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平行線

翌日、俺たちは来た道を戻り、夕方頃、ラルク領についた。

神父がここにいることを考えていたが、どうやら俺らが街から出たあとに元の領に戻ったらしく、いなかった。


俺は今フードを深く被り誰の目にもアデルという才能のない少年だとわからないようにして街中を歩いていた。

買い物、宿屋探し、諸々を全てランドがやってくれた。

なんでも、

「行動の前にお前がいるってこと知られたらまずいだろ?」

とのことらしいがランドが行っても十分アウトだと思う。


で、顔をみられるとまずいのに外を出歩いてる理由なのだが、少し図書館に寄りたいのだ。

今まで俺のように才能を貰えなかったやつは本当にいないのか?

本当は他にもいたんじゃないか?

いたのだとしたらそいつはどうなったんだ?

そんな事を知りたかったのだ。


ラルク領の図書館は市民開放。誰であろうと無料で自由に利用が可能だ。


当然、どんな服装でも注意されることはない。


だから俺はそのままフードを被って歴史書のコーナーへと足を進め、片っ端から目を通していく。


「館内にいらっしゃる方々、もう間も無く閉館の時間ですので、今お読みの本を棚に戻し、当館からお帰りください。」


「もうそんな時間か。」


図書館内に響く拡声器ごしの声で顔をあげる。

ざっと10冊、約1000年分か。

1000年みても、才能のない者が現れたという記録はない。


俺は大人しく今持っている本をしまい、外に出た。


外は夜風が冷たく、駆け足で宿へと戻った。




「今ここいる最高責任者と話がしたい。」

翌朝、ラルク領にある教会に訪れ、教会前で掃除をしている修道女に要望を伝える。

女はすぐさま教会の中に入り、司祭だと名乗る男を連れてきた。


「では、中の来客室でお話を聞きましょう。」


「わかった。案内してくれ。」

俺らは教会の中に入っていく。

キリスト教の教会みたいだな...。

そんなことを俺は思っていた。


「本日はどういった件で?」

司祭が聞いてくる。


「その前に、人払いをお願いできるか?」

周りにいる教会の関係者に話を聞かれるとまずいからな。


「わかりました。みなさん、外に出ていてください。」


「で、本題なんだが。」

ランドが切り出す。


「アデル、フードを脱げ。」


フードを脱ぐ。目の前には、驚いた顔の司祭がいた。


「な!あ、才無しの少年!?」


「何故みんな俺を殺そうとするんだ?その理由を教えて欲しい。」

優しく問いかける。


「やめろ!ふ、復讐しにきたんだろ!?お前を殺そうとした俺を!

頼む!許してくれ!金ならいくらでも払う!」

なのに、司祭はパニックになって土下座をしながら命の懇願をしてくる。


「いや、俺はただお前らが俺を殺そうとした理由なのだを知りたいだけなんだが。」


「理由?そんなもの一つしかないでしょう。」

聞きなれた声。俺を、二度死ぬ直前まで追い詰めたやつの声。


「神父...お前元の領地に戻ったんじゃないのかよ。」

慈母の様な笑みを浮かべた神父がそこに立っていた。


「いいですか、アデル君。君は神に愛されなかった。つまりは君は神に嫌われているんだよ。神が嫌うものは神の愛する世界には必要ないんだよ。」

さも当然といった態度でこちらに神父が言ってくる。


「それは、神がそう言っているのか?」


「いえいえ、そんなことを神が言うはずがないじゃないですか。全て我々の、いえ、神に選ばれた者の決定です。

神は平等に人を愛さねばなりません。しかし、やはり愛せぬ者はいるのです。それがあなた、アデル君なのです。

なれば、神のために君を排除することは正しい行い。

神が望む、神のための行為。」

ああ、神メルクよ...。と傍からみたらイカれているとしか思えない発言を堂々とする神父に、俺は一言。


「その神は、俺の事を生かしておきたいらしいぞ?」


「そんな嘘、誰が信じるのですか?」


「嘘はついていない。」


「アデル君。神はあなたを嫌っているのですよ?どうしてあなたを生かしておきたいと考えるのでしょう?」


「なあ、なんで俺が嫌われてるって言いきれるんだ?」

率直な疑問をぶつける。


「あなたが才能をもらえなかったこと以外に理由がありますか?」


「でもさ、神が俺のこと嫌いだと啓示したわけじゃないんだろ?」


「ええ。」


「なら、神の失敗で俺には才能が貰えなかったのかもしれなくないか?」


「いいえ、そんなことはありません。神は、間違いなどおかしません。」

ダメだ...。こいつは神のことを信じて疑わない。


「じゃあ、俺が嫌われているっていうのは勝手にお前らが考えたことって訳だな。もう一つ質問だ。

お前らは俺を何故殺そうとする?」


「はぁ。これだから10の子供というのは...。

何度も言っているでしょう。あなたはこの世に存在してはならないのです。神に愛されていないものは生きる意味がないのです。もっと言えば邪魔なのです。だから、殺します。」


「それは、神に啓示されたのか?」


「いいえ。私たちが神のために、言われなくてもすべきことですので、私たちが勝手にしていますよ。」


「俺を殺すことで、神が落ち込むかもしれないのに?」


「何故嫌いなものが死んで落ち込むのでしょうか?むしろ喜ばしいことでしょう。」


ここまで来てわかった平行線だ。何も変わらない。

ここにきたのは、無駄だった。


「そうか。じゃあな。」

椅子から立ち上がり、ランドと一緒に出ようとする。


「帰らせませんよ?」

教会の扉が、閉まった。しかも、魔法による多重ロック。


「何故獲物が向こうからきてくれたのに簡単に逃がすと思ったのでしょうか。」


魔法銃を構えた神父が、狙いをつけながらそう言う。


「本当、ロクな人間がいないな!この世界は!」

今回の話で疑問が一部解けた人と、さらにわからなくなった人がいるんじゃないでしょうか笑

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