旧大商道の墓石
「亜人公国に行くか。」
最初異人王国を目指していたのはランドが獣人と関係が悪いという点から避けていたのであって、一人になった今、一番近い所に行くのはいいと思う。
それに、人間というかこの国、ハイル王国と敵対しているしな。
問題は入れてくれるかどうかだが、そこはどうにでもなると思っている。
前にも言ったが、亜人は基本優しい。
今人族と敵対しているのも、戦争があったからだ。
戦争に関わっていないはずの10歳位の子供なら、喜んで入れてくれるだろう。
俺はそう考え、南、亜人公国へと続いていた旧大商道を歩いていく。戦争が起きる前まで亜人公国と交易していたときに使われていた道路だったが、今ではすっかり使われなくなり、商人の代わりに大量の草が道を塞いでいる。
俺はその道に何も持たず、入っていった。
「ん?」
なんか不思議な感じがするな。
体全てが埋まるほど高い草の中で、俺は何かの違和感を感じた。
体が、引っ張られてる...?
この中に入ってからずっと一直線にしか進んでない。
当然、横道に逸れたとかそういうのも無いはずだ。
ただ、何か体を誘導されてるような、自分の意思に反するように足が動いてるような気がする。
はっきりとはわからない。でも、このまま歩いて行けば答えはわかるはずだ。気のせいなのか、それとも本当に何かされているのか。
結果はその後30分後にでた。
俺の目の前には墓石があった。
墓石には
『静かに眠れ 愛しき友よ』
そう彫られていた。
これが誰の墓石かも、人族か亜人か、はたまた別の種族なのか、何もわからない。
「これに俺は引き寄せられたのか?」
体が熱くなる。目の前の墓石と共鳴しているような気分だ。
墓石の文字をなぞる。
何かわからないか...?
『レンか?レンだろ!?この何の才能も感じられない雰囲気は人間じゃお前しかいないもんな!』
突然、体の中に声が響いた。
『いやーよかったよかった。滅多にここに来なくなったからとにかく人を寄せるようにしてたけど誰も来なくてな。いやー久しぶりの人間がお前でよかった。お前俺の心読めるのか?
それにしても、なんでさっきから黙ってるんだ?』
体の中を振動が駆け抜ける感覚が物凄く気持ち悪い。
でも、こいつの話出てるレンという人物。
こいつに俺は惹かれた。
なんの才能もないと、こいつはレンというやつのことを言った。
「なあ、レンというやつの話をしてくれるか?」
俺は墓石に話しかける。
『レンじゃ、ない...?』
墓石からあるはずのない感情が伝わってくる。
『そんな、レン以外で、この反応?』
驚いているのが丸わかりだ。
「俺も、才能が無いんだよ。」
俺は苛立たしい記憶をねじ込めながら自分の才能が無いことを自白する。
『な...。てことは、レンは、そうか。』
墓石は何かを納得したように落ち着く。
「なあ、教えてくれないか?そのレンってやつのことを。」
もう一度聞いてみる。こいつは俺の知らないことを知っている。そんな確信がある。
『...。まあいいか。いいぜ。教えてやる。ただし、この情報を拡散するのだけはやめてくれ。』
「わかった。」
これで、何かが少し変わるかも知れない...。




