狼王グラスト
「来るぞ!固まるな!動き回れ!」
それだけ言ってランドは駆け出した。
俺もランドに1拍遅れて逆方向へ駆ける。
昨日の遠吠えの時、俺は自分でもよく分かっていない能力に頼った。
結果的には発動できたが、かなりのダメージをくらった。
もう1回、この場であれ以上のダメージを受けたら多分死ぬ。
だから、ここでは使わない。
数の暴力に、ゴリ押しで打ち勝ってやる。
後ろをチラと見る。
雪崩のように碧眼が動いてくるのが見えた。
ゾッとする光景だ。
「ここで、やるしかない、か!」
丁度よく木が檻の様な形をしたところへ入り、入口で反転。
一気に相手するのが2,3匹まで減らせる立ち位置で戦闘を始める。
狼達は噛みつき、引っ掻こうとして牙や爪をのばすが、
それらは木か、別の狼達に邪魔される。
唯一先頭にいる3匹が攻撃できる位置にいるが、後ろからの攻撃で狙いがズレるのか、全然攻撃があたらない。
そのまま何もせず、狼たちの自滅を待っていると、三匹だけ残った。
三匹の目には怒りの目が浮かんでいた。
よくも俺らの仲間を!とかそんな感じだろうが俺は逃げて見てただけなのだから怒られる理由がない。
三匹は、愚直に横一列に並び、同時に飛びかかってきた。
が、空中、横一列、こんなチャンスは見逃せない。
空中にいる狼達の首に向けて、右回し蹴りを放ち、三匹纏めて木に叩きつける。
一匹は首がありえない方向に曲がり、一匹は圧迫で喉が潰れ、
一匹は頭蓋骨を破壊され、絶命した。
「今ので倒せなかったら、やられてたかもな...。」
今の弱っている体では、満足に動けないと判断した俺は、
先の一撃に全てをかけた。
全ての力、体重、命...。
その結果が今の狼達の惨状だ。
当然全てをかけたため、体力も底をついた。
遠くには、銀閃とそれに合わせて空中を舞う何かも見える。
ランドがあちらの狼を片ずけるのもすぐだろう。
さて、
「お前、誰だ?」
さっきから後ろで変な気が漂っていた。
気のせいかと目をつむっていたが、今、何かが動いたのがわかった。
「私の存在に気づく...か。」
その声は、頭の中に直接入ってきた。
念話の才能でも貰ったのだろう。
そいつは、闇からゆっくりと体を現し始めた。
白い長髪、白い狐面、透き通るような白い肌、全身に纏う白い着物。白を体現した女だった。
「存外、人間も捨てたものではないのかもしれぬな。」
なんだ、この圧迫感。人が放てるものじゃない...。
俺はここ数ヶ月で殺気と狂気、覇気と豪気、様々な気に触れた。どれも忘れてはいけない記憶と共に体に感覚が残ってる。
そのどれとも違う。言うなれば、神の放つ気、とでも言おうか。
それを、目の前の女から感じる。
「もう一度聞く。お前は誰だ?」
ここで動揺すれば、負けだ。
「ほう、私の気に触れてなんの反応も起こさないか。
さっきの兵達を一蹴したなのだ、この気を感じれぬはずがないものな。」
答えは返してくれないらしい。
「アデル!」
ランドがここについたようだ。すぐ後ろで声が聞こえた。
「揃ったな。」
ランドを、待っていたのか?
「私の名はグラスト。狼族を束ねる狼王よ。」
グラストの体が膨れ上がる。
同時、夜の闇よりも暗い漆黒の塊が、狼の形をとって
木で作られた檻の中に現れる。
「狼族を、束ねる!?」
つまりこいつは...。
「アデル、SSランクの野郎だ。」
ランド、いや、元ギルド長の言葉に緊張がまじる。
「私の兵を全て殺した罪、償わせてやるよ!」
今までで最大の咆哮が木の檻を破壊し、俺らの体を吹き飛ばす。
今、ここからランドとの初の共闘が始まった。
評価をつけてくださると今後の執筆のモチベがあがるので、もし続きが気になる、面白い等思われましたら評価をつけてくださるとありがたいです。




