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レンという少年とアデルという少年

「レンってのは俺の友達のことだ。そいつは、何年前だ?

戦争の起きる少し前に10歳になって、祝福の儀式に参加したんだ。その時、何も才能がもらえなかったらしくてな。

国から追われて大変だったそうだ。少ない知識をフルに使って必死に逃げ回って...。」




火の手が上がる。爆裂音が耳をつんざき、殺意を滲ませた大声が小さな体全体に叩きつけられる。


(振り返っちゃダメだ。走らなきゃ。)

それらは全て、一人の少年に向けて放たれたものだ。

ボサボサの黒髪、ボロボロの服。苦痛に染まった茶色の瞳。

体は骨と皮しかないように見えるほど細い。


その少年の名前はレン・ロストル。

祝福の儀式で才能を与えられなかった人間だ。


レンは、赤く見える大地を踏みしめ、精一杯ある方向へ走り続ける。

既に何度も攻撃をくらっているのだろう。動きは緩慢、足どりもおぼつかない。


それでも、頑なに倒れようとしない。

そんな彼の背後に、大量の死の遣いが降り注ぐ。


そうやって命懸けで辿り着いたのは、大商道。商人が所狭しと店を展開したり、移動する中にレンは突っ込む。

商人達にもみくちゃにされながらも必死で来た道から遠ざかる。


その背中には、商人の奇異の目と騎士の怒りの視線が注がれていた。


「はぁ、はぁ、はぁ。逃げれた...。」


大商道を過ぎ、亜人公国の一歩手前までレンは辿り着いた。

その後、亜人公国の中に足を踏み入れ、まったりとした時間を過ごしていた。


その中には、恐らく今俺の触れている墓石に入っている男であろう男も、いた。


そこから時は飛び、

「レンという10歳位の子供が先々月あたりに来なかっただろうか?」

人族の鎧を着たおじさんが亜人公国の門兵にそう問いかけていた。


「来ましたが、それがどうかしましたか?」


「レンというこの御家族が会いたいとうるさいものですから、

こちらに渡してはくれませんか?」

おじさんは少し腰を引き頭を下げた。


これに、門兵の方は顔に疑問を浮かべ、

「レン殿からは、家を追い出され、騎士たちに追われてここまで来たときいております。」

そう口にだした。


「いえいえ、それは誤解でございます。我々騎士団は彼をご両親の元へ戻そうと追いかけただけでございます。」

笑みを絶やさずそのおじさんは言う。


「では、レン殿にあった大量の焼け跡などはどうしたのでしょうか?さらに、あれほどの空腹になるまで飯を与えなかったのはどうしてなのでしょうか?さらに、何故我々の元へ辿り着いたレン殿はあんなにも泣いたのでしょうか?教えてはくれませんか?」

不信に思ったのだろう。門兵が疑問に思っていたことをガンガン質問している。


「こころあたりがございません。もしかしたらここに来る途中に負った傷などではないでしょうか?」

あくまでシラを切り続けるおじさん。


「では、お引き取りください。

我々はレン殿をそちらに渡すことはできません。」


これ以上は無駄だと判断したのか、門兵は帰れとそのおじさんにいい、明後日の方向を向いた。


時がまた飛び、

また火の手が上がっていた。

場所は大商道。今だけは商人の姿が少しも見えない。


見えるのは亜人と人族の戦士がぶつかり合っている姿。

切り結び、互いに何かを叫んでいる。


その戦いは、何時間も続き、最後の一人が血の海に沈んだことで決着が着いた。


そこに、空から二つの影が飛んできた。

見た所王国軍、人族側だ。


「これで、奴を殺せるな。」

「はい。」

「レン。か、初代国王と同じ名前を持ちながら、才能を持たないとは。我が国をバカにしている。」

「さすがにそれは言い過ぎだと思います。それに、才能は得るのではなく、貰うのですから...。」

「いいや、甘いぞバルディック。やつは──」


そこで見えていた景色はもとの緑の世界に戻った。


「今のは...?」


『俺の才能の神髄。傍観者だ。レンに関する情報だけ抜き取って見せたが、どうだ?』


「レンのそこから先の情報はないのか?」


『生憎と俺はそこで死んで傍観者の力も消えたからわかんない。』


「そうか...」

ただ、これだけはわかった。

俺の他にも、才能のない人間はいた。

そして、国の対応は昔と今で変わってない。


『俺が言いたかったことは、亜人公国に行け。とにかく人間の国から逃げろ。じゃないと、レンみたいになるぞ。』


「あの追いかけられてた時のか?それなら既に経験済だ。

それに俺は、逃げるだけじゃダメなんだ。アイツらに啖呵切ってきたからな。」

少し笑いながらそう言う。


『レンからの、情報だ。お前なら、知っておいた方がいいハズだ。』


「俺を試していたのか?」


『いいや、この情報は、才能がない人が来たら伝えてくれと言われてたけど、俺は伝える気がなかった。でも、お前なら、伝えてもいい。いや、伝えた方がいい。』


「で、その情報とは?」

なんだ?才能のないやつだけに伝える情報...。


『これを聞いているのが僕と同じ境遇に遭った人だと言うことを信じて、僕はこの情報をだす。

僕には、才能がなかった。君も同じだと思う。

さて、僕が才能を貰えなかった年は、亜人公国とハイル王国との戦争が始まる丁度3年前だ。まあつまりハイル暦3046年になるね。君が才能を貰った年はいつだい?その年と僕の年、何か共通点はないかい?

僕はね、これは何年か何十年かわからないけど、確実にこの世界に一人しか出ないんじゃないかって思ってるんだ。

魔族も、亜人も、人族も、みんな何かしらの神様を信仰し才能を貰ってる。でも、才能を貰えないのは、この世界で一人だけ。

あくまで適当な仮説ではある。もしかしたらこの先、これを見てくれる人はいないかもしれない。でも、これは言って満足したい。もし君に才能がないなら、僕との間に何かしらの共通点があるはずだ。それがわかれば、もう才能が無くて殺される人も、いなくなるかもしれない。

まあ、以上です。ご視聴ありがとうございました。なんてね。』


『これが、情報だ。』


音声再生みたいなものかな?便利だな。


「共通点...か。」


『まあこれで何かわかることは期待していない。ただ、一応伝えといた。頭の片隅にでも置いといてくれ。』


「わかった。ありがとうな。」


俺はそう言って墓石から手を離し、歩き始めた。さっき聞いた情報というか考察というか願望というかなんというのかわからない同類の話を思い出しながら。

うおーどうして俺はこんなに話をややこしくするのが得意なんだー!

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