戦争の切っ掛け
投稿が遅れてすいません。
今日からまたゆっくりとですが投稿再開します。
「僕は、帰りたくない」
過去の再現になる可能性は高いが、今ここで王国の方に渡されれば何をされるかが容易に想像できるから逆の選択を選ぶことはできない。
「そっか。わかったよ」
彼女はそう笑って家を出ていった。
俺以外誰もいなくなった部屋で、俺は動き出す。
ここから先の過去の動きは知らない。
けど、おそらくこの動きも被っている。
それでも、動かないければならない。
過去を繰り返さないことよりも、今は生きることが大事だ。
俺は家を出て、街の中を駆け抜ける。
空は赤く染まり、暗闇が近ずいてくる。
影が伸び、そして消える。
周りから魔力の光は届かない。
既に、一区は抜け、二区との間の森に入っているからだ。
「逃げてきたけど、はぁはぁ、いい、よな...?」
今更になって不安が押し寄せてくる。
少しだけ、キャンデルに情が移ったようだ。
「ふう」
少し深く呼吸し、歩き始める。
「あ...」
直後、何かが頭の中で弾けた。
図書館でも、よくわからなかったある1つの事柄。
亜人公国と、ハイル王国の戦争の切っ掛けだ。
レン...なんじゃないか?
どちらも、戦争を起こすような決定的な何かがあったわけではなかった。なのに、戦争が起きたのは、無才のレンが関係してるんじゃないか?
あまりにも突拍子もない話なのに、何故か自分でこうじゃないかと納得してしまう。
レンの返還をハイル王国は求めたが、それを亜人公国、というかレンは拒否した。つまり、レンを還してくれないから奪うために戦争を人族が起こした。
周りの国から見れば亜人は子供を拐った悪。
人族はたった一人の子供を取り返すために全力になった優しい種族。
そう見える。
簡単にハイル王国の評価を上げ、亜人への戦闘行為を正当化し、なおかつ自身の目的も果たせる。
一石三鳥だ。やらない手はない。
そして、俺は今、レンと同じ行動をとってる。
必然的に、過去と現在が同一のものになっていく。
つまり、また大規模な戦争が起こる。
どうする。俺が過去の動きに似せた結果おそらく現在でも
戦争が起きることは確定になったはずだ。
どちらかが、いや、人族が、戦争を起こせる力がなければ...。
人族側の戦力を削げれば...。
いや、たらればは無しだ。
まだ戦争が始まると確定した訳じゃない。
けど、最悪の場面は想定して考えろ。
最悪の場合は戦争が始まり、俺が捕まることだ。
亜人は軒並み身体能力が高い。が、その分統制があまりきかないことがある。
対して人族は個が優れている訳では無いが統制がしっかりと行き届いている。
おそらく直接ぶつかれば数で勝っていても亜人に勝ち目はないだろう。
また、あんな地獄絵図を見させられるのか...?
脳裏に浮かぶのは墓石が見せてくれた最後の瞬間。
赤一色に染まった世界。
ダメだ。あれは、見たくないし、起こさせたくない。
あのクズ共ならいい。だけど、関係ないやつらが、あの中では死んでた。
「クソッ」
地面に拳を叩きつける。
俺に力があれば...。こんなこと、考えなかったし、考える必要もなかった。誰かを犠牲にすることもなかった。
こんなに憎しみを覚えることもなかった。
自分の無力さを自覚すればするほど、負の感情が増してくる。
感情の杯から、負の感情が溢れはじめる。
後悔が、溢れ出る。
理性が、閉じ込められる。
思考も...閉ざされる。
亜人公国内部にて、化物の遠吠えが一つ上がった。




