私を支えてくれる人
私はあのダンスパーティー以来、ずっと学校を休んでいた。成績は悪いわけでもない。
しかし、このままではいけないと思い、重い腰を上げ学校に行くことにした。
両親は学校に行くことを反対していたが、私は首を横に振り、「大丈夫」と言って、制服に袖を通し、学校に向かった。
学校に到着すると、私の周りだけ人が避けているような気がした。
そして、周囲からは、私のことをひそひそと噂する声が聞こえてきた。
「あんなことをしておいて、よく学校に来れるわよね」
「ルーカス様はお優しいから、見捨てなかったらしいわよ」
「本当あんな子が婚約者なんてかわいそう」
私はそんな言葉を無視して廊下を歩き続けた。
「おい! ライラ」
すると突然、私を呼ぶ声がした。その声に振り返ると、学校で唯一の友人であるコンラートが立っていた。
「コンラート」
彼は私に駆け寄ってきた。少し息を切らしている。
「ライラお前、大丈夫なのか?」
「うん、平気よ」
「いくらなんでも毒薬自殺なんて普通考えないぞ!」
「ふふ、そうよね。でもあの時は本当に追い詰められてたの」
「はあ……」
彼は頭に手を当て、大きくため息をついた。
「まあ、元気そうでよかったけど。なんかあれば俺に言えよ。友達だろ?」
「うん、ありがとう。コンラートには、いつも感謝しているわ」
「おう、じゃあまたあとで! 昼食は一緒に食べような」
「ありがとう」
そう言って彼と別れた。
彼はコンラート・ヴァレンシュタイン。私がこの学校に転入したばかりの頃、右も左もわからない私に優しくしてくれた、唯一の友人だ。辺境伯家の子息で、貴族としての地位も高いのに、気さくに話しかけてくれる。彼と一緒にいる時間は、心地良いものだった。
──昼食時。
コンラートは私を気遣い、食堂ではまた余計なことを言われるだろうからと、二人でパンを買って外で食べることにした。
「何から何までありがとう。今日、本当は学校に来るのが憂鬱だったけどコンラートがいてくれてよかったわ」
「このくらい普通だろ? ライラは渦中の人なんだから心配なんだよ」
「まあ、すごいことをしたっていう自覚はあるかも」
私はそう言って少し笑った。
「そういえば、ルーカスが助けてくれたんだろ?」
「うん……。そうみたい」
「あいつもようやく素直になったってことなのかな?」
「え……? どういう意味?」
私が聞き返すと、彼は口を少し開けて呆然としていた。
「あはは、これは思ったより大変だな。相当こじらせているらしい」
「どういう意味なの?」
「本人から直接聞いた方がいいよ」
私にはコンラートの言葉の意味が全く分からなかった。
「でも……私、ルーカス様と婚約を破棄しようと思っているの」
「え……?」
彼は目を見開いた。
「それ、本気で言ってるのか?」
「うん。この前、正式に婚約破棄を申し出たんだけど、なぜか受理してもらえなかったの」
「……」
「それでも、もう心に決めたから。なんとか彼との婚約を破棄できるように頑張るわ」
私は彼に微笑みかけた。
「それって……。もうあいつのこと好きじゃないってことか?」
「……」
コンラートのその言葉に、まだ素直に首を縦に振れなかった。
正直、好きじゃないと言えば嘘になる。長い間、彼のことだけを想っていた。この初恋はすぐに忘れられるものではない。けれど、もう決めたのだ。これ以上傷つくことは嫌だった。
「俺、昔からルーカスとは友達だからわかるけど、あいつは言葉が足りないだけで、ライラのことをちゃんと想っていると思うよ」
「そうかな……? 励ましてくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから」
彼の言葉に、少し胸が痛んだ。けれど、そんな気持ちを隠すように、彼に笑顔を向けた。
コンラートは私の恋心を知っている。だから私が傷つかないように励ましてくれているのだろう。そんな彼の優しい気遣いに心が救われた。
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