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いつもより少し長めです


「おかえり、アデル君」

宿に戻ると、キャンデルが玄関で立っていた。


「た、ただいま...」

何故だろうか、今キャンデルから負のオーラが出てた気が...。


「お腹空いてるでしょう?お肉買っておきましたよ」

気のせいか...。


「ありがとう。早速食べよう」



「で、どうですか?収穫は?」

円卓のテーブルに向かい会って座り、そうキャンデルが切り出す。

「あった。それも、かなりいい情報が」

瞬間、彼女の纏う雰囲気が明るくなる。

「ど、どんな情報ですか?」


「現世に生きたままで神...メルクと会う方法だ」


「か、神様と会えるんですか!?」


「ただ、方法が方法だ...」


「ど、どんな方法なんですか...?」

真剣な表情でこちらを見てくる。


「子供が産まれた直後、その魂に傷を付ける...」


キャンデルの表情が固まる。

「そ、それって」


「ああ、その子供は十中八九死ぬだろう」

そう、これが唯一成功例のあるメルクと会う方法なのだ。


「神様に会うために...人を殺す...?そんなの...」

キャンデルは優しい。でも、今だけはその優しさが仇になる。


「そこまでして神様になんて会いたくない...」

泣き声で、そう言ってくる。


「なあ、キャンデル。お前は、才能が無くて困った事とか、無いか?」

彼女の肩を抱き、そう問いかける。


「ある...あるけど...」


「じゃあさ、才能あればなって思わなかった?」


「思った...思ったよ...。でも、それはみんなで助け合うことで何とかできた。だから、才能は要らなくてもいい...。人を殺して、神様に会って、自分の為に才能をくれなんて言えない」

他者を優先するキャンデルの考えは、かなりの美徳だ。

でも、この場ではそれも一点しか見てない事になる。


「じゃあさ、仮に神様に会わなくて、亜人公国のみんなが才能をもらわなかったとしよう。」

これは、あくまで推論。でも、可能性は非常に高い。


「戦争が起きた時、亜人公国は全滅するよ」


キャンデルの赤い目が、俺の目を捉える。


「どう──」

どうして、と言われる前に答えてやる。


「過去がそうだからだ」


「過去に公国が全滅した記録なんてない!」

首を振ってキャンデルが否定する。


「ああ、確かに全滅したことは無い。でも、しかけたことはあるよね?」


「亜人...戦争...」

彼女の目に理性が少し戻る。


「そう。あれは才能の所持者同士がぶつかったよね?それでも公国側に甚大な被害が出た」


「でも!またあんな戦争が起こるなんてこと──」


「有り得るんだよ」

腹の底から低い声を出す。変声期前で少し高いが...。


「いいか、よく聞け。ここまで、いや、俺が今までしてきた行動は、完全にあの戦争のきっかけになった人間と同じなんだよ。

過去は繰り返す。当然、同じだと知ってから変えようとしたさ、でも、もう大まかな流れが出来上がっていた。

太流から支流が流れても結局同じ海にたどり着く様に、今更違う道を辿っても、結末は一緒だ。

そしてたどり着いた結末は何か、亜人戦争の再来だよ。」

そこまで言って一息つく。


「そん...な...嘘よ...」

キャンデルの頭は、無慈悲だけれどもどちらを選ぶか決まったような選択に迫られているだろう。

どちらか決めているのに悩んでいる素振りを見せるのは、自分を護る為だろう。自分の罪悪感に潰されないように、自分は、必死に考えて、苦渋の決断をした、だから自分は悪くないと。


「一つの命と、公国の命。キャンデルの中ではもう結論が出ているよね?」


「いや、いやぁ...」

彼女は、弱々しく、首を振って、うずくまる。


非情だな...俺。

「答えて。キャンデル」


「──」

返ってくるのは沈黙。


「キャンデル、一ついい事を教えてあげよう。」

バッ!と振り返ったキャンデルの目に希望の光がきらめく。


「殺すのはクズの子供だ、殺しても両親以外悲しまないだろう」

彼女の顔が歪んだ。

「アデル君...そんな人だったの...?」

それは、失望の大きく混じる声だった。


「前にも言って無かったっけか?俺の目標は、世界の改変だ。使えるなら使うし、邪魔なら排除する。当然、こちらをよく思ってないやつらとは全面的に敵対する」


「そんなの...」


「ダメだって?悪いな。先に手を出したのはあっち(世界)だ。やり返されても文句は言うまい」


「さあ、キャンデル、選べ。人間のクズの子供か、お前の国のやつらか!」

どれだけ失望されても構わない。

使える駒は多い方がいいが、別に無くてもいい。


「──ども。」


「ん?」


「子供を...殺ぅ...」

選べた...か...。

選べ無ければ公国に帰したが、選んだ以上、どんなに嫌がっても連れていく。


「そうか」

俺は、それだけ言って布団に入った。


布団の外からは、キャンデルのすすり泣く声が一晩中聞こえていた。

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