ノイズ
サブタイトルの決まりが悪いのはお察し
"ウヌア惑星衛星軌道上"
宇宙空間に音は伝わらない。そう言われている。
しかし実際はそうではない。音は波紋、つまり物質の振動によって発生し、それが一定密度で物質が集まっているから我々に音が聞こえるのである。そして一定密度で物質が集まるためには重力が必要なのだ。
しかし、宇宙空間には、惑星や恒星などの星々が互いに引き合う力が相互に働いていても、物質にはほぼ関係がなくら密度などなく飛び散る。その為、音が聞こえない。
しかしこれは聞こえないだけであり、振動そのものはある。
そして、この惑星衛星軌道上で発生する衝撃波は、地上へ降り注ぎ、大規模ノイズとして日本を襲っていた。
インペルソナは歯噛みする。
そして命じる。
「やつらを惑星軌道上から遠ざけろ!衝撃波によるノイズを弱らせるんだ!」
「司令、ご近所迷惑を考えるのは結構ですが…質はともかく量が多すぎて押し返せません!…くっ…三番艦中破!航行不能!」
「三番艦はその場で停止、射撃を続行させろ!」
インペルソナと部下、そしてさらにその部下からの報告の応酬が続く。
眼下に広がる、守ろうとする国がどれほどどんちゃん騒ぎになってるかなど、気にも留めないで…
"同時刻、日本国国会議事堂参議院"
「総理、こればどういうことなのですか!未確認飛行物体は突如動きだし、怪我人が出ている!また、匿名で、その未確認飛行物体の乗組員と思しき人物と秘密裏に会談したという情報もありますぞ‼︎」
野党議員の質問に対し、佐藤は回答すべく手を挙げる。
「佐藤内閣総理大臣」
議長が名前を呼ぶと佐藤は質問台まで行く。
「私が未確認飛行物体の乗組員と会談をしたのは確かです」
議会はざわつく。
敵対かもしれない存在と会談をしたとなるととてもでは無いが与党議員も落ち着いていられない。
しかし、内閣メンバーのうち、前嶋官房長官と佐江島防衛大臣だけは平然としていた。
そして、その発言を口実とばかりに野党議員は貶めにかかる。特に赤い野党は。
「では総理、次に総理の執務室の電話に直接アクセスしたと思われる痕跡がありました。しかも、未確認飛行物体が飛翔し、現在も続くこのノイズの中を掻い潜ってです。
総理はここで未確認飛行物体の乗組員と会談したのでは?」
この発言に与党議員がヤジを飛ばす。
「総理の執務室に盗聴器を仕掛けるとは…失礼にも程があるぞ!」
こんな具合が大半だったが、中にはこんなものもあった。
「やっぱり中国の差し金か!赤は帰れ!」
若い与党議員だった。この発言はのちに問題となるが、それよりも問題視されたのは、赤い党が執務室に盗聴器を仕掛けたということだ。
これによって、後に共産主義は国民からも弾圧され、衰退したのは言うまでもない。
佐藤は転移後この国を引っ張り、地位を確立した英雄に近い存在として国民にイメージされていた。その総理執務室に盗聴器。問題にもなる。
が、今は関係なしに佐藤も回答する。
「なんのことやら解りかねます」
すると今度は野党議員からヤジが飛ぶ。
「のらりくらりいい回すなよ!」「誠意を見せろ!」などと飛んでくる。
議長はそれを静粛にの一言で静かにする。
そして先ほど質問した議員がもう一度佐藤に問う。
「本当に何もなかったと?ならこの通信記録は何でしょう?」
「わからないものはわかりません。そもそも何であなた方はほぼプライベートに近い総理執務室の電話の通信記録なんぞ持ってるのかが私には不思議です。どうやって手に入れたのですか?」
「それはお答えし兼ねます」
(フン、やっぱ答えられねぇのかよ)
小声で佐江島が言った。
そこへ佐藤の元に秘書官がやって来て耳打ちする。
「⁈わかりました。すぐに向かいます。議長、諸事情により退室の許可を求めます」
佐藤の秘書官は議長にも耳打ちすると、議長は納得顔で、
「退室を許可します」
とアッサリ許可を出した。
佐藤は早足で議会から出て行くと、執務室へまっすぐ向かった。
「私です。佐藤です。インペルソナ閣下、そちらは一体どうなっているのですか?」
返ってきた返答にはやはり少しノイズ混じりだった。
『申し訳…せん。ノイズ軽減のために敵を押しか…そうとしては…が、数が多くどうにもなってません。撃退は可能ですが、もう少しノイズは続くかと…ます』
ノイズ混じりの通信に佐藤は了解の意を返し、通信は切れた。
「…秘書官、佐江島さんを呼んでください」
「はっ。しかし、総理、佐江島大臣は今…」
「構いません。総理の私がこんなことを言うのはいけないんでしょうが、あんたところで駄弁るよりかは遥かに重要度は高いことです。野党議員から何を言われても構いません」
「はっ。承知しました」
秘書官はスタスタと執務室から出て行くと、今度は結構な速度で駆けて行った。
この時佐藤は、そんなに急がずともいいのに…とぼんやり思った。
10分後、佐江島が息を切らしてやってきた。
「だからそんなに急がずともいいのに…佐江島さん、総理として命じます。国防軍を動かしなさい。特に対空警戒を厳とし、陸海空全軍に通達してください」
「あいつらの敵とやらが来るのか?だとすりゃ国防軍じゃ意味がないと思うが…」
佐江島は思ったことをそのまま述べる。
宇宙人相手にドンパチなど勝てる訳はないと。
「わかってます。あくまで予備です。インペルソナ閣下は負けはないと言ってますが、確証はありません。だから予備なのです」
佐江島は少し悩む。が、自衛隊時代同様、最高指揮官は内閣総理大臣なのだ。大臣としての命令ならともかく、最高指揮官としての佐藤を止めることはできない。
だから佐江島は決意した。成るように成れ、と。
「…わかったよ佐藤さん。すぐに出す」
そう言うと佐江島は、胸ポケットからスマホを取り出し、自身の執務室から秘書経由で国防軍に出撃命令を出した。
それが終わると、佐藤も佐江島もまた議会へと戻って行った。
議会はもちろん紛糾した。しかし、佐藤も佐江島も皆揃ってそれらを軽くあしらい、2時間後、議会は終了した。
それと同時刻、国防軍は全軍対空警戒の命をうけ、その8割の準備を完了し、いつでも来いと言わんばかり体制を作り出していた。




