三十三 幸せの帰り道 5(後編)
森の中を歩き、私たちが着いたエルフとドワーフの国。中央には精霊の木が生い茂り、そこに彼らの住処はあった。
ここに来る前にレオは「エルフはね」金色、緑色の長い髪、緑色の瞳、色違いの民族衣装、耳が長く、男女ともに綺麗な人が多いと説明してくれた。
実際に来たエルフの国は本当に美男美女ばかりで、みんな身長が高くてスタイルがいい。
エルフの国には他族の旅人たちもいて、緑豊かで、華やかな国だった。
「ティーこの道を真っ直ぐにいった、右側にあるロロの薬局店が目的地ね」
そう言ってレオに連れてきてもらったのは、色とりどりの花や薬草が店先に咲く、可愛い木造作りのお店だった。
レオも店を見上げて。
「中々、良さそうな店だね」
「はい、素敵で、可愛いお店です」
「あら、獣人さんの夫婦にそう言ってもらえると、嬉しいわ」
店先で立ち止まり話していた、私たちの会話が店主さんに聞こえたのだろう。私たちの前に長い金髪、グリーン色の瞳のとても綺麗な女性? 男性? どちらともに取れる風貌の方が現れた。
「いらっしゃいな。私の店はお薬しかないけど。よろしければ、店の中も見ていってちょうだい」
店主に誘われるように店の中へ、壁にはいろんな種類のドライフラワーがぶら下がり、花やハーブを生けた鉢、薬草などが所狭しと店に置かれていた。
ここの店主は
「小さな、お店でしょ?」
と微笑む。
私は首を振り。
「いいえ、こだわりのある薬局店だと思います。ドライフラワー、鉢植えの花が綺麗です」
「そう言ってくれると嬉しい、ありがとう。どれも乾燥させて煎じれば薬になるのよ。この店に置いてある、どんな植物もみんな薬になるわ」
「ええ、花が、お薬になるんですか?」
そう聞いた私に、このドライフラワーは傷薬になって、この鉢植えの花は風邪薬、これは腹痛、こっちは塗り薬になるのと、店主は一つ一つ丁寧に詳しく教えてくれた。
今までに飲んできた薬の元を辿れば、花や薬草を煎じたり、調合してできていたんだ。
「レオ、薬って奥が深いのね」
「ああ、そうだな」
「フフッ、奥様は薬にご興味があるようですね。とても可愛らしくて、初々しい奥様……お二人は新婚さんなのかしら? でしたら、旦那様に特別な薬もお作りできますわよ」
「あ、いいや、その薬はまた今度お願いします。今日は友に頼まれて、この店に薬を取りに来ました」
「まあ、そうでしたか。でしたら、注文票をお待ちですか?」
レオはリュックからモコから預かった、注文票を取り出し店主さんに渡した。
それを受け取り、注文票を見た店主は。
「お得意のモコ様のお知り合いの方なのですね。頼まれたお薬をいまお待ちしますわ」
注文票を持ち、店の奥に入って行った。
「ティー、綺麗な人で緊張するな」
「はい、私も緊張しています」
しばらく待つと店主は手に緑色のガラスの瓶に入った液体と、乾燥薬草を持って奥から現れた。そして、何故か私たちを見て優しげに微笑んだ。
「仲が良い夫婦だと思っておりましたが、尻尾も仲良しのお二人ですのね」
「尻尾?」
「奥様はお気付きになられていないのですか? 先程からお二人の尻尾が絡まって、戯れあっておりますよ」
(え、私とレオの尻尾がじゃれている?)
普段なら無い自分の尻尾を確認した、ここの店主の言う通り、レオの立派な尻尾と私の尻尾が仲良くからまっている。
「レ、レオ、早く言ってよ」
「えぇ、言わないよ。俺はティーは可愛ことをするなって、嬉しかったから」
店主も、微笑んで『そうだ』と手を叩き。
「初々しくってラブラブで羨ましい。……オッと話がそれましたわね。これがモコ様のご注文された品です」
店のカウンターにモコが頼んだ商品を置いた。
レオはそれを確認する。
「えっと、モコが頼んだ乾燥薬草と液体薬ですね、確かに受け取りました。これはモコから預かった交換の品だそうです。白い花がついたカチューシャと花の髪留め、花のイヤリングです」
「白い花が可愛い、喜んで交換させていただきますわ。モコ様の交換品はいつもウチの家内が喜びます」
ウチの家内が喜ぶ……と言うことは。
このエルフの方は綺麗な男性の方なんだ。
「またのお越しをお待ちしております」
「はい、また来ます」
「ありがとう、ございました」
モコさんの商品を受け取り、ロロの薬局店を後にした。
+
レオとエルフの名物バラのソフトクリームと、薬草のアイスを食べながら、次に向かったのは隣のドワーフの国。
岩山の隙間から入って行くと、ちょうど中央の広げたところに、岩をくり抜き出来た住居が並んでいた。
隣接する自然豊かなエルフの国とは違い、薄暗い洞窟の中には、火を灯したランプが岩壁に、いくつもぶら下がっている。
ドワーフの身長は150センチくらいで、さほど私と変わらない。茶色い髪に豊かな髭を生やして、筋肉質な体型、頭に三角帽をかぶり、手にツルハシと火がついたカンテラをぶら下げていた。
「この岩山では主に金属石が取れるんだって」
その為。洞窟のあちこちからカンカン、カンカンとツルハシを叩き、ノミで壁を削る音が聞こえてきていた。ここで掘られた金属石が、彼らの生活源となっている。
ドワーフは女性が少ないのか。外に出ている者は殆どが髭を生やした、手が長く足が短い、作業服を着た男性ばかりだった。
「ティー、ここの左奥にトムじいという。ドワーフの中でトップクラスの、鍛冶職人がいるらしいんだ」
「トップクラスの方ですか? ルフさんは凄い方に剣をお願いしたんですね」
「そうだね。ルフが言うには、一度トムじいの剣を使うと彼の剣しか持てなくなる。彼が打った剣は使い勝手が良く、手に馴染むと言っていたよ」
そのトムじいの店は左奥の赤い暖簾が目印らしい。
左奥に向かい赤い暖簾を見つけて中に入った。
カウンターの奥。炎の前で鉄を撃つ白髪混じりのドワーフがいた。彼がルフが求める剣を作るトムじい。
彼は私たちに気付くと鉄を撃つ手を止めた。声を上げて女性の弟子を呼び、後を任せて私たちのところにやってきた。
「いらっしゃいませ、おっ、珍しいな獣人の番か?」
私たちをジロジロ見た。その途端、変わったお弟子さんはガンと、大きな音を立てて鉄を撃ち。
「あんたぁ! その態度はお客さん失礼だよ、お客さんにそんなこと言わないの!」
トムじいが交代した人はお弟子さんではなく、彼の奥さんみたい。
彼は慌てて頭を下げた。
「すみません、今日は何をお求めになりますか?」
「友が頼んだ剣を受け取りに来ました。注文票はこれです」
「なんじゃ、ルフの友達かい。ちょっと待ってろ、いま取ってくる」
レオから注文票を受け取り、右側の扉を開けて中に入っていった。戻ってきた彼の手には、持ち手に皮が巻かれた鉄製の双剣と、持ち手が赤茶色の包丁が握られてた。
「ルフに頼まれた双剣と包丁だ」
「これは見事な双剣と包丁ですね。ルフから預かった交換の品、鉄鉱石と水晶石、黒檀、魔石です」
「よし、交換じゃ。こちらの包丁は奥さんに渡してくれと、この前に手紙でルフに言われておった、持ってみてくだされ」
「私、ですか?」
トムじい包丁を受け取った。いままで料理を作るときはレオと同じ包丁を使っていた。レオは『私専用のを買うか?』と聞いたけど……料理の腕前はなく、勿体無いと、少し前にレオに言ったばかり。
「よかったな、ティー、ルフからの贈り物だ。遠慮せずにちゃんと受け取るんだよ」
「はい、軽くて使いやすそう。レオ、これでたくさん料理を作るね」
「あぁ、楽しみにしているよ」
トムじいにお礼を言って帰ろうとした。
その私たちをトムじいが止める、どうやらレオが腰に差した剣が気になったらしい。
「俺の剣? 見ますか?」
「是非、見せてくれ」
レオの剣を受け取ったトムじいは、剣を眺めて嬉しそうに笑った。
「これはワシが若い頃に打った剣じゃ……お前さん、この剣を相当、大切に使っとってくれたんじゃな」
良い剣じゃ、レオの剣を見て褒めた。
「ありがとうございます。この剣は俺の大切な相棒です。俺が冒険者だった頃、初めて貰った依頼金で手に入れたものですから」
「そうか、元の持ち主はこの剣を扱えなくて、売ったのじゃろうな。お前、良い主人に会えて良かったな」
と、剣に語った。
喜んだトムじいはフォークとナイフ、スプーンのセットをプレゼントしてくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう。その剣を大切にな!」
手を振りドワーフの国を後にした。
森を抜ける途中に私の体が輝き、獣人な姿から元の姿に戻った。
「薬の効果が消えたみたいだね」
「残念。レオと尻尾を絡められなくなっちゃった」
「それは残念だけど……手を繋いで、今夜の宿まで帰ろう」
レオと手を繋いで、今夜の宿に戻ったのだった。




