強行突破
走って、走って、走って
こんなに廊下が長かったのか、廊下がまるで伸びているようなそんな気がしてしまうくらいだ
長い長い廊下を駆け抜けてなんとか階段にたどり着いたのだが、
「なんじゃこりゃ」
たしかここはせいぜい3階とか4階とかだったはずなんだけど、手すりから少し乗り出して下を見るとどういうわけか階段が螺旋状に何十回転もしており、1階なんて全然見えない
しかも各階にあった家具や雑貨が群れをなして階段を上がってきている
「さあどうするあい?」
「ええ?どうって言われても...」
圭太と坂本にも連戦につぐ連戦で疲れが見えてきたし、奈々さんは相変わらず腰が抜け落ちそうだし、到底正攻法で行って脱出できるとは思えない
「火を使うのはどうだ?さっきも炎魔法で敵倒せてたし」
「それは考えたけど、これだけの敵を倒すために強力な魔法を連発したら下手したらこの家に引火しちゃうかもしれないでしょ?」
もし火事にでもなったらそれこそ私たちは窮地に追い込まれてしまう
「いいじゃん、火事になっても」
またとんでもない事を言い出すから思わず言葉を失ったが
「おれと坂本が時間を稼ぐ間にあいがここから下に向かって魔法をぶっ放し続けて敵を全滅させる。あとはここから脱出するだけ。どうだ?この作戦」
「脱出ってそんな簡単にできるの?炎に包まれてる中何十階も降りなきゃいけないのよ?ダメージを受け続けるし下手したら一酸化炭素中毒になるかもしれないのよ?」
「それは大丈夫だ。一気に脱出できるから」
「はあ?どうするつもりなのよ?」
「もう圭太の方法で行こうぜ。敵がもうすぐそこだぞ」
「...わかった」
渋々圭太の提案を了承した
絶対他にもっといい方法があるはずだけどこの限られた時間内では思いつかなかったから本当に苦渋の決断だった
「よし、じゃあ坂本は右につけ。おれは左につく。先輩は...、あいのサポートを」
「私も戦うわ」
この非常事態に先輩もなんとか歩き出し戦う意思を見せる
めちゃくちゃ怖くて震えているけれど、それでも坂本よりは戦えるだろう
「じゃあ先輩は坂本のサポートを」
「わかったわ」
これで布陣は整った
あとは私が魔法を放ち続けるだけだ
効率よく敵を倒すなら階段に沿って炎を放射し続け1階まで到達させる?
でもそもそも炎が下まで届くかどうかわからないし、大事な階段がなくなってしまったら脱出どころじゃないだろう
「あい、階段くらいは燃やしてもいいぞ」
「本気で言ってる?」
圭太が敵と交戦したことで私の呼びかけは聞こえなかったようで、階段を燃やしていいという言葉が聞き間違いだということを確かめる術もなくなってしまった
「もう知らないっ、イケーーーッ!!!」
螺旋の中心を貫くように巨大な火柱を立ち上げる
そして
「爆ぜろっ」
火柱を一気に爆破させて炎を拡散させた
敵がやられたのか気になって下を覗き込むと、さっきまでうじゃうじゃいた家具たちは燃え尽きて灰と化したようだ
「圭太、いけるよ」
「お、早かったな」
敵に囲まれて絶対絶命の状況でもいつもの日常会話をしているような軽い返事に圭太の変人じみた部分を感じながら、そういえばこれからどんな破茶滅茶な方法で脱出するのかという疑問を思い出してしまった
ギリギリの戦いをしていた坂本と奈々さんも私たちの会話を聞いて戦いを切り上げてきたところで圭太もこっちへ来て説明を始める
「おれがあいを、坂本が先輩を抱きかかえて飛び降りる。わかったか?」
「はあ?説明にないんだけど」
「ほら、足元崩すぞ、早くしろ」
言われたまま坂本は奈々さんを抱え私は圭太にしがみつく
「うりゃっ」
圭太が剣を床にぶっ刺した
するとたちまち床は崩れて、私たちは自由落下を始めていた
すぐ下にも床があると思ったらそんなことなく数十メートル下まで行かないとなくて、現実世界だったら100パー死ぬような高さに私は気を失いかけていた
「おれを信じろ」
落下中に圭太が叫んだこの言葉はすぐに上へと昇って行ったが私は確実に耳で捉えて大事に離さなかった
お陰で目の前に迫り来る床への恐怖心は薄れて気を失わずにすんだ
もしかしたら前にクラーケンに叩きのめされた経験が生かされているのかもしれない
「くらえっ」
圭太が今度は剣を振って斬撃を床めがけ飛ばした
床は崩れてまた新たな床が出てきた
「次で着地するからな」
「ええっ、どうやって???」
重力加速度で思いっきり加速された私たちを圭太はどうやって勢いを緩め着地するのか
「あい、一旦離れろっ」
「ええええ?!無理無理無理」
「...後悔すんなよ」
そう言うと、私に何の了承もなく体制を変えて頭を真下へ持っていき、ぐんぐん加速させていった
圭太は左手にも剣を持ち、二刀流たとなって両腕を思いっきり振って空を切りだした
「うおおおおおっ」
圭太の切るスピードがどんどん上がっていき、周りに風が立ち込めて次第に竜巻のように強い上昇する気流を生み出した
下から吹き上げる風で空気抵抗が一気に大きくなりスピードが落ちていった
「ふう、大丈夫か?」
最後はかっこよく私のことをお姫様抱っこして華麗に着地した圭太
流石に白馬には乗っていないけれど、王子様っているんだ
そう思ってしまった私は痛い女でしょうか?




