で時間を過ごした。
しばらく歩いたあと、私たちはカフェに入った。そこは個室になっている店だった。
カップを口元に運んだ瞬間、ふわりと懐かしい紅茶の香りが鼻をくすぐった。
「あれ? このお茶って……」
「気づいたか? ここのお茶、昔俺の家で出していたお茶なんだ」
なんだか懐かしい……。幼い頃、彼と遊んだ後は、いつもこのお茶を飲みながら一緒にお菓子を食べていた。その記憶が、ふと蘇った。
そして、彼は、幼い頃から私に抱いていた想いを、ぽつりぽつりと話し始めた。
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