決断
着いて早々に残り半分となった8層を見渡せるボスの住処の城の屋根からプレイヤーが避難したこと、敵の形態を確認する
本体は黒いドラゴンのような姿をしている
身体を纏っている黒い流体が世界をうねうねと侵食しているのが見えた
光沢のある黒い流体を焼き払おうか、それとも暴風で弾き飛ばそうか
そんなことを考えているとあっという間に3分の2ほどが侵食されてしまった
「会長っ、全力で強力な炎魔法をぶっ放してください。奈々さんは私たちのMPを適宜回復して」
やはり私らしく炎でガンガン攻めるのが一番だろうと初心に帰ってみた
「ハアアアアアっ!」
一番嫌がるであろうドラゴンの顔目掛けて次々と火の玉を撃ち込んでいく
攻撃を受けていることに気づいたのか、ドラゴンは怒りをあらわに咆哮を轟かせ、すぐさま火の玉の出所を探しだした
会長は一瞬怯んだが、私はさっさと気づけと言わんばかりに特大な火の玉を放った
流石に城の屋根の上にいることに気づいたのか、ドラゴンは真っ赤な瞳でこちらを睨みつけてきた
どうせあっちからは見えていないだろうが私も負けじと可愛い瞳を可能な限りキリッとさせて睨み返す
その間侵食は止まっていた
有効であると見た会長はひたすら魔法を放ち続ける
私はというと、嫌な予感がしてその予感の正体を見極めようとしていた
侵食していた流体をよく見るとこちらに向かってくるどころか、ドラゴンの身体へと再び戻りだしていた
「やばいっ、2人とも早く逃げないとっ」
戻るスピードは加速していきあたりを埋め尽くしていた闇が消えてきてドラゴンの身体がどんどん大きくなっていく
魔法を撃ち続ける会長と奈々さんにこっちに来るように叫ぶ
何故そんなことを言うのかとキョトンとしていたが、私があまりにも恐ろしい顔で言うから手を止めてこちらに走り出した
ドラゴンの口が大きく開くのが見えた
口の中は身体の色とは対照的な真っ白な光で満ちていた
すぐさまワープできるように設定して2人に向けて手を伸ばす
それまで静寂に包まれていた世界に突然ものすごく巨大な古いパソコンが起動するときのような大きな音が響きはじめた
「早くっ!」
2人と私の距離はあと2メートルほどだ
そういえばこんな光景、前にも見たような
真衣が私へ手を伸ばすも私が掴む前に後ろから斬りつけられた
6層での出来事が急にフラッシュバックする
あんな思いをまたしたくない
もっと腕が長ければ、牛乳をめちゃくちゃ飲んでおくべきだったかな
2人はほぼ同時に私のところへ着きそうだった
手と手の距離はもう1メートルもなかった
私たち目掛けてまばゆいビームが照射される
ビームの照射音よりも先にビームは到達しそうだ
あとほんの少しで手が触れる
でもあと数十メートルでビームが到達する
もしかしたら間に合わないかもしれない
あのビームを喰らったら死ぬかもしれない
それでも、
手に触れられる感触が来るまで、
押すことはできなかった




