再会
俺は母さんと一緒に病院の受付のところに来ていた。
消毒液の匂い、行き交う看護師たち、病人たち。さっき目覚め記憶がリセットされてしまっている俺にとってとても別世界に来ているようだった。
「これ書ける?」と退院手続きと書かれた書類を渡してきた。俺はボールペンを握り"進藤拓也"と記した。
書きなれているはずなのにどこか他人の名前を書いているような感覚だった。頭ではわかっている。これが俺の名前なのだということも。
その時だった。バサッと沢山の紙が落ちたような音がした。パジャマを着て、沢山の管が繋がっている女の子がいた。そして床には何枚もの紙が散らばっていた。
俺は反射的に彼女が落としたであろう紙を拾い上げた。その紙を見た瞬間ドクッと心臓が跳ねた。そこには"清水日向"と書かれていた。そして"余命1年"とも。
息が詰まる。清水日向。それは過去の俺が残したノートに書かれていた名前だったからだ。そしてこの子も1年しかないのだという共通点があったからだ。
「どうかした?」と彼女は不思議そうに俺を見ていた。
「あっごめん。これどうぞ」
「ありがとう」
そう言った彼女は小さく頭を下げて立ち去ろうとした。
「清水 日向」
気づけば俺は彼女を呼び止めていた。彼女は驚いた顔で振り向いた。
「どこかで会ったときある?」
彼女は少し黙って、まるで答えを迷っているようだった。
そして静かにゆっくり言い放った。
「去年会ったよ。この病院で。」
拓也君は覚えていないだろうけどと彼女は少し笑っていた。その笑顔はどこか寂しそうだった。
彼女は去年の俺を知っている。なのに何で俺だけ思い出せい。俺のはずなのに俺じゃない別の人のように思えた。
「俺たちどういう関係だった?」
「秘密」
「は?意味わかんねーよ」
「全部最初から話したらつまんないじゃん。」
と少し嬉しそうに話していた。その笑顔を見た瞬間なぜか懐かしいような、愛おしいような感覚におちいっていた。何も覚えていないはずなのに。
「どこに行ったらまた会える?」
気づけばそう口にしていた。彼女は少し驚いたような顔をしていた。
初対面じゃないかも知れない。けど俺は覚えていない。
話したい。一緒にいたい。と思ってしまったんだ。
やがて彼女は変わってねと小さく笑っていた。
「102」
「、、、、、102?」
「病室の番号。今そこにいるから」
「わかった。明日絶対行くから」
「うん。待ってるね」
そう言って彼女は長いロビーの廊下を歩いて行った、、、、。




