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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第7章 京・政争編

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第305話 隼人正は、頭が良くなった主に驚く

永禄8年(1565年)1月上旬 美濃国稲葉山城 長井道利


半兵衛から書状が届いた。計画通りに斎藤家の降伏は認められたとの事だ。


「しかし……喜太郎様の説得を我らにせよとは……」


「言うな、甚六。儂も同じ事を思っている」


この仕事って、半兵衛がやるといっていなかったかと儂だって書状の中身を見た時に思ったわ。しかも、「忙しいからあとはよろしく」って舐めているのかな……とも。


ただ、それでも喜太郎様を守るためにはやむ無しと、城で合流した氏家殿と共に軟禁されているお部屋へ向かう。


「殿、隼人正にございます。少しお話がございますが、部屋に入ってもよろしゅうございますか?」


「構わぬ。入るが良い」


「はっ!」


なお、軟禁されてはいるが、部屋の中におひとりというわけではない。洗脳……じゃなかったな、再教育が必要ということで、越前から呼び戻した家庭教師が喜太郎様のお側にいる。その男の名は、明智十兵衛という。


「大事なお話という事ならば、某は席を外しましょうか?」


「いや、構わぬ。そなたの今後にも関わりがあろうから、そのまま聞くが良い」


「承知しました」


そして、ここは今更取り繕っても、誤魔化しても仕方がないので、半兵衛がまとめた和睦の条件を喜太郎様にお伝えした。斎藤家は今川家に降伏し、御身には稲葉山城10万石か、近江で15万石が与えられることになるからと。


「そうか」


ただ、喜太郎様は「何を勝手な事をしたのだ!」……などと激高なさらずに、そのように一言だけ仰せられただけだった。これには同席している氏家殿も首を傾げて、「ご不満はないのですか?」と訊ねられたりもした。


しかし、喜太郎様は首を左右に振られて、「情勢を思えば、今はやむ無しと心得る」と……そう仰せられたのだ。流石にこれはあり得ないと儂はこの喜太郎様がニセモノであると判断して、兵を呼ぶように甚六に命じた。


半兵衛ならば……自分にとって都合の良い影武者にこっそり入れ替える位の事はやりかねないからと考えて。


「ま、待て、隼人正!な、なんでそうなるのだ!?俺はホンモノの喜太郎で……」


「ええい!喜太郎様がそんなに頭の良い事を言うわけがないのだ!つまり、おまえはニセモノだ!」


「じゃ、じゃあ!こ、これならどうだ!おまえは出べそで、しかも右の脇がかなり臭い。あと、奥方と一緒になる時、『一緒になれないのならこの崖から飛び降りる』と脅したな。どうだ?これでも足りぬのなら、後は……」


「……すみませんでした。間違いなく喜太郎様でした。もうこれ以上は、勘弁して下さい……」


しかし、こうしてニセモノ疑惑は解消されたが、どうして急に頭が良い事を言い出したのか、その辺りは大いに謎が残る。すると、十兵衛がこらえきれなくなったように笑いだしながら、事情を説明してくれた。


即ち、半兵衛から毎日宿題が課されていて、サボったり適当にしていたら竹中家の老臣が現れて、秘伝の頭グリグリ刑が執行されるとか。


「なあ、十兵衛。こういってはなんだが、それってこめかみをグリグリされる程度の話だろ?改心しなければと思う程に痛いとは思えぬのだが……」


「隼人正様……竹中家の秘伝という事だけあって、あれはヤバい、本当にヤバいのですよ。脳みそにそう、言いつけを直接痛みと共に浸み込ませられるというか……」


そして、もしあの技を喰らっても改心しない者が居るのならば見てみたいと十兵衛は言った。しかし、よくよく考えたらそれはどうでもいい話なので、儂は結論を急ぐことにした。頭が良くなったのなら、それはそれで構わないわけだし。


「……では、改めて真面目な話をいたしまするが、今川家への降伏、それと喜太郎様へのご沙汰に尽きまして、ご納得いただけるということでよろしいでしょうか?」


「構わない。よきにはからってくれ」


「畏まりました」


こうして話がまとまったので、儂は氏家殿と共に部屋を出た。


「では、某もこれにて」


「うむ」


ちなみに、この氏家殿は他の連中と共にこの後今川家に仕えるが、儂は領地を返上して喜太郎様に仕えるつもりだ。家中には同じような者も何人かいるが、皆、亡き先代から賜った恩を返そうと意気込んでいる。


斎藤家の道は、これからも続く。


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