茶室
「来ないかと思ったよ」
誰もいないはずの6層に男が2人、ワールドの端にある寺の茶室にいる
「お前とは一度話がしたかったからな」
この世界で暗躍している大人たち、そのかしらである桧山があいの父、安達聡と対峙している
「久しぶりだな、いつぶりだろ?」
「お前の娘さんが病気になって研究所をやめて以来だからな。もう5年か」
「もう5年も経つのか...。色々ありすぎてあっという間に過ぎちまった」
安達は創られた青空と日本古来の城下町を開き放たれた戸の間から見つめる
「こんな綺麗な世界がつくれるようになるなんて、技術の進歩は早いよな」
「ほんと、そうだな」
笑顔でお前もそう思うだろと賛同をもとめ向き直った安達の目の前で、桧山は拳銃を片手で構え、銃口は安達を捉えている
「この銃はゲーム内のアイテムではなくお前がつくった現実世界を模した嘘っぱちの世界に即して作られたものだ。だからこれで撃たれでもしたらダメージが数値化されることなく、生体維持装置の中のお前は死ぬ。頭のいいお前ならわかるよな?」
「自分を殺してどうするんだ?この世界を征服するとでも言うのか?」
想定外のことに全く動揺せず、むしろ挑発するように笑みを浮かべた
「この世界もお前の命もどうでもいい。おれはただ知りたい。お前の目的はなんだ?こんな世界をつくり我々を隔離して、しかもヘンテコなゲームの世界に書き換えやがったその目的は?」
「今は何も言えないな。言っても信じてもらえないだろうしね」
「はあ?つべこべ言わず答えろよ、死にてえのか?」
銃口を額に押し付け、今にも引き金を引いてやろうかという勢いで怒鳴り散らす
「ははっ、その脅しは残念ながら自分には効かないんだよ。なぜならおれは」
安達はなんだというのか?なぜ脅しが効かないのか?
その答えを思案する桧山だったがどれも答えとしてしっくりこない
ゲーム内だけでなく元の仮想空間でのあらゆるダメージさえも無効化しているのか?
しかしそんなものこちらがそれを無効化してしまう可能性もゼロではないだろう
「まさか、お前、」
「ああ、おれはまだ現実世界にいる」
あまりに信じ難い、でもその声はとても冗談を言ってるようには聞こえなかった
「まあゆっくり説明してやろう、この世界がなぜできたか、おれは何をしようとしているかを」
「いいのか?」
こんなにあっさりとこの世界の核心にたどり着けるとは桧山は微塵も思っていなかった
「その分お前たちには協力してもらうぞ」
この建物の周りを包囲していた桧山の仲間たちに一瞥した安達
彼は桧山の計画の全てに気づいていたようだ
まさに神だ
今もきっと現実世界でこちらを支配しているのだ
桧山は自分が到底抗えない相手であることを、まさに神のような力を手にした安達を前にして初めて恐怖を感じた
「そのためにお前たちはこの世界にいるのだから」
誰もが秘密裏にこのゲームに参加できていたと思っていたが、実は安達が意図して仕向けたことだった
「もうじきこの層にもプレイヤーが来る。もっと2人きりになれる場所へ」
安達は指を鳴らした
「あにき?????」
隠れていた桧山の部下たちは消えゆく桧山のもとへ飛びかかったが、2人はどこかへ消えてしまった




