二度目の遠吠え
パチパチ
「ん、んぅ。」
「起きたか?」
ランドの顔が目に映る。
「ああ、見張りありがとう。眠いだろ?代わるよ。」
「いや、大丈夫だ。俺だって元冒険者だ。この位慣れっこさ。」
俺を安心させるように言った言葉じゃない。
本当にただ事実を述べているだけなんだろう。
「そうか。じゃあ俺もやるよ。」
「おいおい、大丈夫か?寝ててもいいんだぜ?」
「今寝てすぐなんか寝れないよ。」
「そうか。」
「なあランド。あの遠吠え、あれが最大のやつだと思うか?」
遠吠えが聞こえた時に疑問に思った事を聞いてみる。
「わからない。前にも言ったが、遠吠えの最大の大きさは違うんだ。だから、現状何も俺は言えない。ただ、あれを最大のとは仮定しない方がいい。」
「ああ、そうだな。」
「アデル、移動するか?」
辺りが少しだけ明るくなってきている。焚き火の火の明るさじゃない。
陽が、出始めている。
「動こう。遠吠え村の件だけじゃなく、神父たちが追ってきてるかもしれないしな。」
朝食は何もない。ここら一帯、狼の占領下なのか、狼以外の魔物がでてこない。
そして、狼は倒すと消える。空気に溶けるように自然に消える。
俺らは今、空腹状態。その上、ランドは睡眠不足。
これがどんな影響を及ぼすか想像もつかない。
今はただ、何もならないことを祈ろう。
昼を過ぎた。相も変わらず収穫はなし。
いや、一つあったな。複数の眼をもつ狼のことだ。
あの後、一つ眼の狼と六つ眼の狼に出会った。
一つ眼は異常な速度で動き回る厄介な相手だった。
現状戦力としてカウントできるのはランドだけ。
そのランドが睡眠不足による集中力の不足で思うように動けず
スピードによる攪乱に見事嵌った。
その隙に去ろうとした一つ眼は、ランドが放った謎の遠距離攻撃にあたり、倒れた。
「今のどうやって当てたんだ!?」
「あ?なんかここかなって所に撃ったらあたった。」
まさかのまぐれの攻撃で一つ眼は倒した。
六つ眼も狼は完全変則タイプ。今まで出会った狼の全ての能力を使ってきた。
が、それは全て各紅眼の狼の能力の下位互換だった。
一つ眼程の速度はなく、三つ眼のような大量の仲間も無く、
四つ眼のような強力な精神攻撃もなく、五つ眼のように強力な魔法や魔法速射が使えるわけでもなく、ただただ、平均の能力を持っていた。
当然、そんな雑魚に手間をかけるはずが無く、
出会って10分首を落として倒した。
「ランドは、どう見てる?六つ眼のあの弱さ。」
「何かあるんじゃないかとは思ってるが何もわからないな。
それよりも俺は、二つ眼、まあ普通の紅眼の狼に会ってないことの方が疑問だ。」
「確かに...。二つ眼はいないとは見れないか?」
「そうとも見えるが...。」
引っかかるものがあるのだろう。ランドはすぐに答えを出せない。
「じゃあ今はいるということにしておこう。」
「ああ」
そこから、俺らは無言で歩いた。互いに、遠吠え村についてのことで考える時間が欲しかったのだ。
ランドの手が、俺の行く道を塞いだ。
「どうした?」
小声でランドに声をかける。
「村だ。廃村がある。」
「村?ここら辺に村なんて...。まさか...。」
「多分、遠吠え村だ。」
非常に最悪なタイミングだ。
夜が近ずいている。もう間もなく世界に闇が広がるだろう。
夜の暗さに、人間は慣れることができない。
対して狼は一瞬で闇に眼を慣らせる。
「逃げる手は?」
「無理だ。おそらく周囲に碧眼の狼が沢山いる。」
もうすぐ夜で、囲まれている。
しかもここは敵の本陣の前。
今日出ていく狼達の狙いが俺ら二人に移ってもおかしくない。
「クソ!お前と会ってからピンチしかこねえな!」
ランドがそう言いながら剣を抜く。
「それは、俺に言われても困る。」
疲弊した体に鞭打って動く。
「気を抜くな。昨日と同じやり方でいくぞ。」
「わかった。」
明かりが消え、世界を闇が支配する。
「アオオオオオン!!!」
遠吠えと同時。無数の碧色が、視界のほとんどを埋めつくした。
評価をつけてくださると今後の執筆のモチベがあがるので、もし続きが気になる、面白い等思われましたら評価をつけてくださるとありがたいです。




