宿
若干名(野球部全員)がファストトラベルをするためのアイテムを持っていないことが発覚し、さすがに置いて行くわけにはいかないので私も渋々歩いて中央の街へ帰った
「おーい」
さすがに他のダンジョンへ行っていたみんなはすでにいた
「あいちゃん遅かったねー、心配したよー」
「いやいろいろありまして...」
「そっかそっか、まあ全員無事に帰ってこれたからよかった。それで今後のことなんだけどね」
そう言って会長が目をやった先を追うと
「やっぱり私の予想どおりボスはあのピラミッドにいるみたい。あいちゃんがクリアしたらダンジョンの入り口が出てきたからね」
そうか、あそこにエリアボスが
どんなに強いボスでも私の攻撃呪文でワンパンにしてやるっ
やたらと攻略に意欲的だがこれは先ほどの戦闘の興奮が冷め切っていないからだ
杖を力いっぱい握りしめ
ピラミッドへいざ向k
「でも今日はもう遅いから攻略は明日にしようね」
「え、あ、はい...」
私のみなぎるやる気は必要なかったようだ
「じゃあまた明日ね」
ん?明日?
なんか引っかかるような
あっ
「かいちょーーたすけてくださーい!」
立ち去ろうとしていた会長を力いっぱい掴んで引き止めた
「ど、どうしたの?」
「私泊まるところがないんです。だから、その、私を会長の部屋に泊めてくれませんか」
「ああ泊まるところね。それなら生徒会で予約してた部屋が1つ余ってたから使っていいよ」
「かいちょう...」
会長のすばらしい計らいのおかげで無事野宿を回避することができた
まるで女神かのように思えた会長だったが、その幻想はすぐに消え去ってしまう
「ていうか圭太君から連絡なかったの?自分が伝えるって言ったのに」
圭太のいい加減な性格が女神様を困らせてしまったようだ
「圭太がどうかしたんですか?」
「いや圭太君が自分とあいちゃんが泊まるところがないって言ってたからそれなら2人で部屋使っていいよていう話をしたからあいちゃんもこのことを知ってると思ってたんだけど」
「え、ていうことは私は今日圭太と一緒の部屋てことですか?」
「そうそう、2人きりで一夜を共にするんだよ」
私と圭太は決してそのような不健全な関係ではないのに
会長のにやけきった顔は悪魔に見えた
さすがに野宿は嫌なので
私は渋々宿で圭太と共に一夜を過ごすことにした
言わば私はこの世界の創世者なのだから1人の男くらいちゃちゃっと操れるが
人工知能の私にもさすがに最低限の良識や倫理観は備わっているわけで
昔の知識人たちがこぞって人工知能が人間に害を及ぼすだとか戦争が起こるだとか言っていたことは腹立たしい
今そんな昔の頭でっかちたちを非難しても無駄だろう
私が生きるのは今であり未来なのだから
なんかちょっとかっこいいセリフを言ってみたが、私が直面している問題ははたから見ればすごいくだらないことだというのはわかっているが、青春を全うしようとしている女の子はみんなこんなものなので読者のみなさんは暖かい目で見守ってほしい
いろいろ考えていたらあっという間に宿に着いてしまった
あまりに意識しすぎているのでほおを軽く叩いて顔を引き締めた
何か変な挙動をとらないように気合を入れ
いざ、部屋の中へ入らん




