二十八 幸せの帰り道。ランシュ国
マント領ルース村からの帰り、私とレオは美味しい食べ物をたくさん食べて、多くの国と街を見て回った。
今日、泊まるのは歴史建造物が多く残る、古都ランシュ国の宿屋。荷車を宿屋に預けて夕食後、部屋のベッドでレオとまったりしていた。
「そうだ、レオさん。お昼に前を通った王都の中央に建つ古い時計台。あの時計台って"幸せのパワースポット"だと言われているですって。なんでも昔、この国の王子様と平民の娘がお忍びで、愛を育んだ場所と言われているらしいの」
「愛を育むか。それで、その王子と平民の娘は結ばれたの?」
「はい、国王陛下は二人の愛の深さに王子と娘さんの交際を認め。一年後、二人は国中に祝福されて結婚したって、宿屋の女将さんに聞きました」
「それで、あの時計台の周りには人が多かったんだね。幸せのパワースポットか……、ティーも登りたい?」
そう聞かれて、隣に寝転ぶレオに首を横に振った。
「私は時計台に登らなくても平気だよ。だって、好きな人が、レオが側にいるから」
「ティーがそう言ってくれるのは嬉しいけど。女の子はその手の話好きだよね? ティーは同じ年代の子とそんな話しなかった?」
同じ年代の子か……
「えっと、村で同じ世代の子はリオン君と、領主のセジールお嬢様しかいなかったの……」
「えっ!」
「男爵のセジールお嬢様は舞踏会、お茶会など貴族の集まりがあったらしいのだけど。私とリオン君はいつも二人で村で過ごしていたわ」
だから、小さい頃からリオン君を好きな、セジールお嬢様に目の敵にされていたな。
『わたしのリオン君に近寄らないで!』
昔を思い出して苦笑いをしていた。
隣に寝転んでいたレオに"ティー"と呼ばれて、ガシッと両手を掴まれた。
「レオさん?」
「明日、俺とあのパワースポットの時計台に登ろう。……登っても、少しの時間になるかもしれないけど……」
「え、レオさん無理しなくていいよ。お土産屋さんで時計台の置物を買って帰りましょう」
と言ったのだけど、レオはブンブンと首を降り。
「いや明日、絶対に時計台に登る。国に帰るまでティーと、たくさん思い出を作る!」
「ほんと、ありがとうレオさん」
本音を言うと少し気になっていた。女の子達が頬を赤らめ、恋人と手を繋いで時計台に登っていたから。
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次の日、王都ランシュは雨が降っていた。そのおかげか時計台は人がまばらで、私たちが登ろうとしたときには人がおらず、二人きりの貸し切りになった。
「レオさん、見て、王都全体に霧がかかって、とても神秘的だわ」
時計台からランシュ城の石垣門が、霧の中うっすら見えた。平民の娘さんもここで好きな人と、この景色を眺めたのかな。
「雨のランシュもいいね、人も少ないし」
「フフッ、レオさん私たちってなんだか、昔この時計台でひっそり会っていた王子と娘さんと同じ、お忍びデートみたいだね」
「え、俺が王子なのか? ……ちょっと、無理がある設定だ」
「そんな事ないわ、レオさんは私の王子様だもの」
彼の手を取り指を絡めて、人前だとまだ恥ずかしい恋人繋ぎをした。そのときローブのフードから見えた、レオの口元が嬉しそうに、こうを描いた。




