第73話 海のミッションへ向けて
リリアを竜宮城へ連れていくため、かすみは海のミッションに参加できる仲間を確認します。
そして翌日、レイナと翔へ協力を申し出ることになりました。
誠司から、リリアを竜宮城へ連れていきたいと相談された日の夜。
かすみは、初期エリアからの仲間たちが入っているグループチャットを開いていた。
レイナと翔は、正規の順番でエリアを進まないまま欲望区へ移動したため、二人だけでは海のミッションを始めることができずにいる。
仲間たちで二人のミッションを手伝えば、リリアも一緒に竜宮城まで行くことができる。
かすみは、参加できる仲間を確認するため、メッセージを送った。
『レイナさんと翔さんの海のミッションを、私たちで手伝いたいと思っています』
『ミッションに参加できる人はいますか?』
最初に返信したのは誠司だった。
『僕は参加します』
『リリアさんを竜宮城まで連れていくと約束しました』
続いて、早希から返事が届いた。
『私は大丈夫よ。参加できるわ』
そのあと、大地からも返信が届いた。
『俺も参加できる』
早希と大地が参加してくれるなら、海のミッションでも心強い。
しばらくして、久美子からメッセージが届いた。
『ごめんなさい。今は工房の仕事が忙しくて、今回は参加できそうにありません』
かすみはすぐに返信した。
『大丈夫です。久美子さんは工房の仕事を優先してください』
『こちらのことは気にしないでくださいね』
少し遅れて、優からも返事が届いた。
『僕も今回は参加できません』
『今は、できるだけ若い漁師との交流に時間を使いたいと思っています』
『また船へ乗せてもらえる機会を逃したくないので、こちらの調査を続けさせてください』
誠司が返信した。
『分かりました。漁師のことは優さんにお願いします』
『無理をして危険なことはしないでください』
『はい。気をつけます』
参加できる仲間の返事を確認したあと、かすみは端末から顔を上げた。
同じ部屋にいた煌成は、少し離れた場所で仕事の資料を確認していた。
「煌成さん」
かすみが呼びかけると、煌成が顔を上げた。
「どうしました?」
「レイナさんと翔さんの海のミッションに、みんなで参加することになりました」
かすみは、これまでに決まったことを煌成へ説明した。
レイナと翔の海のミッションを手伝うこと。
ミッションの行程には竜宮城が含まれているため、リリアも一緒に参加すること。
誠司、早希、大地が同行できること。
久美子と優は、今回は参加できないこと。
「煌成さんは、どうしますか?」
「僕も同行します」
煌成は迷わず答えた。
「かすみを一人で行かせるのは心配です。それに、人魚についての調査も気になります」
「でも、海のミッションは危険かもしれませんよ」
「だからこそ、一緒に行きます」
煌成は穏やかに答えた。
「誰かがけがをしたり、体調を崩したりした時は、僕が手当できます」
元医師である煌成が同行すれば、戦いの途中で誰かが負傷した時にも対応できる。
「それに、戦いになっても、前に出ることも、後ろから魔法で援護することもできます」
「前でも後ろでも戦えるんですね」
「状況に合わせます。できることがあるのに、ここで待っているつもりはありません」
「ありがとうございます」
かすみは安心したように笑った。
こうして、海のミッションに同行する仲間が決まった。
誠司、リリア、早希、大地、煌成、そして、かすみ。
そこへレイナと翔を加えた八人で、海のエリアへ向かうことになる。
◇
翌日。
かすみは、レイナと翔の部屋を訪ねていた。
同じマーメイドレジデンスに住んでいるため、遠くまで出かける必要はなかった。
レイナに勧められ、かすみはリビングのソファへ座った。
翔も向かい側に腰を下ろす。
「今日は、二人の海のミッションについて話があって来ました」
かすみが切り出すと、レイナと翔は顔を見合わせた。
「海のミッションですか?」
「はい」
かすみはうなずいた。
「二人だけでは、ミッションを始められずに困っていると聞きました」
レイナは少し気まずそうに視線を下げた。
「私たちは、初期エリアから正しい順番で進まなかったので……」
「今からでも、海のエリアへ進むことはできます」
「でも、俺たちだけでは始められないんですよね?」
翔の問いに、かすみは答えた。
「海のミッションは、私たちも一緒に手伝います」
レイナと翔は、驚いたようにもう一度顔を見合わせた。
「本当に手伝ってもらえるんですか?」
「はい」
かすみは参加する仲間を伝えた。
「参加するのは、この前の私たちの結婚式に来てくれた誠司さん、リリアさん、早希さん、大地さん、それから煌成さんと私です」
「そんなに大勢で来てくれるんですね」
レイナの表情が明るくなった。
「久美子さんと優さんは、仕事が忙しくて今回は参加できないそうです」
「それでも、十分心強いです」
翔が安心したように答えた。
「俺たちだけではミッションを始められずに困っていたので、本当に助かります」
「誠司さん、早希さん、大地さん、煌成さん、私は、一度海のミッションを経験しています」
前とまったく同じ内容になるとは限らない。
それでも、一度通った道や戦った敵について知っている仲間がいれば、初めて挑戦するレイナと翔の助けになる。
「煌成さんは、けがや体調不良があった時に手当ができます。戦闘でも、前と後ろのどちらからでも援護できます」
「リリアさんも戦えるんですか?」
レイナが尋ねた。
「はい。リリアさんも、皆さんと一緒に戦います」
二人にとってリリアは、海のミッションを手伝う仲間の一人だった。
リリアが元人魚であること。
美波と体を交換していること。
美波へ人間の体を返す前に、竜宮城へ帰ろうとしていること。
それらは、レイナと翔には話さないと決めていた。
「ありがとうございます」
レイナは、かすみへ頭を下げた。
「今度こそ、私たちも正しい順番で海のエリアへ進めるんですね」
「はい」
「初期エリアを出た時は、もう正しい道へ戻れないと思っていました」
レイナの言葉に、翔もうなずいた。
「でも、今からでもやり直せるなら、俺たちも挑戦したいです」
「分かりました。それでは、皆さんの予定を確認して、出発する日を決めましょう」
「お願いします」
話し合いのあと、かすみは仲間たちへ、レイナと翔が海のミッションへの参加を決めたことを伝えた。
これで、同行する八人がそろった。
これから、それぞれが出発の準備を始める。
武器や魔法に使う道具。
回復のための薬。
海の中や水辺を進むために必要なもの。
前回のミッションを思い出しながら、必要なものを確認していくことになる。
レイナと翔にとっては、止まっていたミッションを再び進めるための出発。
リリアにとっては、美波へ人間の体を返す前に、もう一度故郷へ帰るための旅。
それぞれの思いを抱えた八人が、海のエリアへ向かおうとしていた。
海のミッションへ参加する八人が決まりました。
それぞれの目的を胸に、海のエリアへ向かう準備が始まります。




