表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【モブ武将】松下嘉兵衛は、木下藤吉郎を手放さない!~おこぼれの小大名で終わりたくないので、三英傑を手玉に取ってビッグになろうと思います!  作者: 冬華
第4章 川中島・援軍編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

226/455

第206話 嘉兵衛は、無人斎の言葉を伝える

永禄4年(1561年)閏3月下旬 信濃国上原城 松下嘉兵衛


信玄公と義信公の確執は、かなり深刻なようだ。城内に入った後に開かれた酒宴においても、お互い隣り合わせて座っているのに、それぞれが隣に誰も居ないかのようにふるまっているのだ。


しかも、信玄公は程々で信長の元へと歩み寄ってはそこでずっと酒を飲んでいるし、義信公の方はというと一人取り残されたまま、上座で静かに酒を飲んでいた。


その様子を見て、不意に無人斎様の事を思い出した。無人斎様が居たならば、この息子と孫の親子喧嘩をどう仲裁するのかと……。


「あ……」


そうだ。無人斎様で思い出したけど、信玄公への伝言を預かっていたのだ。俺は、早くこの宿題を片付けるために、わざとらしく楽しそうに大きな声を挙げている信玄公の元へ近づいた。


「なんだ、大蔵。別におまえに用はないぞ?」


「そうは申しても、無人斎様から伝言を預かっておりまして……」


「なに?あの糞親父からか?」


そして、嫌そうな顔をしている信玄公に問答無用でその内容を伝えた。即ち、今回のいくさで長尾に勝てなければ、飛騨、更にその向こうにある越前や加賀、越中を狙ってはどうかと。これで宿題は片付いた。


「ふん!余計なお世話だ……といいたいが、大蔵よ」


「はい」


「そなたはどう思う。糞親父の言うとおりにした方がいいと思うか?」


信玄公がそうお言葉を述べられると、勘助殿や飯富殿も近くに座られた。飯富殿に促されて、義信公でさえも。この様子からすると、もしかしたら武田家でも同じ意見が出ていたのかもしれない。


「それでどうなのだ?」


「そうですねぇ……」


まあ、この件は信濃に来るまでの道中で俺なりに考えていた。俺は、信玄公に無人斎様の提案に従ってみてはとお勧めする事にした。


「理由は?」


「此度のいくさは、武田家にとって非常に有利な状況で始める事が出来ます。何しろ、長尾は関東でのいくさで疲弊したまま、川中島へ突入するわけですから。ゆえに、この状況でも勝てないとなれば、即ち、今の国力のまま何度戦っても、おそらく勝てないと存じます」


「何を言うか!」とその時、叫ぶ声が聞こえた。振り向くとその声の主は義信公だった。信玄公は非常に不愉快そうな顔をして何か言おうとしたが、庇うように飯富殿が前に出て、まずはご自分の意見を述べられた。


「お言葉ではございますが、いくさとは時の運もございましょう。此度負けたからと言って、次も負けるとは限らないのではありませんか?」


ただ、此度のいくさはその時の運が備わったいくさだ。それでも勝てなければ……という意味で申し上げたと伝えると、飯富殿は反論されなかった。


……いや、もしかしたら飯富殿は始めから理解されていたのかもしれないな。これは、義信公を守ろうと敢えてその想いを代弁したということか。大変だな、傅役というお役目も……。


「しかし、飛騨やその先の国を獲って、長尾を上回る国力を得るのが先だというお考えは理解できましたが、果たしてそのような事は可能なのですか?」


「勘助殿……それは、道の事を言われているのですね?」


「そのとおりです。例え領土を奪ったところで、兵や物資を往来できる道がなければ、維持が容易ではないかと思うのですが……」


そして、道を作るには金がかかる。武田家は多くの金山を保有していて裕福ではあるが、それほどの工事ができるほどの資金まで捻出できるのかと言えば、どうやら難しいようだ。


勘助殿は無人斎様の構想に理解は示しつつも、「絵に描いた餅」だと断じた。


「ですが……その資金が飛騨にあるとすれば、如何ですかな?」


「飛騨に資金がある?それはどういうことだ!」


「実はですな、ここだけの話なのですが……」


これは、松永様よりこっそり教えてもらった事だが、飛騨・帰雲山には幕府の隠し金山があって、しかも、永正年間に管理者だった管領・細川政元が暗殺されてから、誰にも引き継がれずにそのままになっていると。


「それはつまり……」


「そこを押さえれば、道路建設の資金は確保できるのではないかと」


もっとも、現地では代官の内ヶ島氏が多少使い込んでいるかもしれないが、それでも使い切れずに相当な金が蔵に収められているはずだと松永様は言っておられた。もし、本気で使い込んでいたら、飛騨を制覇するくらいはやっているはずだとして。


「幕府からお咎めは受けぬか?」


「そこは上手くやるのですよ。例えば……金を横領していた不届きな代官を成敗したから、金山の管理は今後武田家が引き継ぐと言って、京にはわずかな金を毎年送る。それが適正な金額なのかは、幕府に調査はできません」


何しろ、今の幕臣たちは三好家との勢力争いで忙しいのだ。飛騨に人を送る余裕があるとは考えられない。


「ああ、そうそう。松永様に口止め料は支払っておいた方が良いとは思いますが、気を付けなければならないのはそんな所ですかね」


その答えに信玄公は満足されたのか。「主も悪よのう」と高笑いなされたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ