共通点
「ここか。」
俺の目の前には石でできた巨大な壁があった。
その元には槍を装備した人型の生き物、亜人がいた。
俺はそこにゆっくりと進んで行く。
亜人達は最初こちらを見て多少警戒したがすぐにその警戒を解き、優しい雰囲気で俺を迎えてくれた。
「どうしたんだい僕。」
目線を合わせて女性の亜人、耳からして猫の獣人がこちらに聞いてくる。
少しむず痒い。ここしばらく飢えていた女性の包み込む様な優しさをビンビンに感じる。
「その、お家と国に追い出されて...」
俺はできる限り子供を装った。
事実子供なのだが、それよりもう少し幼稚に見えるようにだ。
「そうなの...。でも、もう大丈夫よ。ここでなら私達があなたのことを守ってあげるから。」
獣人の女性が優しく頭を撫でてくれる。
心地いい。
「今日は私の家に来なさい?宿に泊まれるお金ないでしょ?」
「うん」
ありがたく泊まらせてもらおう。
「みなさ〜ん。私この子のお世話しますので後お願いしま〜す。」
そう彼女は言って、俺の手を引っ張って壁の中に入っていった。
あまりにも人通りが多い巨大な道から少し外れた所に彼女の家はあった。
白を基調とした、見ていて穏やかになるようなザ・平凡な家。
中は綺麗に整頓されており、見える範囲にはホコリ一つない。
リビング、風呂場、キッチン、トイレ、寝室。あとは空室。
これが彼女、キャンデルの家の内装だった。
「とりあえず、お風呂入ってこれ着てね。」
キャンデルが白いシャツを渡してくる。
「うん」
俺は抵抗もせず、流されるままに風呂に入り、シャツを着る。
俺の体はすっぽりとシャツに覆われた。
「さてと、お名前教えてくれるかな?」
リビングに置いてある柔らかいソファーで隣に座り、質問が始まる。
「アデル...です。」
「そっか、アデル君か。どうしてお家を追い出されちゃったの?」
「僕には、才能がなくて、知らない罪を着せられて...。
殺されそうになったから、必死に逃げ出した。」
拙い言葉で説明をするが、内心怒りでどうにかなりそうだ。
あの時の光景を思い出すだけでドロドロとした何かが心の中を埋め尽くす。
「そっか。才能無かったのか。辛かったね。他の人にも沢山いじめられたんでしょ...。辛かったね。」
頭を撫でながら、そう言ってくる。
本当なら、ここで癒されてこういった気持ちとはおさらばなんだろうけど。
これは、おさらばできない。いや、しちゃいけない。
ここでこの気持ちを捨てるってことはあいつらから逃げたってことになる。俺の意思で決めたものから目を逸らすことになる。
「うん...」
だから俺は、助けてや、守ってほしい。そう言った言葉を口にだせない。
「今日はもう寝とこうか。」
「うん...」
部屋の明かりが消え、布団に寝かされた。
それから俺は、この国、亜人公国のキャンデルの家で一週間過ごした。
当然、戦いなどとは無縁の、ただし、少し恨みがましい視線に晒される生活だ。
そんなある日、
「アデル君、ハイル王国のお父さんの所に帰りたい?」
突然キャンデルがそんなことを聞いてきた。
どういうことかと聞くと、
「アデル君を引き取りに来たって人がハイル王国からきたの。で、一応本人に確認しようと言うことで今聞いてるの。」
王国からの...遣いってことか...?
その時、ある映像が脳裏をよぎった。
それは、墓石にみせて貰ったレンという少年の過去の一部で...。
「共通...点...」
王国から、使者が来た。
同じだ。引き取りに来た。同じだ。断ろうとしている。同じだ。
過去の...再現が、俺とレンって奴を変えて起ころうとしてるのか...!?




