灼熱地獄
あ、あついっ
2層は砂漠のステージにしたのだが、バグかなと思うくらいに暑すぎる
研究室のキンキンに冷房が効いた部屋でばっかり過ごしていたから暑さに慣れていない私だからここまできついのかなと思ったが
「あ、あい、み、みずくれ」
夏でも暑苦しい防具をつけて稽古に励む剣道部員が私よりも死にそうな顔をして水を求めているので私が特別暑がりじゃないんだなとわかった
「はあ、もう、水っ」
超弱めの水魔法を圭太に浴びせた
「あーきもちいーーっ」
私の魔法使いとしての能力が今のところ圭太を涼ませることにしか役立ってないことに複雑な心境だが
「ありがとな」
濡れた彼の爽やかな笑顔を見てちょっと嬉しくなるなんて
彼に私の弱点がばれないように必死で手をつねった
2層の中央にあるオアシスに築かれたプレイヤーの拠点となる街を宿を求めて歩き回っていたのだが
1軒目
「え、満室ですか?」
「申し訳ございません」
2軒目
「えーここも満室?」
「すみません、昨日のうちに満室になってしまって」
3軒目
「満室じゃないですよね?ね?」
「申し訳ありませんが当宿も」
「なんでどこもかしこも満室なのよっ。私たちが1層クリアしてあげたっていうのに、この仕打ちはひどすぎるっ」
7軒目
「金はあるから、私たちは1層クリア者にゲームの開発者よっ、他のプレイヤーの10倍は払えるんだから泊めなさいよっ」
そして10軒目
「1部屋空いてます」
「1部屋?」
私が圭太と一夜をともにしろっていうの?
冗談じゃないそんなことされたらこっちの身がもたないわっ
今から宿を増やすにもすでにオブジェクトがいっぱいでスペースがないため夜までにはできなさそうだ
こうなったらさっさとこの暑くて宿もないクソみたいな2層(自分がつくったんだけど)をクリアして3層へ行ってしまおう
とはいっても
ボスがいるダンジョンの場所は適当に決めてしまったため全く覚えていない
しょうがないから街で聞き込みをすることにした
私たちがクラスメイトと感動の再会をしたり
「あ、あいと圭太くんじゃん」
「あ、奈々、久しぶりー」
「ゲームの中でもおあついですねー」ヒソヒソ
「もう、そんなんじゃないから」
アイスを買って食べたり
「はい、圭太」
「お、ありがと」
となりのカップルがはい、あーんてしてるのがうらやましいな
圭太にやってあげたいな
「ね、圭太、私のアイス食べない?」
「あーおれいちご味苦手なんだよね」
「あ、そーですか」
街のランドマークのピラミッド観光したり
「うわ、でけー、これ登れんのかな」
「登れるかもだけど、これお墓なんだから、あんた呪われるわよ」
本来の目的を2人して見失いなんだかんだで2層を満喫していると、何やら騒がしいので行ってみるとなにか揉めてるようだ
「会長、ぜひおれたち野球部とともに冒険しましょう」
「いや、会長ちゃんは女バスがもらうから」
「何を言う、会長は我々渚会長親衛隊がお守りするんだ」
どうやらパーティに生徒会長を入れたいとみんな争っているようだ
まあたしかに渚会長は女の私が見ても性格よさそうだし綺麗だし頭いいしで、まさに学園のマドンナといえる存在だ
「綺麗な人だよねー、会長」
「え、あの人会長なの?知らなかったわ」
「えー、賞状もらうときとか見てるでしょ。ほら、校長先生の横にいるじゃん」
「いや、おれ人前に立つと緊張して吐くから毎回休んでるからわかんないんだよね」
「えー」
ほんとなんで私はこんなのが気になるのか
変なウイルスにかかってるんじゃないか
いっこうにおさまらないのにしびれを切らしたのか、会長が
「じゃあこの層のボスを倒したパーティに私が入ります」
会長のよく通る声は一気に視線を集めた
「この層にはダンジョンが4つあり、おそらくそのどれかにエリアボスがいるはず。なので、運よくエリアボスのいるダンジョンを引き当てクリアしたパーティに私が入ると言うことで、いいですね?」
なんで開発者の私が知らないことをこんな知ってるのか疑問だが非常にいいことを聞けた
さっそくダンジョンに行こうと思ったら
「おれたちは東のダンジョンに行くから他の奴らはくるなよ」
「ああっ?じゃあ私たちは西に行くから誰も来ないでね」
「では我々は北に向かうとしよう。横取りは許さんぞ」
「では私は南に行きますので、もちろん助けはいらないですよ」
え、私たち行っちゃダメなの?
絶対私たちが行ったほうがすぐ終わるんだけどな
「どーする圭太?」
「どっかに入れてもらおうぜ。おれたちなら入れてくれるだろ」
たしかに最強の剣士と魔法使いである私たちを入れない理由がない
私たちは自分を売り込みに行った




