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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第6章 南近江・上洛編

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第300話 嘉兵衛は、上洛して政変に巻き込まれる(3)

永禄6年(1563年)11月下旬 京・二条御所 松下嘉兵衛


三好筑前守義興がおときさんに殺されて、すでに10日余り過ぎている。しかし、三好家は世間体を気にしてか、あくまで「急な病で逝去した」という姿勢を崩していない。


もちろん、我ら今川家上層部も幕臣たちの多くが知っているのだが……


「まあ、言えませんよね。嫡男が痴情のもつれで、しかも女に殺されたなんて……」


「そうだな。しかし、どうしてこんな事になったのだ?」


この部屋には、義輝公と松永様、それに義元公と俺の4人が集まって今後の対応について密談を重ねているが、一番の部外者と言ってもいい義元公のお言葉に、義輝公と松永様が何か言いたそうに互いに目線を合わせて、俯き加減で黙り込んでしまった。


だから、義元公は少し苛立ちを見せて、俺にどう思うかとお訊ねになられた。


「どう思うかって……そりゃあ、この二人がヘマしたからですよね?誠に酷い話で……」


自害したおときさんの告白は、俺も松永様から聞いたけど、愛人の一人に過ぎなかったとはいえ、他の方法はなかったのかなと思う。結果論かもしれないけど、俺自身もお藤を預かる話が出た時にもっと詰めるべきだったと思わないわけでもないし……。


だけど、義元公は「そうじゃない、そういう事を聞きたいんじゃない」と仰せられた。


「確かに、おときという女に対する扱いは間違っていたと思う。されど……そもそもの話だ。筑前守が弾正の下におときがいると知らなければ、この様な話にはなっていないはずだ。さらに言えば、筑前守が弾正を目の敵にする理由も……」


「すると、太守様は裏で糸を引いていた者がいると?」


「もっとも、ここまでの惨事になると想定していたかまでは分からぬが……居るだろうな。黒幕が」


この時、誰もが思い浮かべたのは、摂津中務大輔だろう。かねてから幕府を守るためと三好家の力を削ごうとしてきたのだ。黒幕であっても不思議ではない。


「おのれ……摂津め……」


「御所様、お怒りになられるのは分かりますが、証拠はありません。ここは堪えてくだされ」


「だが、今川殿!」


「終わった事よりも、大事なのはこれからの事でしょう。弾正……」


「はい」


「筑前守の死によって、三好家の舵取りはどうなる?修理大夫殿は見ていて哀れな程に気落ちされておったが、果たして大丈夫なのか?」


俺が知る史実では、嫡男である筑前守を失った事がトドメとなって、天下に最も近づいていたはずの三好家は、まるで坂道を一気に転がり落ちるかのように没落した。


そして、その事までは教えていないけど、松永様は義元公の懸念を認めた。葬儀の後、魂が抜けたようになっていて、更には末弟・十河孫六郎の倅に家督を譲ると言い出して、困っているとも……。


「しかし、本当に末弟の子に……となれば、揉めるのでは?上の弟にも男児がいたはずで……」


「大蔵よ。つまり、正しい判断ができぬ程に修理大夫はおかしくなっているということだ……」


「え……それって」


「もうすぐ年の瀬だが、来年は幕府内の権力構造が大きく変わる可能性があるな……」


義元公は苦々しそうに仰せられた。


「ちなみに、弾正は如何いたす。それでも三好家に尽くすつもりなのか?」


「御所様、もちろんです!某は三好家の家臣にございますれば……」


「だが、その三好家よりそなたを弾劾する申し立てが余の下にも届いているが?中には此度の責任を取らせて腹を切らせるべきだとか……」


「……それでも、某は三好家の家臣にて」


立派な志ではあるけれども、死んで花実は咲かないと思う。だから、俺は松永様に一旦退くことを勧めた。即ち、隠居だ。


「それは……」


「妙案だと思うぞ。修理大夫殿が後ろ盾にならないようなら、碌な事にならん。松永家を守るためにも、考えてみてはどうか?」


「今川様まで……そのような事を……」


「それと、御所様」


「なんだ?」


「修理大夫殿が当てにならなくなった以上、御所様の御身にも何が起こるかわかりません。摂津ら幕臣は軍事力を有しておらず、従って松永殿が失脚されたら……」


その場合はいよいよ歯止めが利かなくなる。場合によっては、三好の重臣らが暴走して義輝公を弑す恐れがあると義元公は仰せられた。それは史実と同じ展開である。


「ならば、今川勢が京に留まり、目を光らせては……」


「その場合、摂津らの標的が我らに向かうことになるでしょう。三好家が陰れば、今川家の一強ですからな。それでは何のために三好家の力を削ごうとしたのか……という話になるでしょうし」


それゆえに、義元公ははっきりと宣言された。今川軍は正月に叙任があるため、そこで一旦は上洛するけど、近江まで引き揚げて様子見に徹すると。


「ま、待て!今川は余を見捨てるというのか!」


「見捨てはいたしません。何かあれば、直ちに近江より馳せ参じましょう」


「間に合うのか!?近江に居て間に合うと申すのか!」


「我が軍が駆けつけるまで、頑張って下され」


「今川殿!」


どこか冗談っぽく言われたけど、義元公は発言を撤回しなかった。挙句、もしもの時は京を捨てて近江の勢多まで逃げて来れば、きちんと保護するからまた「がんばれ」とも。


「い、今川殿!」


それにしても……こうして上洛を果たしたというのに、万邦協和が実現するのはまだまだずっと先のようだな。はてさて、来年はどうなる事やら……。


(第6章 南近江・上洛編 完 ⇒ 第7章 京・政争編へ続く)

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