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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第8章 紀伊・国獲り編

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第391話 嘉兵衛は、棚から牡丹餅を受け取る

永禄9年(1566年)10月上旬 尾張国古渡城 松下嘉兵衛


京から古渡城に帰った俺に、弥八郎は容赦なく溜まっていた仕事を回してきて……という事はなく、比較的穏やかに日々を過ごしている。


「殿は疲れているのですから、今は余計な事は考えずにのんびりとなされて下され」


「弥八郎の申す通りです。代わりは某が務めますから、何もご心配なく……」


どうやら、京に残った藤吉郎から文が届いていたようで、わずか9歳の虎松にまでそう言われてしまい、苦笑いを浮かべてしまうが……しかし、確かにここの所働き詰めで、遊郭にすら足を向ける余裕もなかったと思い出して、それならと城下に向かう準備を始める。


そうそう、国替えによってこれらの店をどうするかというのもあったな。こういう大事な事は直接行って話をするのが肝心だ。


「殿、申し上げます。只今、清洲の武田四郎様がお見えになられておりますが……」


だけど、その時非常に残念なお知らせが入って、俺は泣く泣く女の子たちに着て貰おうと風呂敷に包み始めていた巫女服一式を箪笥に仕舞うことになった。今は休暇中だからと居留守を使いたい所であるが、四郎君が相手ならそうはいかない。


「通せ」


「はっ!」


一体何の用かと思いつつも、あずさから聞いた未来の話もあって、信玄公を敵に回すわけにはいかない俺は四郎君を迎え入れたのだった。


「それで、如何なされた」


「実は、某……父の元に帰る事になりまして」


「帰る?」


四郎君には信長の妹との間に嫡男も誕生しており、非常に仲の良い夫婦だと聞いている。それなのになぜ、いきなり実家に帰る話になっているのかと思っていると、離婚ではなく皆で一緒に加賀に移るという話だった。


「そもそも、某がここに居たのは、お家騒動に巻き込まれないために避難しているのであって……」


「ああ、そういえばそうだったな」


すっかり忘れていたけれども、当時は家督を譲る譲らないで信玄公と義信公の仲が険悪で、下手をすれば義信公の手の者がライバルになりかねない四郎君を排除しようと動く可能性があったから、信長が縁組を打診してきたのを幸いに避難させていた経緯がある。


「だけど、信玄公と義信公の争いはとっくの昔の話となっているし、帰ろうと思えばもっと早く帰れたのでは?」


「それが……今まではそうもいかなかったのですよ」


四郎君が言うには、信玄公と義信公の親子喧嘩に決着が付いた一方で、武田家の次期当主の座を巡る争いが水面下で続いていたらしい。義信公に嫡男が居ない事で、万一の時は四郎君が本家を継ぐのか、それとも高遠城に入った五郎殿が継ぐのかなどで。


「しかし、ご存じだと思いますが、その兄にようやく待望の嫡男が誕生しました。しかも、太守様にとってもお孫様にあたる若君です。これでようやく武田の跡取りを巡る争いも終わりを迎える事ができたわけで……」


加えて、尾張殿の国替えもあり、この機会に信玄公のおられる加賀に帰るのだと四郎君は言った。その信玄公が率いる武田家の別家は、今では幕府より加賀、越中、飛騨の守護に任じられていて、一向門徒たちも完全に支配下に組み込んだと聞いている。


「そうか。まあ、父君の跡を継がれるわけだし、また会えるが……暫しのお別れという事だな」


「はい、お世話になりました。それで……尾張を去るにあたり、一つご相談があるのですが……」


「相談?」


それは何だろうと思っていると、四郎君は後ろに控える喜兵衛を見ながら話し始めた。即ち、この喜兵衛をうちで受け入れて欲しいと。


「いや、意味が分からん。喜兵衛は四郎君の大事な側近ではないのか?それをどうして……」


「実は、お恥ずかしい事ではありますが……うちの妻と喜兵衛の妻は仲が非常に悪くて」


「仲が悪い?」


「ほら、喜兵衛の妻は甲府に居られる三条の方様の侍女だったでしょ?だから、公家の振る舞いを妻に押し付けてきて、それで……」


「なるほど……」


喜兵衛の妻からすれば、きっと四郎君の体面を思って良かれと思ってやった事……あるいはその辺りももしかしたら三条の方様からの指示を受けての事だったかもしれないが、お犬の方様からすれば、「尾張の田舎者と馬鹿にして!」と思ったのかもしれない。


「とにかく、喜兵衛を連れて行くのなら、子を連れて尾張殿と共に丹波に参ると言われまして。もちろん、喜兵衛も納得しておりますので、松下家で召し抱えて頂くわけには参らぬでしょうか?」


はっきり言って、この話はうちにとってすれば棚から牡丹餅のような話である。だから、当然二つ返事で受ける事にしたが、喜兵衛を夫婦喧嘩で手放すなんて……武田はもしかしたら警戒する必要がないのかもしれないな。愚かな事だ……。


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