幻想
「ああっ、奈々さんたちは?」
お姫様気分に浸っている場合ではない
なかなかにスリリングだった圭太の脱出方法で坂本と奈々さんは無事なのか?
気を失った坂本がそのまま墜落していく様子は容易に想像できる
でも私たちより来るのが遅いということはきっと坂本は気絶することなくまるで王子様のようにカッコよく降りてくるのかな
風が吹き荒れる上空を見上げると、燃え移った炎によって照らされる王子様の姿が浮かび上がっている
坂本もやるじゃん、と感心しかかったところで王子様の長い髪がやたら風でなびくのが見えた
ぐったりして抱きかかえられているいかついお姫様と合わせて考えると王子様とお姫様の配役が入れ替わったようだ
「奈々さん、大丈夫??」
「もう大丈夫よ。これだけ明るければ怖くないから」
華麗に降りてきた奈々さんはいつもどおりのクールで頼れる奈々さんに戻っていた
それにしてもあんなに暗いところがダメなんて、もしかしたら夜1人でトイレに行けないんじゃないかとぬいぐるみを抱えて恐る恐るトイレへ行く奈々さんを想像してみると、かわいすぎて
「ずるいなぁ」
「ん、何が?」
「いや、なんでも...、それより早く出ないと」
圭太が生み出した吹き抜けと上昇気流によってここは大分煙も無く綺麗な空気が残っているものの、早く出ないといつ家が崩れるかわからないから
「もう入口まで行くのも大変だし、壁ぶっ壊してそこから出ようぜ」
相変わらず乱暴な方法だけど今回ばかりはそれしかないかな
坂本を背負った圭太を先頭に、廊下の突き当たり目掛け走り出す
「ねえ、ここの建物って何階建てだっけ?」
「たしか3階か4階だった気が」
「もし4階建てだったら」
もし4階建てだったら、圭太が壊した床の数は2枚
1階に着くまでに通るはずの枚数は3枚
つまりもしかすると...
奈々さんの言いたいことを理解するのと同時に、
「うりゃあっ!」
圭太が壁を壊し、そのまま飛び出した
すぐ後ろにいた私と奈々さんも急に止まることはできずに続いて飛んでしまった
下手したらまた何十メートルもの高さから飛び降りることになるのか
今回は圭太は坂本わ背負っているからさっきみたいに技を使えないだろう
あれ?ということは...
あと数秒でものすごい衝撃が身体を襲うのか
あ、でもここはもう屋敷の外だからワープできるんじゃ
みんなまとめてワープさせて宿にもd
「痛っ!」
あまりにも早く地面に積もる雪に体がめり込んだのでびっくりして目を開けると、何も変わらない4階建ての屋敷だそびえ立っている
強いて言うなら中々激しく燃え盛ってるくらいか
あれだけ長かった階段ももしかしたら幻想だったのか?
「早く帰りましょ?またいつオバケが出てくるかわからないし」
辺りはすっかり真っ暗になっていて、その暗闇の中燃え盛る館というのも中々恐ろしい景色だ
「そうっすね」
「そうしましょう」
この手の込んだ不気味な場所を作ったのは恐らくあの人だろう
さっさとこんなところ立ち去って奈々さんと一緒にとっちめに行こう
そんなことを考えてしまう私もついに反抗期を迎えたのかもしれない




