もう一度、君の隣へ
──翌日。
登校の準備をしていると、部屋の扉がノックされた。
「お嬢様、お伝えしたいことが……」
「どうぞ」
すぐにメイドが入ってきた。
「実は、ルーカス様がお見えになっているのですが……。いかがいたしましょうか?」
「ええ? ルーカスが? すぐ行きます」
そう言って私は、足早に玄関に向かった。
「ライラ、急に来てすまない。よければ一緒に行かないか?」
「うん……」
そして二人で学校へ向かった。久しぶりに彼の隣を歩く。こうして再び、彼と並んで歩いていることが、なんだか不思議だった。
「これからは二人の時間を埋めていきたい。極力一緒にいたいのだが、ライラは嫌か?」
「ううん、そんなことないわ」
彼は安堵した表情を見せた。
「お前が俺に気を遣ってくれているのは分かっている。それでも、こうしてまた二人で話せることが、どうしようもなく嬉しいんだ」
「うん……。ありがとう」
彼のまっすぐな言葉に少しくすぐったい気持ちになった。
確かに以前の彼は、いつも自分の思いをまっすぐ伝えてくれていた。不器用ながらも、いつだって一生懸命に。私はそんな彼のことが好きだったのだ。
「もし、他の令嬢に何かされたら、教えてほしい。俺も裏で動いて、できる限りライラに嫌な思いをさせないようにするから」
「うん、わかったわ。ありがとう」
学校に到着すると、そう言って彼と別れた。
昼休みにコンラートが私の様子を見に来てくれた。
「おい、ライラ。よかったな!」
彼はそう言って微笑んだ。
「でも、正直まだ心が追い付かなくて……。彼に好きと言われても信じられないの」
「ははっ。まあ、あいつも自業自得だろ。少しくらい痛い目見させた方がいいって」
彼のいつも通りの明るさに安心する。
そんな私たちの様子を、遠くからルーカスが見ていた。やがて彼は、こちらへ近づいてきた。
「コンラート」
「おお! 噂の伯爵令息様じゃん」
「今日は、ライラは俺とご飯を食べるから」
「ははっ。熱くていいね。じゃあなライラ! またな」
「うん! またね」
私はルーカスと食堂に向かった。周囲からは、不思議そうな視線を向けられていた。
「なんでルーカス様と一緒にいるの?」
「まさかルーカス様に媚薬でも使ったのかしら……?」
突拍子もない噂に私は構わず歩いていた。
しかし──。
「俺はライラの婚約者だ。文句があるなら、直接俺に言え」
彼は周りにいた人に冷たく言い放った。そして私の手を取り、何事もなかったかのように歩き出した。
「ねえ、ルーカス。そこまでしなくても大丈夫よ」
「ああ、ごめん。嫌だったか?」
「いや、そうじゃなくて……。こんなことをしていると、ルーカスまで嫌な思いをすることになるかもしれないわよ?」
私は心配そうに彼を見つめた。
「俺は平気だから。ライラを守れるならそれでいい」
「そう……」
彼のまっすぐな瞳に、何も言えなかった。
その後は一緒に昼食を摂り、帰りも一緒に帰った。
今までの空白を埋めるように、幼い頃のことや、学校に入学してからのことを話した。不思議なほど、話題は尽きなかった。




