冷たい視線の先に
──それから数日。
コンラートは私を気遣い、学校では可能な限り一緒にいてくれた。
そんな友人がいてくれるおかげで、周囲の目や噂など気にならないくらい彼の存在が心強かった。
そんなある日の放課後、私はルーカス様に出会ってしまった。
帰ろうと廊下を歩いていると、前方から令嬢と一緒に歩いてくるルーカス様が見えた。
私は目を合わせないように、足早に通り過ぎようとした。
──その時。
「あら? もしかして毒薬を飲んだライラさんじゃない?」
ルーカス様の隣にぴったりとくっついた令嬢があざ笑うかのように話しかけてきた。
「優しいルーカス様のおかげで助かったんでしょ? あなたなんかに口づけまでして、強力な回復魔法で助けてくださったのよ。本当にルーカス様も、手のかかる婚約者がいて大変ね」
そう言って彼女は私を見下してきた。
そんなことを言われても、私が回復を望んでいたわけではない。あの時は、命すら惜しくないと思うほど追い詰められていたのだから。
私は思わず顔を上げ、彼女を見返した。そして、令嬢の隣にいるルーカス様に目を向けると、いつもの冷たい視線で私を見つめていた。
私は何も言わず、その場を立ち去った。
「まあ、怖い」
令嬢の笑い声と、ルーカス様の冷たい視線を背中に感じながら、私は足早に廊下を進んだ。
なぜだろう。以前から思っていたけれど、彼の周りにいる令嬢たちは、私に対して当たりが強いように思う。
彼は気の強い女性が好きなのだろうか……。
けれど、私だって彼と婚約を破棄したいのに、向こうはそれを拒んでくるのだ。
そう考えると、どうしようもない苛立ちが胸の奥から込み上げてきた。
◇◇◇
ライラとルーカスの関係は思っていたよりも深刻らしい、
本当に素直じゃない友人を持つと世話が焼けるな。
そんなことを思いながら、俺はルーカスのもとへ向かった。
「なあ、お前そろそろ意地張ってないでちゃんと話せば?」
「なんのことだ?」
「はあ……」
俺は大きくため息をついた。
「最近のライラ、本当に見ていられないくらい周りからひどい扱いを受けているぞ。お前も心当たりあるんじゃないか?」
ルーカスは一瞬、気まずそうに視線を逸らした。
「しかも、婚約破棄を申し出られているらしいじゃん。お前が受理してくれないって、ライラが嘆いていたけど?」
「お前には関係ないだろ」
「俺がライラを好きって言っても?」
「──!?」
ルーカスは俺の言葉に目を見開き、眉をぴくりと動かした。
「まあ、なくはない話かもよ?」
そう言って、俺はルーカスの肩に手を置いた。
「ライラは可愛いし、お前がその感じでいるなら、俺以外にもライラのことを好きな奴が出てくるかもね」
俺は踵を返し、ひらひらと手を振りながらルーカスのもとを去った。
(まあ、発破はかけられたかな?)
その後、俺はライラの待つ教室に向かった。




