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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第7章 京・政争編

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第303話 嘉兵衛は、半兵衛に切腹させようとするも……

永禄8年(1565年)1月上旬 近江国観音寺城 松下嘉兵衛


竹中半兵衛がやってきたと聞いて、広間のあちらこちらから声が上がった。この機を逃さずに討つべし……と。


「太守様、騙されてはなりませぬぞ。あの男は間違いなくまたよからぬ事を企んでいるはず!」


そう……特に一度盛大に騙されて、城を奪われた信長は声を大にして義元公に訴えた。しかも、迷惑が掛からないように家臣の暴走という形で処理するからと、暗殺の許可を求める始末だ。


しかし、近江の一部を切り取った斎藤家は、今や82万石の大大名だ。俺だって本音を言えばここで後腐れなく……と思わないでもないが、京の状勢を睨みながら同時に相手をするのは少し厳しいというのが現実だ。


「まあまあ、お待ちを」


だから、信長に睨まれているのは承知の上で、ここは止めに入る。外交の使者としてやって来られた以上は、今川家の名誉にかけてこれを迎えて、承諾する、しないは別にして話を聞くべきだと。


義元公はそんな俺の提案を受け入れて、別室で応対すると仰せられた。同席するのは、朝比奈様と次郎三郎、それと俺の三名のみで、信長には特に軽挙な振る舞いをさせないように、監視付きで広間に留め置かれた。


「急な訪問にも関わらず、お目通りが叶い恐悦至極に存じます。斎藤家家臣・竹中半兵衛にございます」


「うむ、苦しゅうない。遠路はるばる大義であったな」


こうして、そんなに広くはないが、雅な襖絵が描かれている格式のある部屋で半兵衛との会談は始まった。冒頭はこのように当たり障りのない挨拶を交わすところから始まったが……


「それで、我らと和睦を結びたいと聞いたが……その条件は?」


義元公が主導権を握ろうと早速そう切り出されて、部屋の温度が下がったような気がした。半兵衛の顔からも笑顔が消えて懐に手を入れる。咄嗟に俺が盾になるように間に入ったのだが、その手にあったのは巻物だった。


「もしかして、某が今川様を暗殺すると思われましたかな?」


「ええ、貴殿には前科がありますからな。斎藤飛騨守を暗殺されましたよね?」


「ふふふ、そうですね。確かにそれならば、警戒されるのは仕方ありませんね。ですが、ご安心を。これはそのような物ではありませぬ」


……とはいっても、巻物の中に暗器が仕込まれていた始皇帝の例もあるので、「中身の確認はこちらでするから」と渡すように俺は半兵衛に告げる。


「いいですよ」


ただ、拍子抜けするほどにあっさりと渡された巻物の中身は……斎藤喜太郎を筆頭として斎藤家の主だった家臣たちが連署血判で今川家に従う旨を記したものであった。はっきりいって、理解が追い付かない。これは和睦というより、降伏文書だ。


「失礼だが、竹中殿……貴殿は我らを揶揄われているのか?」


「いえ、朝比奈殿。これは本気ですよ。斎藤家の総意として、今川家に降伏して今後はその御下知に従うつもりでこの血判状をお出ししました」


「だが、斎藤家は今や大国では……」


「そうですね。だから、売り頃としては丁度良いわけで。あ、そうそう……言い忘れておりましたが、ひとつだけ、条件を付けますが……よろしいでしょうか?」


「ちなみにその条件とは?」


「斎藤喜太郎様の身が今後も立つように取り計らって頂く事ですよ。具体的には、稲葉山城とその周辺で10万石、あるいは近江で切り取った領地のうち15万石を賜りたく」


「それは最後の奉公というやつか?」


「まあ、そんなところですね。ただ……予言というには大袈裟かもしれませんが、あの方はいずれ化けますよ。今川家の為にも損はないかと思います」


なお、血判状に連署している斎藤家の諸将は、和睦成立後に斎藤家を離れて今川家に仕えるという事だ。よって、国替えや減封、さらには改易などの処分を下したければ、それはこちらで思うがままにすればよいとまで言い切った。


だから……俺はこれまでの意趣返しをしようと半兵衛に確認する。それならば、和睦成立後に竹中家は改易、当主である半兵衛に切腹を命じるがそれでもよいのかと。


「それが今川家の御沙汰ならば、もちろん従います。まあ、今までのいきさつを思えば、仕方ないことですからね。ただ……」


「ただ……なんだ?」


「某に限らず、あまり調子に乗られて苛烈な沙汰を下して、果たして美濃の民は落ち着くかどうか……。仮に一揆や反乱が起これば、困るのは今川様ではございませぬか?天下は間違いなく遠ざかるわけで」


くそ……反論できない。そんな事態となれば、京で起こる変事に後れを取る可能性大だ。どうやら勝負ありと認めるしかない。


「では、余の方からもひとつだけ条件を付けたい。構わないか?」


しかし、そんな中で義元公は仰せになられた。喜太郎の身が立つように取り計らい、斎藤家の諸将を受け入れる代わりに……半兵衛はご自身の側に仕えるようにと。


「そこにいる大蔵と切磋琢磨して、その知恵で余を支えてもらいたい。頼めるか?」


「承知しました」


あれ?もしかして、これって最強のライバルが誕生した……?


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