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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第7章 京・政争編

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第320話 嘉兵衛は、対浅井を思案する

永禄8年(1565年)4月中旬 近江国観音寺城 松下嘉兵衛


細川殿が帰られた後、俺は屋敷に一度戻った。義元公の下へ参上し、主水からの報告が正しかったと伝えようとしたのだが、不在だったため出直す事にしたのだ。


「お帰りになられたら、すぐに連絡いたします」


「よろしく頼む」


応対してくれた鶴千代君の話だと、あと1刻(2時間)もすれば帰ってくるそうだ。俺は配慮に感謝して、こうして家でのんびりと今、過ごしている。ちなみに、おとわとあずさは、寧々らと共に甘い物を食べに城下に出かけているらしく、こちらも留守のようだった。


「それにしても……浅井が本当に裏切っていたとはねぇ……」


縁側に腰を下ろして、池をぼんやりと眺めつつ、3日前に義元公の御前で飛び出した半兵衛の言葉を思い出した。


『この際です。小谷に兵を送り、浅井を完全に滅ぼしましょう』


主水からの知らせが届いて、しかしあの時はその知らせ自体に信憑性があるかは疑問であるとして、結論を先送りする事になったが……こうして浅井が黒と確定した以上は、もう一度同じ話を半兵衛はするだろう。


しかし、この言葉に賛成してもよいのだろうかと悩んでしまう。何しろ、先程兵部殿に話した通り、近々三好家が暴発して二条御所を襲わないとも限らないのだ。そんな時に越前に大軍を差し向けていたら、確実に後れを取る事になりかねないかと。


「まあ、本音を言えば……浅井の事は後回しにしてもよいと思うのだがな……」


しかし、生半可な言い分を並べたところで、半兵衛を論破できるかと問われたら、全くもって自信はなかった。加えて言うならば、義元公自身も大の浅井嫌いでもある。そのため、やはり分が悪いと悟らざるを得なかった……。


「おや、殿。お戻りでしたか」


「藤吉郎……」


「どうかなされましたか?悩みがございましたら、お話を伺いますが……」


「実はな……」


藤吉郎も我が家の筆頭家老ゆえに、近頃はこの観音寺城下に移り住んだ他の重臣方との交流で忙しく、俺自身も忙しい事も相まって、こうして昔のようにゆっくりと話す機会が減りつつある。


だけど、やはり藤吉郎は昔と変わらず頼りになる。用事もあったであろうに、俺の相談に答えてくれたのだ。


「つまり、殿は浅井といくさになるのは反対なのですね?」


「そうだ。何か回避する良き方法はないか?」


「そうですねぇ……では、こういう策は如何でしょうか」


藤吉郎が申す策というのは、いくさを回避するために浅井家からの謝罪が必要不可欠だが、圧力をかけるために数千程度の兵を国境に差し向けてはどうかというものだった。


「だが、京に睨みを利かせながらでは、数千の兵を送るわけには……」


「勢多城の松平勢とこの観音寺城の兵力は動かさず、美濃から兵を出させるのです。稲葉山の朝比奈様、大垣の岡部様に協力を求めたならば、十分能うかと」


「なるほどな……」


お二方の領地における石高を合わせれば、およそ7千の兵を動員することは不可能ではない。城を攻め落とすには足りないけれども、先陣として差し向けられたと錯覚して、浅井の連中は肝を冷やすことだろう。


「あと、浅井の危機を知れば、朝倉が越前から援軍を送ってくるかもしれません。そこで、足止めさせるために……武田殿を使うのです」


一昨年、飛騨を平定した信玄公は、その手を越中と加賀に伸ばして一向宗門徒を取り込みつつ、両国を平和裏に武田の領地にしようとあの手この手とあちらも忙しいと……先日文が届いたばかりだ。


ゆえに、何を武田家に求めるのかと思っていると、藤吉郎は文を書いて、越前との国境に兵を差し向けるように要請しては……と言った。


「つまり、朝倉の足を越前に留めるという事だな?」


「御意にございます。さすれば、浅井の孤立は確実なものとなり、あちらとしては強情を張り続けるわけにはいかなくなるかと。これで如何ですかな?」


「完璧だな」


俺は策を献じてくれた藤吉郎に礼を述べた。すると、丁度その時、本丸御殿から鶴千代君が呼びに来たと知らせがあった。


「では、行ってくるか」


まあ、それでも果たして半兵衛の反論に打ち勝つことができるのかはわからないけど、後はやれることを精一杯やるだけだ。


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