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始まり

『1年』

それは長いですか?それとも短いですか?

涙なのか分からないが滲んだ知らない名前が書いてあった。

読めるのに誰なのかは分からない。思い出せない。

けど何故だか分からない。俺は一筋の涙を流した、、、、






俺は誰だ。ここは何処だ。

目を開けると白い天井、白いカーテンに包まれた部屋のベットに俺は横になっていた。

横を見るとサイドテーブルには1通の手紙が置かれていた。手紙には男らしき名前が記されていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


初めまして。進藤(しんどう) 拓也(たくや)です。まぁでも初めましてでもないか。

1年前の君だよ。俺は。思い出せないのも無理はねーか。だって俺は1年しか記憶が持たないんだから。まぁ簡単にいうと俺は1年で記憶がリセットされるらしい。理由は分からない。まぁ脳の機能障害とか何とかかも知れねーけど何処の病院に行っても理由が解明されていないだよな。初めてなんだってさ!俺みたいな人!だからなおしかたも知らねー。

まぁ俺は1年しか記憶が持たないんだったらなんか苦しい記憶とかも忘れられるんだ!って+の思考で生きた方で考えることにした!その方が多分楽だと思う。まっ1年頑張って楽しめ!

                             1年前の進藤 拓也



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は信じることが出来なかった。なんだよ!記憶が消えるって!ふざけるな。

でもどこか納得している自分がいた。だって自分のことも曖昧だし、過去の記憶もこれっぽっちもなかいんだから。


そんなことを考えているとガラッとカーテンを開けた女の人が入ってきた。

「誰」と言われた女の人は切なさそうに顔を歪ませて俺をみた。


「あなたの母です」

「……母、さん?」


自分で言っていて、ひどく違和感があった。目の前にいるのは、確かに“そういう存在”なんだろう。でも。記憶がない。


顔も、声も、何一つ思い出せない。


「ごめん……」思わず目を逸らす。一瞬だけ、沈黙が落ちた。

でも彼女——母は、すぐに小さく首を振った。


「いいのよ」と母さんは優しく言った。その優しさが、逆に胸に刺さる。


「毎年、同じことを言ってるから」

「……毎年?」

「ええ」

母はベッドの横に歩み寄ると、さっきの手紙を手に取った。


「これも、あなたが自分で書いたの」

「……さっき読んだ」

「そう」少しだけ安心したように微笑だ

「あなたはね、毎年こうして目を覚まして、全部忘れてしまうの」

やっぱり、本当だったのか。手紙の内容が、現実として突きつけられる。

「最初の頃はね」と母はゆっくり話し始める。

「泣いて、怒って、どうしてって何度も聞いてきたわ」

少しだけ遠くを見るような目をした。


「でも最近は……」

「……最近は?」

「少しだけ、受け入れられるようになったみたい」

そう言って、俺を見る。

「強くなったのね」


その言葉に、うまく返せなかった。強いのか、諦めてるだけなのか、自分でもわからない。


「……退院、できるの?」

「ええ。体は問題ないから」

「じゃあ、これからどうすればいい」

母は少し考えてから、静かに言った。


「好きに生きなさい」

「……は?」

「どうせ、1年でリセットされるなら」


少しだけ寂しそうに笑う。


「その1年くらい、自分のために使っていいでしょ?」


その言葉が、妙に残った。

『1年』たった2文字の短い単語のはずなのにやけに重く感じた。


「……わかった」

小さく頷く。ただしと母が続ける。


「一つだけ、お願いがあるの」

「お願い?」


母は少し迷ってから、こう言った。

「毎日、何かを書きなさい」

「書く?」

「日記でも、メモでもいい。何でもいいから未来のあなたに何かを送りなさい」と言って俺の名前が書かれていたノートを渡された。そのノートには過去の俺が書いたのであろう字が書かれていた。今日何食べたとか、何を見たとかどうでもいいことも書かれていた。でもなぜかあるページに目が持ってかれた。


"清水 日向"


 “知らない名前”が書かれていたページだった。


「……わかった」と答えながら、なぜか胸がざわついた。

誰だろう。でも過去の俺にとってとても大切な人だったのだろう、、、、、。


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