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異人王国へ

「キャンデル、頼んだ」

「任せて」


キャンデルが大門の近くの宿舎へと足早に向かう。

彼女には今、大門を開ける為の交渉を頼んでいる。


早朝と深夜、この2つの時間帯は、どんな事情があっても大門は開かない。ただし、例外はある。


戦時中だったりすれば、開けることはある。


「アデル君!」

笑顔で彼女が戻ってくる。


「許可、貰って来ました」

今回の例外...それは俺だ。

キャンデルには、俺がこの国にいると戦争が始まると脅してもらった。当然、何十年も前から門兵をやっているやつら、いや、例の大戦を経験しているやつらはそれが起こった経緯を思い起こし、逃がす選択をするだろう。


亜人は優しい...が、やはり優先順位がある。

当然、長年仲間としてやってきたもの達とつい最近拾ってきた子供。

どう考えても俺(子供)の方が優先順位が低いだろう。


しかもその子供が爆弾を背負っていたとしたら?

否が応でも取り除きたくなるだろう。


それに今回は自分から出ると言っているのだ。

この機を逃してどうするか。


結果、俺は簡単に亜人公国から出ることに成功する。


「やりましたね!アデル君」

亜人公国から西に3時間位歩き、休憩する。


「ああ、ただ、さっきはごめんな」

キャンデルの体には大量の血液が付着しており、

一部、皮膚が抉れている所もあった。


これは、亜人公国からでてすぐに遭遇した魔物との戦闘でついたもの──ではない。

これは偽装工作で着いたものだ。


「突然脱げなんて言われた時はびっくりしましたよ」

「ごめん...」


「まあいいですよ」

とにかく、色々あって亜人公国からの脱出と

キャンデル死亡偽装が成功し、無事旅に出れるようになった。


「んで、こっからなんだが...」

「うん?」


「異人王国に向かう」


「ええ!?」

キャンデルが驚愕の声をあげる。

「異人王国って!北だよ!?ここ南だよ!?」

何を当たり前のことを...。


「ああ、そうだよ」

「何言ってるのこいつみたいな目で見ないで!

いや、ほら何年かかると思ってるの...?」


「ん?すぐ行けるだろ?」

確か陸続きだったはずだし...。


「行けるには行けるけど、あそこは、異邦人、つまりこの世界とは違う世界の知識がないと入れない所でしょ!」

身振り手振りで必死に伝えてくる。


「ああ、そういうことか。なら大丈夫」


「どこにも安心できる要素ないよ、アデル君...」


「いや、俺異邦人だから」


「へ...?」

キャンデルがポカンとした顔をしている。

なにかおかしいこと言ったか...?


「い、いや、おかしいでしょ!?どうしてそんな大事なこと黙って...。え、いややっぱり待って。」

そのまま彼女は数分考え込んだ。


「ねえアデル君...異邦人ならなんでハイル王国から逃げ出してきたのかな?」

少し勝ち誇った目で彼女はそう問いかけてくる。


「俺は転移者じゃなく転生者だからだ」

だから素直に答えてやる。


「はぇ?」

またもやポカンとするキャンデル。


「あーまあ向かってる時に話すよ」

俺はそう言って会話を切り上げ、荷物をまとめて歩き始める。


「あ、待ってアデル君」

その後をキャンデルが大慌てで追いかけてくる。


こんな時に思うことではないと思うが、

キャンデルといて楽しいと、そう感じた。

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