戦地に散る、一輪の花
初めて一日に三話更新しました...。
以降しません。絶対です。
「魔法で...そんな威力を出すなんて...」
おかしい。明らかに並の魔法使いを二万集めた様な火力じゃない。それよりも断然威力が高い。
「別に、おかしなことではないさ。王宮魔導師、Cランク以上の冒険者、貴族。これだけ集め、その上、魔力増強剤を服用させたからな」
声が聞こえていたのか...。
いや、それよりも、
「魔力増強剤だと?」
一時的に『魔』を冠する能力を引き上げる、どこの国も完全な実用化に成功していない危険な薬。
「君の考えていることはわかるよ。副作用とかはないのか、
世界条例違反行為では無いのか。とかだろう?」
考えが見透かされてる...?いや、ランドもそれらのことを考えたんだろう。
「でもね、思わないかい?異人王国への侵略行為ともとれる今の状況こそ、世界条例違反では無いかと」
確かに──。
「ごちゃごちゃうるさい」
冷たい声が、壮絶な殺気とともに振り撒かれる。
それを発した本人──キャンデルは、いつも見せない表情で、いつもと全く異なる空気を纏い、ゆっくりとランドの方へ歩いていく。
ちらと見えた瞳には、いつもの希望の光は無く、
ただただ暗い、絶望と殺意の波が見えた。
誰もその場を動かない。いや、動けない。
彼女の発する殺気に、誰もが恐れて動けない。
静寂と緊張が荒地を支配する。
「あなたは、最初から亜人をあの魔法に巻き込むつもりだった。違う?」
どこまでも冷たい声。瞳。
じっとりと背中が濡れる。
こく
ランドの首が、上下に動き──
──地面に転がる。
キャンデルの手には、血に濡れた剣が握られている。
誰もが容易に理解出来た。
総大将のランドが、今の一瞬で絶命したことを。
総大将の死によっておこるのは二つ。
指揮系統の混乱と、軍の瓦解。
こうなればこっちのもんだ。
「キャンデル!戻ってこい!」
俺は精一杯叫んだ。
が、キャンデルから返事はない。
返答の代わりに、血が飛んでくる。
それは、今斬った兵士の血だ。
「キャンデル!深追いするな!もうそいつらにこちらを攻める意志は無い!下がれ!」
俺の勘が告げている。何かが起こると。絶対に今深追いすれば痛い目を見ると。
でも、それはあくまで俺の感覚。
キャンデルにそれは共有出来ない。
自我を失っているこの状況じゃ、尚更。
そんな思考をしている間も、キャンデルは進んで行く。
「まずは、キャンデルを引かせなきゃ!」
地を蹴る。
「キャンデ──」
彼我の距離があと少しで手が届く距離まで迫った時、見えた。
こちらに向けて杖の先端を向ける後軍と、剣を高々と掲げる、元父親の姿が。
世界が、緩慢になる。
父親の剣が、ゆっくりと下ろされる。
それに呼応するように後軍の周囲の空気が凍りついていく。
俺の勘が告げた。死ぬ──と。
キャンデルは──
いつのまにか、俺を見ていた。
その口が、ゆっくりと動き、
『す、き、だ、よ』
そう、形をつくった。
途端、彼女の体がブレ、強烈な衝撃が腹部を襲い──
「がっはっ!」
──吹き飛ばされる。
空を高速で吹き飛びながら、彼女を見る。
彼女は、足を振り抜いた状態で笑っていた。
それは、いつもの彼女の笑顔と比べて、哀愁を感じさせる笑いだった。
その彼女の背後に、一本の巨大な氷柱が現れ──
轟音と共に血染めの氷柱が一本突き立った。




