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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第7章 京・政争編

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第313話 嘉兵衛は、父親と似ていない義弟と面会する

永禄8年(1565年)3月上旬 近江国観音寺城 松下嘉兵衛


案内されて部屋に入ると、そこにはどこか綾に似た真面目そうな青年が座っていた。間違っても父親のような悪人の顔はしていない。


「待たせたな。今川家家臣・松下大蔵少輔だ」


「お初にお目に掛かります、義兄上。松永右衛門佐にございます」


しかも、それどころかどこか爽やかさがある。油断しているとすぐに人を騙そうとするようなねっとりとした嫌な感覚も今日はなかった。


だから、開口一番真っ先に訊ねたのは、本当にあの松永様の実子なのかということだった。


「もしや、連れ子とか、それともどこかの子と取り違えられた子とか?」


「その質問……姉上にも昔なされたと伺いましたが?」


「あ……そういえば、そんなこともあったな」


あの時は綾にそっくりな母親が出てきて、気持ち悪い位に松永様といちゃいちゃデレデレしているところを一日中見せつけられて、実に散々だったなと思い出した。しばらくの間、アレが全く役立たずになるほどに、精神的なダメージは甚大だった。


ああ、思い出しただけでも、キモチガワルイ。サブイボが出てくるし、萎える……。


「あの……大丈夫ですか?」


「はは……ありがとう」


そして、目の前に居る右衛門佐殿はあの時の母親に似ている以上、疑ってはいけないとすぐに結論が出た。失礼を謝罪して、早くこの虎口から逃れるべく話題を変えた。「ところで、今日の御用向きは?」……と。


「すでにご存じだとは思いますが……」


そこで右衛門佐殿は、今月の末に予定されていた御所様の三好屋敷への御成りが取りやめになるかもしれないと言った。よからぬ噂が京の町中に広まっていることが理由で……と。


「それは、三好屋敷に御成りになられたところで、摂津中務らを亡き者にするという……あの噂ですか?」


「ええ、そのとおりです。しかし、やはりこの近江に居てもご存じだったのですね」


さっき……しかも、嫌っている孕石主水からの情報で知ったとは言い出せずに、ここは相槌を打ちながら逆に右衛門佐殿に訊ねた。もし、噂が広まっていなければ、三好家は摂津ら幕臣たちを討つつもりだったのかと。


「そのような話もありました。某もその企てに加わっておりましたし、お成りが決まった頃は……。ですが、父から言われました。行動に移せば、今川家が天下を奪いに京に乗り込んでくると」


「つまり、中止したのですね?」


「はい。日向守様も釣閑斎様も主税助様も、父の言葉を聞いて同意されました。御所様が我が三好家の屋敷に御成りになられても、幕臣たちに危害は加えません。これは間違いない事です」


一瞬、それは本当かなぁと脳裏をよぎった。もしかしたら、そのようにこの右衛門佐殿に思わせておいて、実は最初の予定通りにバッサリ……ということはあり得るのではないかと。


何しろ、父親と違ってやはり人がよさそうな青年なのだ。義兄として騙されているのではないかと心配になる。


「それで今の状況はわかったが……俺に会いに来た理由は?」


「あ……すみません。前置きが長くなってしまいましたが、義兄上にお願いしたいのは、不幸にも拗れてしまった幕府と三好家の間を今川様に取り持っていただきたく、その口利きをお願いしたいと」


「悪いが……それは今川の利にならない。利になるものが用意できなければ、動くわけにはいかない。その辺りは、お義父上から学ばれなかったか?」


「もちろん、承知しております。ゆえに、協力して頂けたなら……」


右衛門佐殿はそう言いながら、懐に手を入れてしまってあったものを取り出した。


「どうぞ、これを今川様に……」


「……嶋原夢屋敷、特別招待券?こ、これって、滅茶苦茶高い遊郭だよな!男に産まれたならば、一度は夢のような一夜を遊びたいとかいう願いを叶えてくれるという……まあ、俺は何度か行っているけど」


「え……?あ、あれ?」


「でもな、右衛門佐殿。男なら確かに喜ぶ物だが……相手は今川の太守様だぞ。馬鹿にしているのか?」


「あ……い、いえ!ま、間違えました!これは差し上げるわけにはいかない某の宝物で……正しくは、こちらの書状でございました!お改め下さいませ!!」


「いや……あて先は太守様になっているのだから、俺が勝手に見るわけにはいかないだろう……」


爽やかで騙されやすそうな性格に加えて、このおっちょこちょいな一面は……やはり、松永様の血筋ではないような気がしてならない。だけど、今はこの目の前の書状だ。


俺はひとまず預かる事にして、義元公の下へと戻る事にしたのだった。


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