三十 幸せの帰り道 3
ニャーロ街について驚いた。
レオが着いて来ないだろうと言っていた彼女が、私たちよりも早くニャーロ街に着いていたのだ。
(なぜ、彼女は私たちがここに来ることがわかったの?)
「レオ、また会ったね」
「…………ハァ、まったく」
その後、人懐っこくレオと私の後を追っかけて来る彼女と、魔法の国ではいなかった、レオと同じくらいの長身でフードを被った二人が、彼女の後ろから着いて来ていた。
何なのこの状態は? と一人、驚いていた。
「レオ、昼食の時間だけど、何食べる?」
「…………。」
彼女はレオに無視をされても、ズーッと話しかけてくるから、私達は街の人たちの注目を浴びている。それでもレオは彼女に呼ばれても振り向かずに、進んでいたのだけど、いきなり足を止めて振り向き。
イライラした表情を浮かべて、
「いい加減にしてください、ユズリーナ様!」
彼女の事をユズリーナと呼んだ。
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街の中で目立つからとサッと、買い物を済ませて荷馬車に戻ってきた。フードを被った二人は荷馬車の外に立ち、私達とユズリーナは後ろの荷台に乗った。
荷台に乗ってすぐ声を上げたのは、ユズリーナと呼ばれた女性。
「レオ、ずるい、こんなに可愛い子と旅行をしているなんて。お父様から聞いたわよ、今度、この子と結婚もするんでしょ? わたしにも説明してよ!」
「ユズリーナ様、落ち着いてください。今回の旅は旅行ではなく、ティーの両親への結婚の挨拶です」
それを聞いたユズリーナは「まぁっ」と口元に手を当てた。
「そうだったの、で、ご両親は獣人レオとの結婚を許してくれたの?」
獣人? このユズリーナはレオが獣人だと知っている。
「ユズリーナ様ゆるすも何も……彼女の両親はすでに亡くなっておりますので、ご挨拶だけいたしました」
「あ、ごめんなさい……ティー、ごめんね」
「平気ですので気にしないでください。……あの、この女性はレオのお知り合いだったの?」
誰が分からず話が先に進むから、一人だけのけ者のような気がして、思いっきり聞いてみた。
「驚き過ぎて忘れていた。……ティーに紹介がまだだったね、この女性は俺たちのエルデ国の第二王女だ」
「えっ、えぇ! エルデ国の第二王女様! わ、私、とんだ、失礼をいたしました……すみません」
床にぶつかるくらい、思いっきり頭を下げた。
「ティー、王女に頭なんて下げなくていい。最初に絡んできたのは王女の方だ。まったく、いきなりあんな場所でSランクだと言うし、ティーには田舎娘だって、失礼なことを言うから、ほんと驚いたよ」
レオが言えば、王女が言い返す。
「それは悪かったわ。でも、レオがSランクは本当じゃない。それに見に行ったらティーがあんまりにも可愛いんだもの。彼女が田舎から出てきたって聞いていたから、それしか思いつかなかったの……ごめんね」
「ハァ……まったく、旅の間は面倒な事が起きないようにSランクは隠して、いまはAランクになっています。それに王女の絡み方は何と言いますか、淑女らしからぬ下品でした。護衛のリンとエンも無理矢理、わがままを言ってこんな所まで連れて来て」
最後はレオに捲し立てられて、王女は本当のことだったのか、ウグッと押し黙った。
その隣で、私はパニックになっていた。
「ちょ、ちょっと待ってレオ。聞いていた話をまとめると……皆様はレオの知り合いなのよね」
「そうだよ、他の国でエルデ国の第二王女だとバレると、後々面倒になるから、あんな下手くそで、変な芝居に乗るしかなかったんだ」
「まあ、芝居が下手くそで悪かったわね」
王女の演技、私には嫌な女性にしか見えなかったから、下手くそではなかったと思う。
「そうだったんだ、びっくりした」
「ごめん、ティーにもう一つ言うと冒険者ギルドで、エルデ国に報告もしていたんだ」
「国に報告?」
話を聞くと、森を守る仕事は国王陛下から直々に命令されてついた職。冒険者ギルドでモコさん達と手紙などと連絡しあって、森の状態を確認していたらしい。
「レオ、私のためルース村に着いて来てくれて、ありがとう」
「当たり前だよ。俺とティーはいずれ結婚するんだから、まず初めに両親に挨拶はしないとね」
レオと見つめ合っていた。
そこに「仲良すぎ!」と叫び、荷馬車の床を王女はバンと叩いた。
「ほんとなの? ティーはライオン姿のレオをちゃんと好きなの? 前のアイツのように、いまの姿が好きとか言わなわよね」
王女にグイグイこれられた。
これは私もちゃんと答えられる。
「私はレオの全てが好きです。一番はライオン姿が好き……モフモフで可愛いし、温かくて、大きくて、優しくて……全てが好きです!」
王女の瞳が開き、嬉しそうに細められる。
「レオ、ティーの告白を聞いた? レオの全部好きですって。わたしもモフモフが可愛いのは分かるわ、モコは可愛い……本当に、半端なく、食べちゃいたいくらいに可愛い」
「あの、ユズリーナ様……心の声が漏れてますよ」
ハッとして、レオの背中をバシバシ叩き。
「レオ、よかったじゃない。今度はちゃんと素敵な人を見つけたのね。あんなに可愛いモフモフが嫌いだとか、アイツに酷いことを言われて、落ち込んだレオを随分と見て来たから心配していたの」
(王女様が言う、アイツとはアイリス様のこと? そのアイリス様に酷いことを言われて、落ち込んだレオを王女様は知っているんだ)
「そうだ、ユズリーナ王女。俺の心配はもう心配いらない。さぁ、王女は国に帰った帰った、モコが心配してるぞ、ちゃんと旅に出るって言って出て来たのですか?」
「言ったわよ、ちょっとレオに会いにいってくるって、物凄く止められたけど無理矢理、来てしまったわ」
「ハァ、王女はティーよりも年上なのに、いつまでたっても落ち着かない。いまにモコに愛想尽かされますよ」
「それは困るわ、私はモコが一番に好きだもの。お父様を説得して、いずれはお嫁にもらってもらうんだから!」
私が住む、エルデ国の第二王女様は実に可愛らしい人だった。




