余韻
「ふう、ちょっと休憩しよ」
夢心地な時間の中にいても流石に疲れはするので、このままぶっとおしで踊り続けたら身の危険を感じたので、一旦ブレイクタイムをとることにした
「そういえばどうして私と踊ろうと思ったの?あんなに必死になって戦ってさ」
「お前のせいだからな。お前が無駄にモテるせいでおれが勝たなきゃいけなくなっちゃったんだよ」
「はあ。そんな人いるの?」
そんな変わり者がいるとは思えないのだけど
「ねえ、ちょっといいかな?」
なんかどこかで見たことあるようなないような
少しチャラそうな男子が私に話しかけてきた
「お前...」
圭太の顔が険しくなる
「確かにお前は武闘会で勝ったかもしれないけど、だからってあいさんが本当に結ばれたい相手がお前だとは限らないだろ?」
「はあ」
とんでも理論を振りかざしてくるから圭太も私も困惑してしまう
「ねえ、誰なのあいつ」
「ええっ、知らないのか?お前に告白したとか言ってたけど」
「私告白なんてされたこと...あ、あったような」
「何あいつその程度だったの?」
このゲームの中で最も大きなため息をついた
「これなら馬場キャプテンに譲りゃよかった」
「あいさん、おれと付き合ってくれませんか」
「ごめんなさい」
「ぐはぁっ」
こんな短い言葉で相手の心をえぐってしまうのは正直申し訳ない
これがモテる女の宿命というやつなのか
会長と違い極々一部の通な人にしか人気のない私が言うのもあれだが、こんな機会はもう二度とないから言わせて欲しい
「くうっ、神野圭太、幸せにしろよっ」
走り去る哀愁漂う背に青春を感じた
「はあっ」
ため息を吐く人がたくさんいるこの舞踏会
自分坂本もその1人だ
自分がもし武闘会で勝ったらダンスの相手として誘おうと思っていたのは、実は奈々先輩だったのだが、どうにもこうにも奈々先輩を誘う勇気なんてこれっぽっちも持ち合わせてないから、ただ1人ぽつんと圭太たちのダンスを見ていた
可憐な音楽が流れる中、少し騒がしい場所があり、目を向けるとそこには奈々先輩とその周りにうちのクラスの男子どもが群がっていた
どうやらペアになれなかった男子どもが奈々先輩に踊ってほしいと懇願し、それに先輩は困り果てているようだ
おれにもあんな図々しさだったり積極性があればなと思ったりするけれど、どうせ断られメンタルがボロボロになってしまうのはわかりきっているからなくて正解かもしれない
そんなことを考えていると、不意に先輩と目が合った
思わず見続けてしまったが、先輩も特に目をそらしたりはせず、自分のもとへと早足でやってくる
「ねえ、坂本君、ちょっとだけ踊ってくれない?」
「えええええ??」
「あの人たちしつこいから困っちゃって。ダメかな?」
「いやいや、ぜひ踊りたいです」
「そう、よかった」
初めてこんな間近で笑う先輩を見て、おれの心の病は重篤化してしまった
はたしておれはこの病を治せる日が来るのだろうか




