表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者に裏切られた田舎娘は、異国の地で獣人に甘やかされる  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/34

二十一 拐われたティー(2)

 ここは何処? 薄目を開けて辺りを確認した。カビ臭く、崩れた壁と剥がれた壁紙、シャンデリアは天井から崩れ落ちていた。


 家具などはない殺風景な部屋。私はその部屋のひんやりした床の上に寝かされていた。


(足音だわ……誰かが、ここに来る)



「…………お嬢様、こちらです」



 誰かを呼ぶ男の声が聞こえた。その後、コツコツとこちらに近付くヒールの足音……怖い。何が起きているの? …………そうだ、リコの店から数人の男たちに、気絶させられた。


 店を襲った黒ずくめの男達は、私がお嬢様の想い人をとったと言っていた。もしかして、レオとのデートの帰りに王都で会った、アイリスと言う公爵令嬢のお嬢様?


 部屋に鳴り響いていたヒールの足音は、コツっと、私の近くで消えて……誰かに見下ろされた。


「この子、そろそろ目覚める頃かしら?」

「はい、アイリスお嬢様」


 いま"アイリスお嬢様"とハッキリ聞こえた、なんのために、私をこんなところに連れてきたの?


「それにしても流行遅れのダサい服……前も思ったけど、みそぼらしい子ね。こんな子がレオと一緒になりたいだなんて、公爵の私に失礼だわ」


「そうです、お嬢様!」

「お嬢様の方がお似合いです」


「当たり前じゃない。レオにはあの素敵な姿のまま、私の旦那になるの。獣の姿なんてあり得ないわ!」


 その一言に腹が立った、もふもふの姿も含めて全てがレオなのに。


「やっぱり、レオはあの半獣の姿が素敵よ」


 我慢できず私は声を上げてしまった。


「それは違うわ。レオさんを好きなのなら彼の全部を好きになって。全てがレオさんなの、もふもふのレオさんは可愛いし、素敵だわ!」


 はあ、はあ、出せるだけの声で言い終わったあと、私の真上で"ギリリッ"と歯軋りの音が聞こえた。


「あなた、寝たふりがお上手ね。平民のくせに貴族に歯向かうなんて生意気、ちょっと、この子を起こしなさい!」


「かしこまりました」


 強引に男に立たせられて綺麗な顔を歪ませた、アイリスの平手打ちが私の頬に飛ぶ。


 バチィッ!



「きゃっ!」



「なに、訳のわからないことを言っているの? 早く、レオを諦めなさい! あの人は私のなんだから。私たちは両思いなの。後から出てきて私たちの間に割り込まないで!」


 バチィッ! 今度は反対側の頬を叩かれた。この人にどんなに平手打ちをされても、痛くても、私は歯を食いしばり彼女を睨んだ。


「何よ、その目は! 何がもふもふ? 何が可愛い? あんな獣、恐怖でしかないわ!」


 好きな人にその言い方は酷い。


「そんなことない! レオさんは怖くなんてない! レオさんは優しい。レオは傷付いた私を助けてくれた人だもの!」


「まだ、私にそんな口をきて、いいと思っているの!」


 バチィ、バチィとまた叩かれて、ヒールでお腹を蹴られた。痛い、痛いけど、レオを想う気持ちはこの人なんかには負けない!



 ――絶対に負けないんだから!



「なん度だって言うわ。私はレオさんが大好き。全てが好き、好き、大好きレオさん!」


「違う、違う、違うわ! 彼が愛しているのは、この私なの!」



 思いっきり彼女の拳で殴られた。



「ギャァ!」



「アイリスお嬢様、おやめください。それ以上は……あなたの綺麗な手に傷が付きます」


 私を殴り、真っ赤になったアイリスの手をみて、周りの男達は止めた。しかし、怒りがおさまらない、アイリスは周りの男を押しのけた。


「煩い、私に指図しないで! な、何よ、その左手の指輪? それは私がレオから貰うはずだった指輪よ!!」


 レオのと婚約指輪、お揃いの指輪にアイリスは触れようとした。


「この指輪に触らないで!」


 必死に体を丸くして指輪を隠した、その姿を見たお嬢様は更に激情して、ヒールで背中を踏んだ。


「グフッ……こ、この指輪は私のだもの。あなたの物じゃない!」


「指輪をよこしなさい! 彼に愛されている私が貰ってあげるわ!」


 お嬢様が足を振り上げて私を踏みつけようとした。怖い、レオさん! 彼の名前を心の中で叫び体に力を入れて目を瞑った。



 アイリスがあたえる激痛ではなく、ふわりと体が温かな何かに包まれた。



「ああ、レオ、私に会いに来てくれるのを待っていたわ」


(レオ? いま、私を守ってくれたのはレオなの?)


 また、アイリスの嬉しそうな声が聞こえる。

 レオは私を胸に抱えて、アイリスを睨みながら眉をひそめた。


「はぁ? なんで俺がお前なんかに会いにくるんだ?」


 キツイ物言いと牙を見せて、アイリスを威嚇する、レオの唸り声が部屋の中に響いた。



「許さんぞ! グルルルルッ、グルルルルッ、キサマは俺の番に何をした!」



「え、レオ、どうして?」

「お前はバカなのか?」


「酷いことを言わないで、私に会いに来たんでしょ?」


 こんなことをしでかしておきながらも、自分に会いに来たと思っていたアイリス、しかし、怒りに震えるレオを見て恐怖に顔を歪ませた。



「アイリス、お、お嬢様、お逃げくだ……グハァッ」


「うわぁ!」


 男たちの悲痛な声が聞こえた。レオと一緒に来た狼ルフの剣捌きと、雑貨屋モコの魔法で取り押さえられたようだ。アイリスはレオの威嚇に恐れ、腰を抜かし、床の上でガタガタ震えている。


「お前を殺してやる」


 グルルルルッと低く威嚇するレオの声。それが私には懐かしくて、涙と、金色毛玉、たてがみと温かな体温を思い出していた。



「いやぁああぁ!! 獣、私に近寄らないで!」



「獣でなにが悪い? ケッ、嫌いな、お前なんかに近寄るかよ」



「……ティー、平気か? 平気じゃないよな」


 アイリスに殴られて腫れてしまった私の頬を、彼は優しく撫でて、すりすり、すりすりした。


「助けに来てくれて、ありがとう」

「あたりまえだ……こうなったのは俺のせいだ、ごめんティー」


「そんな悲しい顔をしないで、私は平気……だよ。レオさん……大好き」


 大好きな彼の腕の中で、安心して私は気を失った。



「ティー? ティー!!!」


「レオ、落ち着け、ティーちゃんは大丈夫だ。お前の腕の中だから、安心して眠っただけだ」


「そうみたいだね。よし、ティーちゃんの怪我をいまのうちに治そうね」


「あ、ありがとう、ルフ、モコ」


「感謝はこんな所から帰ってからしてくれ。ここ、カビ臭くて鼻が痛くなる」


「そうだな、帰ろう」


 帰る前に、床に座る彼女の方に振り向き。


「アイリス、俺たちにニ度と手を出すな。今度出してみろ! 僕がお前の喉を噛み砕いてやる!」



「ヒィギャァ! ああ、ごめんなさい、もうニ度といたしません」 



 恐怖で震え上がり涙でボロボロに化粧が落ちた、アイリスを置き去りにしてリコのお店に戻った。







〈レオ視点〉


 取り敢えず国の騎士に報告だけして、僕たちはリコの店まで戻り、ティーはソファーに寝かせてもらっている。


「なぁ、アイリスの奴がティーを連れて行った所、昔の俺たちの遊び場だったな」


「そうだったね。王都の北奥お化けが出ると噂の屋敷。その屋敷が立つ場所がアイリスの父、公爵様の土地だったんだよね」


「ルフ、モコ、アイツの話はやめろ!」


 ティーが眠るリビングで、俺たちも休ませてもらっていた。あれだけ俺の威嚇に恐れたアイリスは、二度と俺たちに手は出さないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ