表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
95/108

第95話 迂回ルートの大ムカデ

大地の押し間違いで、誠司たちは迂回ルートへ。

暗いトンネルの奥から、何か大きなものが近づいてきます。

ガサゴソ。

ガサゴソ。


暗いトンネルの奥から、大きな音が近づいてくる。


ガリ、ガリ。


何かが、壁や床をこするような音が響いた。


「何……この音」


早希が息をのむ。


レイナは銃を構え直した。


「まだ、終わってないみたいね」


翔が盾を前に出す。


「全員、隊列を崩すな」


久美子も盾を構え、翔の横に並んだ。


「はい」


大地は斧を握り直した。


「今度は俺が前で止める」


誠司は杖を構える。

煌成とかすみも、すぐに魔法の準備をした。


トンネルの奥で、黒い影が動いた。


ガサゴソ。

ガサゴソ。


暗闇の中から現れたのは、長い体を持つ巨大なムカデだった。


黒く硬そうな背中。

無数の脚。

鋭い牙。


壁を伝いながら、こちらへ向かってくる。


端末が反応した。


【大ムカデ】

【注意:毒牙あり】

【背中は硬い外殻に覆われています】


「うわ……でかすぎだろ」


大地が顔をしかめる。


「正解ルートなら、こんな敵には会わずに済んだんでしょうね」


レイナが銃を構えたまま、ため息をついた。


「言うなよ……」


大地が気まずそうに目をそらす。


煌成は大ムカデの動きを見ながら、冷静に言った。


「この敵は、ミッションの本筋ではありません。迂回ルートで体力を削るための障害物です」


「余計に腹立つやつじゃん」


早希が短剣を握り直す。


大ムカデが床を這うようにして、一気に近づいてきた。


翔が盾を構える。


「来るぞ!」


大ムカデの牙が、翔の盾にぶつかった。


ガンッ、と重い音がトンネルに響く。


「重い……!」


翔が歯を食いしばる。


久美子も横から盾を押し当てた。


「翔さん、私も支えます!」


「助かる!」


大地が大ムカデの背中めがけて斧を振り下ろした。


だが、刃は硬い外殻に弾かれた。


「硬っ……!」


大地が思わず声を上げる。


背中に連なる黒い殻は、甲羅のように硬い。

正面から叩いても、簡単には傷がつきそうになかった。


煌成がすぐに指示を出す。


「背中は狙わないでください。大ムカデは外殻が硬い。ひっくり返して、腹側を狙った方がいいです」


「ひっくり返すのか?」


翔が盾を構えたまま聞き返す。


「はい。脚を止めて、体の片側を浮かせます。腹側は背中ほど硬くありません」


レイナが銃を構え直した。


「なら、私は目と口元を狙って動きを止めるわ」


早希も手裏剣を握る。


「私は脚と関節ね」


かすみが杖を上げた。


「氷で脚を止めます」


誠司も杖を握りしめた。


「僕は水と風で、体勢を崩します」


煌成は地面に杖を向けた。


「僕が岩で片側を持ち上げます。翔さん、久美子さん、押し込む準備をしてください」


「分かった」


「はい」


大ムカデが再び牙を向けた。


レイナが引き金を引く。


光弾が暗闇を走り、大ムカデの顔の近くで弾けた。


大ムカデの動きが一瞬止まる。


「今!」


早希が手裏剣を投げた。


手裏剣は大ムカデの脚の付け根を狙って飛び、何本かの脚の動きを乱した。


かすみが杖を振る。


「凍って!」


白く輝く氷が床を走り、大ムカデの脚を固めていく。


誠司はすぐに水の魔法を重ねた。


「足元を滑らせます!」


床に水が広がり、その上を風が吹き抜ける。


大ムカデの長い体がぐらついた。


煌成が杖を地面に向ける。


「今、片側を持ち上げます」


床の一部が岩のように盛り上がり、大ムカデの体の片側を押し上げた。


「翔さん、久美子さん!」


「行くぞ!」


翔が盾で押し込む。

久美子も隣で盾を押し当てた。


大ムカデの体が大きく傾く。


「大地!」


煌成の声に、大地が前へ出た。


「任せろ!」


大地は斧ではなく、体ごとぶつかるようにして、大ムカデの横腹を押した。


硬い外殻をまとった長い体が、ついにひっくり返る。


ドシンッ、と重い音がした。


大ムカデの腹側が見えた。


背中とは違い、白っぽく柔らかそうな部分がむき出しになる。


「今です!」


煌成が叫ぶ。


レイナが銃を撃つ。

早希が短剣で脚の動きを止める。

かすみが氷で体を押さえ込む。


誠司は風で大ムカデの体を床に押しつけた。


「動かせません!」


大地が斧を振り上げる。


「これで終わりだ!」


重い一撃が、大ムカデの腹側に叩き込まれた。


大ムカデは大きく体を震わせた。

無数の脚がバタバタと動く。


だが、氷と風に押さえ込まれ、逃げることはできない。


もう一度、大地が斧を振り下ろした。


大ムカデの動きが止まる。


端末が音を立てた。


【大ムカデを撃破しました】

【通行可能です】


「……倒した」


久美子がほっと息をついた。


翔も盾を下ろす。


「全員、ケガはないか?」


「私は大丈夫です」


かすみがすぐに周りを確認する。


「噛まれた人はいませんか? 毒牙があったので、少しでも傷があれば言ってください」


「大丈夫。噛まれてない」


早希が答える。


レイナは銃の残弾を確認した。


「光弾、また一発使ったわ」


「ここで補充すると二倍です」


煌成が言う。


「分かってるわ。今は買わない」


レイナは端末を閉じた。


大地は倒れた大ムカデを見て、深く息を吐いた。


「悪かった。俺が押し間違えなければ、こんなのと戦わなくて済んだのに」


早希は少しだけ眉を寄せた。


「それは本当に反省して」


「してる」


大地は素直にうなずいた。


レイナが銃をしまいながら言った。


「でも、悪いことばかりじゃなかったわ」


「え?」


大地が顔を上げる。


「本当のボス戦の前に、連携の練習にはなったんじゃない? 誰が前に出て、誰が止めて、誰が狙うのか。少し分かった気がするわ」


翔がうなずいた。


「確かに、盾で止めるタイミングは分かった」


久美子も自分の盾を見下ろした。


「私も、翔さんと並んで守る感覚が少し分かりました」


早希は大地をちらっと見てから、ため息をついた。


「まあ……押し間違えたのは最悪だけど、練習になったのは確かかもね」


「だから、それはもう言うなって」


大地が気まずそうに言う。


煌成は静かにうなずいた。


「今のうちに連携を確認できたのは、大きいです。次からは、もっと無駄なく動けると思います」


誠司も倒れた大ムカデを見た。


これは、ミッションの本筋ではない。

ただの迂回ルートで出てきた、余計な敵だった。


それでも、みんなで動かなければ倒せなかった。


一人ではできないことも、役割を合わせればできる。


誠司は杖を握り直した。


「先へ進みましょう」


トンネルの奥へ進むと、少しずつ空気が変わっていった。


暗く湿った空気の向こうに、明るい出口が見えてくる。


そして、トンネルを抜けた瞬間、まぶしい太陽の光が目に入った。


暗い場所に長くいたせいで、誠司は思わず目を細める。


少し先に、別の道と合流する場所が見えた。


端末が音を立てる。


【迂回ルートを通過しました】

【正解ルートと合流します】


「やっと戻れたわね」


レイナが息をついた。


大地は申し訳なさそうに頭をかく。


「次は、絶対に押し間違えない」


早希がじろりと見る。


「次は押す前に、全員で確認だからね」


「分かってるって」


煌成は地図を確認し、前方を見た。


「この先に、猫耳族の集落があります」


誠司も顔を上げる。


山道の向こうに、小さな家々の屋根が見えてきた。

猫耳族の集落だ。


遠回りで時間も体力も使った。

けれど、連携の取り方は少し分かった。


次こそは、間違えない。


誠司たちは正解ルートと合流し、猫耳族の集落へ向かって歩き出した。

迂回ルートで、大ムカデとの戦闘になりました。

本来なら通らずに済んだ道でしたが、誠司たちは連携して敵を倒します。

遠回りで消耗しましたが、ボス戦に向けた連携の練習にもなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ