三十一 幸せの帰り道 4
荷馬車の中で外に護衛として立っている、リンとエンを荷馬車の中に呼び寄せて、昼食を取ることにした。
「レオ、ここでならフードと、姿を戻しても平気じゃない?」
「そうだな、人気のないところに荷馬車を止めたし、近付いて来る者がいたら、直ぐに反応もできるな」
パサっとフードを外しライオンの姿に戻った。それを見ていた王女はリンとエンに、同じようにフードを取らせた。
フードを取った、二人の護衛の頭とお尻に耳と尻尾があった。
「王女様の護衛の方って、獣人の方だったのですね」
「そうよ、わたしが選んで護衛になって貰ったの。二人ともレオくらいに強いわよ」
二人は私に胸に手を当て一礼した。
「初めましてティーさん。私ーーリンはヒョウ、エンはトラの獣人です。レオは王女殿下の言う通りかなりの強者です。一ヶ月に一度の手合わせてで私と互角の戦いをします」
リンのグリーン色の瞳が、ギラリとレオを見て光る。
一ヶ月に一度の手合わせ?
レオは王女の護衛二人と互角。
「この前、助けてもらったときも凄かった。レオってS級の冒険者なんだよね。私の住んでいた村に冒険者はいなかったから、余り馴染みが無くて、よく分かっていなかった……ごめんね」
幼い頃、両親が毛織物を売りに出るとき、大きな街で護衛を雇っていくらい。冒険者ギルドも冒険者もエルバ国で初めて知ったことだ。
「ティーはそれでいいんだよ。俺はもう冒険には出ていない、森の守りと薬草採取で暮らしていけるからね」
レオはそう言って目を細めた。
よかった、私は怪我をするレオは見たくないもの。
「勿体無い、あなたほどの腕ならSS級にも慣れて……父上の近衛騎士にもなれるのに」
キッと唇を噛んだ王女、その隣に座る護衛、二人もそうだと頷いている。
だけど、レオは首を横に振る。
「悪いのですが、俺にはSS級冒険者、近衛騎士にも興味ありません。若い頃に仲間と冒険は十分に楽しみました。いまはティーと二人でのんびり暮らしたいし、森を守る仕事だって結構大変ですからね」
と言って、ニャーロ街で買ってきた昼食を広げ始めた。買ってきたのはニャーロ街の名物料理ニャーロ巻き。
薄く焼いたとうもろこしの粉の皮に野菜、お肉、チーズ、ハムを巻き、甘辛のタレをかけて食べると、お店の人が食べ方を教えてくれた。
他にホットドッグとサンドイッチ、飲み物はもう一つのニャーロ名産、梨の果実水を買ってきた。
「さあ、食べてください。食事が終わりしだい俺たちはビーラン国を目指しますので」
途中で話を区切られて少しムッとした王女。
しかし、これ以上、話を聞かない体制を取ったレオを見て。
「……わかった、この話は国に戻ってからでも出来るわ。いただきます」
食事を始めた王女は、まだレオを諦めていないらしい。レオは「諦めの悪い人だ」と隣で、ため息をつき。
私はレオが決めることには口は出さないと決めて、ニャーロ巻きを楽しんだ。
+
「レオ、ティー、聞いてよモコがね……」
モコへの愛の大きさに驚き、ニャーロ巻きを何度かお皿に落とした私と苦笑いを浮かべで、何も言わないレオ。
慣れているのか普通な護衛リンとエン。
昼食は王女のモコさん愛の話しで終わった。
話をしてスッキリしたのか「レオ、ティー気を付けて旅を続けてね」王女は馬に跨り颯爽と護衛二人を連れて、ニャーロ街から去っていった。
王女を見送ったあと、レオは肩の力を抜いた。
「ふうっ、ユズリーナ王女様は悪い人ではないんだけどね、推しが強いって言うのか、我が強いよね……」
「私とはまったく違う。素敵で、強い女性でした」
「ほんとあの人は強いよね。俺は可愛いティーの方がいい。モコも大変な人に惚れられたもんだ」
レオは人事のように笑っていた。
+
ニャーロ街を出てから、休みなく荷馬車を走らせて。
私たちは夕暮れ過ぎに大国ビーランに着いた。
手続きを終えて門をくぐって見えてきたのは。
王都の中を赤く照らす提灯の多さ。そして王都の中を行き交う、人々は手に同じ様な提灯を手にぶら下げて、ランプの代わりに使っていた。
王都の中心にアーチ橋がかかり川が流れていて、いままで寄った国とは違い。建造物は煉瓦、石壁ではなく白壁と木造建築で、提灯の明かりで赤く色づく、織物、木製品、陶器が名産、大国ビーラン。
ここで宿屋を取り、昼食の残りで夕食を取ったあと、レオは紅茶を飲みながら。
「明日はティーを人間の国じゃない国に、連れて行ってあげる。楽しみにしていてね」
と私に言った。




