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【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第4章 川中島・援軍編

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第221話 嘉兵衛は、川中島の戦いに臨む(1)

永禄4年(1561年)8月中旬 信濃国海津城 松下嘉兵衛


海津城の櫓に上って千曲川の方角を望むと、上杉勢がゆっくりとその川向こうを進んでいるのが見えた。その中には本陣を示す『毘』の旗の姿もあった。


そして、早晩その上杉勢は史実通りに、妻女山に登ると見られている。これは俺だけでなく、勘助殿も同じ意見だ。


「しかし、舐められたものだな。我らに堂々と横っ面を晒しながら進むとな……」


「兵部殿。くれぐれも申しておきますが、勝手にこの城から出撃する者が出ないように、改めて徹底を」


「わかっている、勘助殿。全ての門は我が赤備えが固めておるゆえ、何びとたりとも外には出させんから安心しろ」


ただ、そうはいうが、舌の根が乾かぬうちに騒動が起きている様子がこの櫓から見えた。舐められて堪るかと、血気盛んな連中が門に押し寄せて小競り合いをしている。


「あれは……穴山殿ですかな?」


「どうやらそのようですな……」


俺と勘助殿が呆れるようにそう吐くと、飯富殿は「何をやっているのだ!」と顔を真っ赤にして梯子を下りて行かれた。その後の様子もここから見えたが、騒動を起こした穴山殿が殴り倒されてどこかに連行されていった。馬鹿な奴だ……。


「御見苦しい所をお見せしたようで」


「いえいえ、お気になさらずに」


「ところで、大蔵殿。この後の話なのですが……」


『啄木鳥戦法』を前提とした作戦計画は、すでに信玄公を含めた武田軍首脳部の承認を得てはいる。だから、勘助殿の話はその作戦の内容確認に近い物だった。こうして実際に上杉軍が現れたわけだが、変更する点はないかと。


「今のところは変えるべき点はないように思いますが……何か気になる事でも?」


「いや、某からは何もありませんが、大蔵殿なら何かあるのではないかと……ただ、そう思っただけですよ」


俺なら何かあると気づくことか。おそらく、勘助殿が立てた作戦案に修正を加えるように進言した事がもしかしたら引っ掛かっているのかもしれないな。


「そうですなぁ……」


期待に応えるべく、俺はもう一度上杉軍の様子を眺めた。特に変わった様子は見られないが……


「ん?」


「何か気づかれましたか?」


「何だか、兵の数が多いような気がしませぬか?」


「兵の数が多い……?」


越後に放った間者からの知らせでは、今回の出陣に際しておよそ1万8千の兵を率いていると聞いているが、俺と勘助殿の読みではそのうちの幾分かは善光寺あたりに残すと見ていたのだ。万一の場合に越後への退路を考えるのであれば……と。


「ですが、あの兵の数は……その1万8千をそのまま連れてきたようにしか見えませぬか?」


「確かに……大蔵殿の言われる通りですな」


そして、その背景に隠された上杉政虎の意図を共に考える。


「全軍でここに来たという事は、退路を確保せずに挑んできていると……そう思われますか?」


「その可能性はあるかもしれぬが……儂は他の事を考えた」


「他の事?」


それは一体何なのだろうか。そんな事を思っていると目の前の上杉軍から一騎の騎馬武者がこちらに向かって駆けてくるのが見えた。


「あれは……」


「ご存じなのですか?」


「ええ、まあ……あの男は、上泉伊勢守殿ですよ」


上泉伊勢守——もちろん、その名は知っている。新陰流の祖にして俺の前世では『剣聖』と称えられた男だ。


「しかし、なぜその上泉殿が単騎でこちらに向かってきているのですか?」


「わからぬが……上泉殿は上野の長野家に仕えていたはずだ。その上泉殿が上杉勢の中から姿を見せたという事は、先程の答えになるが、上野の軍勢が加わっていると考えるべきではないかな?」


勘助殿はそう述べられた上で、兵力の見積が甘かった可能性を示唆した。目の前の兵力はもしかしたら、善光寺に予備兵を残した上での兵力ではないかと。


「とにかく、すぐに調べた方がよさそうですね」


ただ、その時この城に向かってその上泉殿が叫ばれた。「腕に覚えがある者は出て来い」と。


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