エピソード12:所謂強敵枠というか東映特撮ファンにはお馴染みのパターンなんだけど、東映特撮詳しくない人間にはなんのこっちゃだろうなこれ……
場面は前回から引き続き、
五干市は育海海岸……
「……ふう。ゴミが片付いて、スッキリしたのだわ」
グルメフェス会場を襲撃していた
"神殿十二勇将"を瞬く間に全滅させながら姿を現したのは、
所謂"清楚系"の身なりをした美しくも不自然に不気味な女。
「たかが"注射嫌いの泣き虫"風情が息巻いて、
目障りったらありゃしない……」
敵の敵なんだから味方だろうと思いたいのが人情だが、
どうにもそうは問屋が卸しちゃくれなさそうな、
"如何にもな怪人臭さ"を漂わせていて………
「……ねえ、アナタもそう思わないかしら?
遺恨リーパームジョウ……
私のオリジナルさん?」
(やっぱり、こいつ……!)
まして曲がりなりにも"ギネス級の一流"たるユウトが、
そう容易く警戒を解こうハズもねえ。
何なら自分から正体開示までしてくれたなら、
かえって余計に警戒すんのが妥当ですらあった。
ともあれ、ここでオーソドックスに取り乱した挙句
『質問を質問で返す』ようじゃ、それこそ"ギネス級ヒーロー"の名が泣くってモンで……
『……まあ、連中が目障りってトコは同意だな』
第一声は"共感"だった。
『然し"注射嫌いの泣き虫"とは……
到底そうは見えなかったが、まさか』
「ええ、その"まさか"なのだわ。
令和神殿騎士団傘下怪人部隊"神殿十二勇将"……
その実態は現反標準医療主義の勢力を纏め上げる"活動家"ども……
ひと呼んで"LESION13"の成れの果てなのだわ」
反標準医療主義ってのは、
読んで字の如く標準医療全般に否定的なスタンスを取る思想体系のことだ。
奴らは例えば
"肺炎ウイルスのワクチンにはマイクロチップが混ざってて打たれた患者は操られる"とか、
はたまた"インフルエンザウイルスのワクチンを打たれた患者は内臓が腐っていく"とか、
そんなようなアホ臭い、然したる根拠もねえ言説を真顔で広めちゃ、
俗世の罪なき無辜の民を騙したり騒ぎを起こして私腹を肥やしてる。
そのバックには当然、
常に欲の皮を突っ張らせたクズどもが犇めいてるが……
この時代にあってその中枢を担ってたのは、
特に十三人の"活動家ども"と言われていた。
政治家の親族に医者くずれ、
悪徳テレビマンや組織を追放された木端ヴィラン等
様々な経歴の持ち主からなる外道どもを、
その有害さに因んで特にネットユーザやメディアはこう呼んだ……
"十三の病巣ども"ってな。
『……なぁ~んてこったよ。
ウイルスやワクチンがどうこう言ってたんでまさかと思ったら、
まさか令和神殿騎士団に拾われて幹部級怪人に成り果ててるたぁなぁ。
確かに奴らといえばここ最近は目に見えて"落ち目"だったし、
そっちの組織は"そういう連中"の受け皿でもあるならまあ、自然っちゃ自然か』
「ええ。そもそも上層部は奴らさえ"本命"の前座、
ただの捨て駒としか思っていなかったほどなのだわ」
『"本命"、ねえ。……まるで"より強い怪人が後に控えてる"みてえな言い方だな』
「"みたい"ではないのだわ。
実際、あんな"泣き虫"どもなんて目じゃない程の怪人……
"令和神殿騎士団の最高戦力"が、今まさにあなたの目の前にいるんですもの」
『……やれやれ、やっぱ"そっちのパターン"かァ……』
その台詞でもって、ユウトは改めて理解させられた。
目の前にいるこの女こそが、紛れもなく"令和神殿騎士団最強の怪人"で、
かつさっき神殿十二勇将の面々を鏖にした張本人だっつー事実を。
さて、となると気になるのはこの女の名前だが……
「……申し遅れたのだわ。
令和神殿騎士団"特務侵略隊"初代隊長のグラティア・サンジョーなのだわ。
以後お見知りおきを、"ホンゴウ・ユウト"さん」
(当然俺の本名も知ってるか……
まあ名乗る手間が省けたのは一先ず好都合、だが)
その他の事は不都合ばかりだ。
何せ目の前の敵が令和神殿騎士団の最高戦力で、
ムジョウと同じ"四大元素"の攻撃を、
しかもかなり器用に繰り出せるって意外にロクな情報がねえんだからな。
(あと分かってんのは精々、
ヤツがやたら強くて、しかも"属性攻撃"が俺より巧みってぐれえか)
迂闊に手を出しゃどんな形で迎撃されるか判らず、
然し遅延で増援を待つのも現実的でなく……
となりゃ、選択肢とて限られてくる。
『……訊くがよ、何故奴らを殺した?
如何に目障りだろうが一応同じ組織の構成員……
イッパシの怪人が十一匹も手元にあるなら、
何かしら"使いよう"ぐれえあったんじゃねえのか』
「いい質問なのだわ。
確かにあのゴミどもとて、腐っても一応"令和神殿騎士団"の怪人……
あなたの言う通り、使おうと思えば案外使えたかもしれないのだわ」
それでもこの女が神殿十二勇将を殺したのには、
当然この女なりの理由があったワケだが……
「けれどゴミは所詮ゴミ。
やれ『注射が怖い』、『苦い薬はイヤ』、『病院に行きたくない』……
そんな幼稚な言い分を屁理屈や造語で飾り立てて、
"それらしく"高尚に見せかける……
元からそんな程度のものだったのに、
高い金をかけて怪人にして貰ったところで
ヒーロー一人の奇襲攻撃も捌けはしない。
余りに無能が過ぎるのだわ。そんな連中、使う価値があると思って?」
なんともまあ、理不尽ったらねえ言い分だ。
そりゃヴィランなんだから悪逆非道なのは当然として、
然し令和の時代にここまで身内への思い遣りがねえ奴もそう居ねえ。
「そもそも私は令和神殿騎士団の切り札、
組織の未来を背負って立つ存在……。
あなた程度の強敵ぐらい、
一人で倒せなくてはその名が泣くのだわ」
[リマインドライバー!]
グラティアが手を翳せば、
ヤツの腹には無機質で簡素なデザインのベルトが現れる。
さながら限界まで無駄をそぎ落とした
クラナドライバーの量産型モデルって感じのデザインだ。
(ベルト使った変身型……
ま、"ムジョウ"の模倣品ならそんなもんか)
対するユウトはあくまで警戒を解かず手も出さねえ。
この手の戦闘者は変身妨害対策を徹底してるモンだと、
他ならぬてめえ自身よく理解していたからだ。
「いざ、変成ッ」
[変成! リマインダー! リマインダー!
怨恨! リマインダー!]
やけに凝ったフレーズが流れるや否や、
虚空に光り輝くエネルギー体からなる発行体が発生……
瞬く間にグラティアの身体に潜り込み、
ヤツの肉体を瞬く間に変化させていく!
[猫に九生! しぶとく転生! 明日は明日の風が吹く!
バ・ス・テ・ト・モォォォォド!]
そして変身は完了……
樹脂製品か陶磁器みてーな質感の装甲を持つ、
黄色い猫獣人型のガイノイド風戦士がそこにいた。
『忘れるなかれ、我らが怨み……
風化はさせぬ、この恨み……
怨恨リマインダー【バステトモード】
しなやかに推して参るのだわっ』
その名も"バステトモード"。
ネコ科肉食獣の身体能力を風の力で底上げする"怨恨リマインダー"の基本形態だ。
『地獄の番犬に対抗して猫の女神か。
面白え、久々に骨のある相手と"殺り遭えそう"な気がしてきたぜ……!』
かくして海育海岸は、
"遺恨刈り取る者"と"怨恨想起させる者"……
二匹の化け物どもによる凄絶な死闘の開始点と化す!
~今回の質問~
Q.ぶっちゃけどうよ、怨恨リマインダー。ちゃんと強敵感出てるかな?




