十八 婚約
私の生まれ故郷に行こうと話して三日後。
『ただいま』と、レオが勤め先からにこやかに帰宅してきた、どうしたの? と彼に聞いても、後でねと訳を教えてくれない。
レオのにこやかの原因が夕飯後にわかった、片付けが終わり、紅茶が乗った食卓に彼は書類を何枚か広げた。
「ティー、この書類に名前を書いて。あと、母印もね」
「え、レオさんこの書類に『誓いの書』と、書いてありますけど、コッチは財産分与と書いてあるわ」
「ティーの両親への報告は半年以上もあるから、先に婚約だけ済ませようと思ってね、実は婚約指輪も用意したんだ」
シャツの胸ポケットからお揃いのシルバー指輪を出した。この指輪は雑貨屋のモコの手作りで、魔法をほどこした指輪だとレオは説明してくれた。
「この指輪って、魔法の指輪なんですか?」
「そうだよ、俺の指に合わせて指輪のサイズが変わるんだ。だから獣人と半獣の時に取らなくていいから、ズーッとティーと同じ指輪を付けることができるんだ」
レオと同じ指輪。
「ティー、左手を出して」
「はい」
左手をレオの前に出すと、薬指にシルバーの婚約指輪をはめてくれた。次に俺にも付けてと、レオにつけている途中で嬉しくて、涙が込み上げてポロポロ頬を流れた。
「う、嬉しい、レオさん」
「俺も嬉しいよティー、君を抱きしめさせて」
食卓から立ち上がって、手を広げたレオの胸に『大好き!』と、声をあげて飛び込んだ私を、レオは優しく受け止めてくれた。
「俺だって大好きだよ。ティー、一緒に幸せになろうね」
「はい、私がレオさんを幸せにします」
「言ったね、僕だってティーを幸せにするんだからな」
スリスリ鼻を振り合わせて、誓いのキスをした。
+
「「レオ、ティーさん婚約おめでとう!」」
二日後、婚約の書類『誓いの書』も無事に受理された。今夜はレオの仲間は婚約の祝いパーティーを王都の獣人街、猫族のミヤの定食屋で開いてくれた。たくさんの料理、祝ってくれる大勢のレオの仲間にお礼をいった。
「ありがとう、みんな」
「ありがとうございます」
「レオ、大切にしろよ!」
「泣かすなよ!」
「そんなの当たり前だ」
みんなの温かい言葉に幸せで嬉しくって、そこでも私は大泣きした。その涙を優しくレオはハンカチで拭いてくれた。
「私、すごく、幸せです」
「俺もだ。ティー、踊ろうか」
「え、レオさん?」
いつの間にか音楽隊も来ていて、生演奏が始まっていた。レオに手を引かれて定食屋の真ん中のスペースで、手を取り合いクルクル踊った。
「ハハハッ、楽しいな、ティー」
「はい、楽しいです」
定食屋の外にまで仲間は溢れて手を取り合い踊り、お酒を飲み、料理を食べる。この日、獣人街では音楽と楽しい声が上がり、定食屋は夜遅くまで明かりが消えなかった。
獣人街から少し離れた暗闇。
今宵の闇夜に紛れる様に馬車が一台、楽しげな灯りを眺める様に止まっていたことをレオとわたし、誰も気が付かなかった。
+
たくさん笑い、飲んで、食べて帰りは明け方。私よりもお酒をたくさん飲まされた、レオは寝室のベッドに倒れ込んだ。
「フゥッ、酔った、酔った」
「レオさん、お水」
「ありがとう、ティーもお酒、けっこう飲まされてたろ」
『はい』と、酔って頬が赤いレオに頷いた。
「でも、レオさん、ほどでは無いわ」
「そうかな? ティーの頬が真っ赤だ」
頬に手が伸びてきて、レオに触れられて肉球の冷たさに『んっ……』と、声が漏れる。
「レオさんの肉球、冷たくて気持ちいい。もっと撫でて……欲しいな」
「フフ、いくらでも撫でてあげる。ティーは俺の手が気持ちいいのか、瞳がとろんとして可愛い」
「それはレオさんも同じだよ」
どちらともなく、近寄りキスを交わした。




