届かない手紙
このとき全てのプレイヤーにメッセージが届いた
1層ボス ゴブリンキング撃破
2層開放
の知らせに街中は歓喜したに違いない
男どもはさっそく2層に行こうとしたがさすがに疲れが見えたので無理やり最初の街に連れ戻した
「よし、じゃあ今日はお疲れ様でした。かんぱーい」
「かんぱーい」
2層開放がそんなに嬉しかったのか、酒場ではあちらこちらで歓喜の声が響き渡っている
きっと私たちが攻略者であることはだれも知らないようで直接お礼を言われたりはしないが、聞き耳をたてると私たちへの賛辞の言葉が聞こえて来るので勝手に嬉しくなっている
それはみんなも同じようで、鼻を長くして慣れない酒をぐびぐび飲む
ゲームの中だからって妥協せずに料理の味にはめちゃめちゃこだわったかいがあったようで
みんな美味しいと食べてくれるのでさらに嬉しくなる
夜が更けてきて、酔いが回ってダウンする人がでてきたところで私は圭太がいつのまにかいなくなっているのに気づいた
風にあたりにでも行ってるのかなと外に出てみると思ったとおり彼は佇んでいた
「圭太ー、酔っちゃったの?」
「ああ、ちょっと気持ち悪くなっちゃって」
「もう、飲みすぎちゃだめだよー」
「いや初めてだから加減がわかんなくて」
いつもと変わらないくだらない会話をしているはずなのに、彼の言葉はいつもより重みがあるように感じた
いつもと違う景色のせいだろうか
それとも私とともにいれる時間が有限であることに気づいてしまったせいだろうか
昨日までの平凡な生活が一転、命を懸けたデスゲームに巻き込まれたのだ
そして彼は大事な部長さんを失った
と思いこんでいるのも影響あるだろう
「なあ、おれたちクリアできるかな」
「圭太なら大丈夫でしょ。あの素早い剣さばきで敵をズバズバ斬って斬って斬りまくれば倒せない敵なんていないよ」
「ふふっ、なんだよその動きは」
身振り手振りを交えて話す私の姿がそんなにおかしかったのか笑われてしまい、恥ずかしくて死にそうになる
「おれがこのゲームをクリアしてみせる。上手くいくかわからないし、下手したら死ぬかもしれない。だからおまえはもうおれについて来るな」
「えっ?」
「そんな悲しい顔するなよ。おれだって辛いんだからわかってくれよ」
「いやだよ、なんで圭太にそんなこと決められなきゃいけないの?」
「おまえ今日だってあと少しで攻撃されるところだったじゃねーか。もうこれ以上大事な人を傷つけたくないんだよ」
初めてみた彼の怒った表情に私は何も言えなかった
このゲームで人は死なないって言えばいいのか
私は強い防具をつけているから大丈夫だと言えばいいのか
私がこのゲームをつくったと言えばいいのか
きっと何を言ってもこの状況が良くなるとは思えなかった
次の日、彼はきっと私を避けるように早々とどこかへ行ってしまう気だろう
私が彼とともにいるためにはこれしかないだろうから
私はこれを早く終わらせる必要があった
このゲームにジョブシステムを追加することを
「はあはあ、圭太っ」
「あい?おまえなんで」
「圭太はさ、私とかみんなが死ぬのを見たくないんだよね。でも私は」
杖を空へ掲げ
「アトミックファイヤー」
巨大な火の玉をつくりだし、破裂させた
炎は私たちの四方八方へ散らばった
「圭太が最強の剣士なら、私は最強の魔道士になってみせる。そしてもう圭太の前で人を死なせたりしない、だから、だから私を連れていってよっ」
怖くて彼の反応を見ることはすぐにはできない
こんなにも1秒が長く感じられたのは初めてだ
長い沈黙が私の不安を加速させていく
先に沈黙を破ったのは圭太だった
「 はあっ、おまえには負けたよ」
「え、じゃあ」
「ああ、いっしょにがんはろーな、あい」
「うんっ」
手を差し伸べてきた彼の顔は、彼の背に輝く朝日が私の目に反射してよく見えなかった
「そう言えばさ、手紙、読んだ?」
「ん?なんのこと?」
「いや、なんでもない」
彼がいつもより赤く見えるのも朝日のせいだろうか
「ねー安達さんさー、圭太がどこにもいないんだけど、あれ?」
真っ先に酔いつぶれた坂本が2人が出発したかなり後に起きた
「こっちもいないのかよ。ほんとどこいったんだろ、ん?」
足元に落ちていた手紙を見つけ拾い上げた
「このきったない字は圭太のだな。2人ともいないことだし読んじゃうか」
他者に読まれることを意図していないこの手紙に書かれていたのは、彼女のできたことのない童貞非リアの坂本には刺激が強すぎたようだ
「わーわーわー、えーーーー、ふぁーーー」
気が動転した彼は手紙を持ち去ってしまった




