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第105話 水が戻った森

山奥の滝の異変を解決した誠司たち。


流れを取り戻した水は、妖精の森、花畑、そして猫耳族の村へ向かって流れ始めます。

山奥の滝には、力強い水音が戻っていた。


白い水しぶきが岩肌を流れ落ち、滝つぼからあふれた水が、山の下へ向かって進んでいく。


誠司たちは、その流れを確かめてから妖精の森へ戻ることにした。


来た時には細かった水路も、今は澄んだ水で満たされている。


岩の間を流れる音も、前より大きくなっていた。


「ここまで変わるものなのね」


レイナが水路を見ながら言った。


「源流が止まっていた影響が、それだけ大きかったということですね」


煌成が答える。


優は水の流れと周囲の岩を確認した。


「内部水路に残した黒氷は大丈夫なのか?」


「端末が回収処理を始めています」


煌成が画面を見せる。


【黒氷の結晶を隔離しました】

【水源への影響はありません】

【回収作業を進行中です】


「なら、今は問題なさそうだな」


翔が盾を端末へ収納した。


大地も斧をしまいながら、肩を回す。


「大山椒魚を倒さなくてよかったな」


「最初から倒したら駄目って出てたでしょ」


早希が言う。


「分かってる。結果的によかったって話だよ」


「大山椒魚も、黒氷のせいで暴れていただけですからね」


かすみは、流れる水を見ながら答えた。


久美子もうなずく。


「元の場所で、また静かに暮らせるといいですね」


山道を下っていくと、やがて妖精の森が見えてきた。


森の中を通る水路には、すでに変化が起きていた。


昨日まで止まりかけていた流れが戻り、小さな水車が回っている。


宿のそばにある井戸にも、澄んだ水がたまっていた。


「水が戻った!」


小さな妖精たちが、水路の上を飛び回っている。


「井戸もいっぱいになってるよ」


「花灯りの水も使えるよ」


宿の管理人をしている猫耳族の夫婦も、井戸のそばに立っていた。


誠司たちの姿を見つけると、二人は急いで近づいてくる。


「滝の異変を解決してくださったのですね」


管理人の男性が言った。


「はい。水路を塞いでいた岩や土砂と、黒氷を取り除きました」


煌成が説明する。


「源流にも水が戻っています。これからは、一時的な魔法がなくても水が流れるはずです」


管理人の女性は、井戸を見た。


「料理も、飲み水も、お風呂も、これで安心して使えます」


「新しいツリーハウスも、ちゃんとお客様を迎えられますね」


久美子が言う。


管理人の女性は、嬉しそうにうなずいた。


昨日完成させたツリーハウスにも、水が通り始めていた。


小さな洗面台から水が出る。


お風呂やシャワーにも、水が送られている。


妖精たちは高い場所を飛び回り、花灯りや窓を整えていた。


「新しいお部屋、今日から使えるね」


「お水も出るよ」


大地は完成したツリーハウスを見上げた。


「昨日作ったものが、ちゃんと宿になると嬉しいな」


翔もうなずく。


「水が戻らなかったら、完成しても使えなかったからな」


優は森の中に並ぶツリーハウスを見た。


「合流してすぐの仕事だったが、完成まで手伝えてよかった」


「今度は観光で泊まりたいわね」


レイナが言う。


「ミッションの途中じゃなければ、ゆっくりできそう」


早希も、木々の上にかかる橋を見上げた。


「夜の花灯りも綺麗だったしね」


誠司たちは、花の妖精たちに案内され、妖精の花畑へ向かった。


森を抜けると、昨日とは違う景色が広がっていた。


細かった小川には、澄んだ水が流れている。


しおれていた花も少しずつ元気を取り戻し、色とりどりの花びらが風に揺れていた。


ミツバチたちも、花から花へ飛び回っている。


「水が来たよ」


花の妖精が、水路のそばを飛びながら言った。


「花の根まで、ちゃんと届いてる」


誠司が降らせた小雨は、一時的なものだった。


けれど今は、山奥の滝から流れてきた水が花畑を潤している。


もう、誠司たちがここを離れても水は止まらない。


「本当にありがとう」


花の妖精が頭を下げた。


「ミツバチも助けてくれて、滝の水も戻してくれて」


「僕たちだけでできたことではありません」


誠司は静かに答えた。


「みんなで進んだから、解決できました」


煌成が端末を確認する。


【妖精の花畑】

【水量:正常】

【花の回復を確認しました】


【妖精の森のお宿】

【生活用水:正常】

【宿泊施設を利用できます】


「次は猫耳族の村へ報告ですね」


かすみが言った。


誠司たちは、花畑を抜けて村へ向かった。


村へ近づくにつれ、水の流れる音が大きくなっていく。


村の入口まで来ると、水路には勢いよく水が流れていた。


ゆっくりとしか動いていなかった水車も、今は力強く回っている。


ゴトン、ゴトンと音を立てながら、粉をひくための仕組みが動いていた。


畑では、村人たちが水路から水を引いている。


洗濯機の修理を頼んできた女性も、家の前で洗濯物を干していた。


「水が戻ったんです」


女性は誠司に気づくと、すぐに近づいてきた。


「洗濯機も、今度は魔法を足さなくてもちゃんと動いています」


「よかったです」


誠司が答える。


大地が手伝った畑にも、水が行き渡っていた。


乾いていた土が潤い、弱っていた作物も少しずつ上を向いている。


薬草を育てていた猫耳族の女性も、かすみと早希に声をかけた。


「薬草の根元まで水が届きました。これなら、また育ってくれそうです」


「すぐに採りすぎないで、少し休ませた方がよさそうですね」


かすみが薬草の状態を確認する。


「はい。大事に育てます」


村の広場には、多くの猫耳族が集まっていた。


村長が誠司たちを迎える。


「山奥の滝に水が戻ったことは、水車の動きを見てすぐに分かりました」


村長は深く頭を下げた。


「村を助けていただき、本当にありがとうございます」


「滝の内部に、黒氷に侵された大山椒魚がいました」


煌成が説明する。


「黒氷をすべて取り除き、塞がれていた源流を開きました。大山椒魚も元の状態に戻っています」


「水源を守る主まで、助けてくださったのですね」


村長は安心したように耳を動かした。


端末が音を立てる。


【猫耳族の村クエストを達成しました】


【山奥の滝の異変を解決しました】


【報酬が支給されます】


【山ミッション進行度が上昇しました】


全員の端末に、報酬の数字が表示された。


大地が画面を見る。


「結構増えたな」


「途中で薬や弾を使った分もあるから、全部使わない方がいいわね」


レイナがすぐに言った。


「安全な場所にいる間に、必要なものだけ補充しましょう」


翔もうなずく。


「奥で買えば高くなるからな」


優は地図を開いた。


山奥の滝には、達成済みの印がついている。


猫耳族の村。

妖精の花畑。

妖精の森のお宿。


それぞれの場所にも、水が戻ったことを示す印が表示されていた。


その先には、まだ訪れていない場所が残っている。


山の湖。

深い洞窟。

古い城。


端末に、新しい案内が表示された。


【次の目的地を選択してください】


【山の湖】

【深い洞窟】

【古い城】


「次はどこへ行く?」


早希が画面を見た。


大地は古い城の表示を押しそうになり、途中で手を止めた。


「……押さないからな」


「それでいいの」


早希が言う。


煌成は地図を広げ、三つの道を確認した。


「今すぐ決める必要はありません。今日は村で装備と薬品を確認して、次の道を考えましょう」


「賛成です」


久美子が答えた。


レイナも村の水路を見た。


「せっかく戻ってきたんだし、少し休んでもいいんじゃない?」


誠司は、勢いを取り戻した水車を見た。


山奥の滝の異変は解決した。


けれど、山ミッションはまだ終わっていない。


次は、山の湖か。


深い洞窟か。


それとも、古い城か。


誠司たちは猫耳族の村で体を休めながら、次の目的地を決めることにした。

山奥の滝から流れ出した水が、妖精の森、花畑、猫耳族の村へ届きました。


水車や宿の生活用水、畑や薬草も少しずつ元の状態へ戻っていきます。


滝の異変を解決した誠司たちの端末には、次の目的地が表示されました。

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