第八陣:避け得ぬ"遭遇"である
場面は前回から引き続き、西暦2017年3月7日。
東海地方某所の都心部に建つファミレスの店内。
「お客様、恐れ入ります……」
『はい、どうしました?』
それはユウトがヌートリアの炭火焼を食ってる最中のこと。
奴は店員の一人から徐に声をかけられた。
「只今お席が大変込み合っておりまして、申し訳ございません。
宜しければ相席でお願いできればと存じますが」
神妙な面持ちの店員に思わず身構えるユウトだったが、
果たして何事かと思えば、何のこたァねェ相席の相談だった。
(こんな感じで声かけられるんだなァ……)
ユウト自身、四世撃退の為とはいえ店を荒らしちまった負い目もある。
ましてそんな自分を追い出しもせずウマい飯を食わせてくれているなら、
相席の申し出ぐれぇ断る理由もありはせず……
『ええ、構いませんとも』
快諾一択。
果たして相手側がどんな奴なのかロクすっぽ確認もせず、
ユウトは相席を受け入れたんだ。
「こちらになります」
「ありがと……」
「助かるわァ~」
(ホウ、こりゃまた……)
程なく店員に連れられてやってきたのは、
"今の"ユウト程じゃねえにせよ大概ノッポな男女二人組。
女の方は身の丈百七十センチ程。
艷やかな黒のストレートロングヘアに澄みつつも鋭い紫色の瞳で、
美しく整った顔立ちはクールビューティ路線、
プロポーションも女優やグラドルとして天下を取れそうなほど抜群だった。
ヨーロッパ圏の軍服っぽい装束に身を包んでいる辺り、
見た目が地球人に近いだけの異世界人なんだろう。
そして男の方はより背が高く身の丈は推定二メートルに迫る勢い……
なんだが、加えてこっちは明らかに見た目が人間じゃねぇ。
有り体に言えば全身真っ白な長毛で覆われたイヌ科の獣人だったんだ。
細長くも屈強な体格やどこか女性的な所作、
やはり異国情緒溢れる服装、
果たしてどうやって固定されてんのかわからん眼鏡など特徴は幾つもあるが、
特筆すべきはやはり如何にも地球人離れした
――ともすりゃ異世界人なのが明らかな――
ビジュアルをおいて他にねぇだろう。
「いやぁ〜助かったわァ。
満席って聞いたときはど〜しよ〜かと」
「本当に、感謝するわ」
『いえいえ、何てことはありませんや。
困った時は助け合わなきゃでしょう』
二人組は随分と社交的だった。
加えて距離感がやたらと近く、
ともすりゃそれなりに親密な仲だと察するのは容易い。
つってもユウト自身、飯屋の相席など今まで経験がねぇもんで、
果たしてどう接したらいいもんか迷っていると……
「それにしてもあなた、思いの外優しいのね。
世間ではやれ性格が悪いだの心がないだの、
吐き気を催す邪悪だのと言われがちだけど……」
『……!?』
女の唐突な台詞に、ユウトは背筋が凍り付くような感覚を覚えた。
例えるなら脊柱管か、はたまた背骨に沿った大動脈に、
液体窒素かドライアイス入りメタノールでも流し込まれたような、
そんな感じ(?)だった。
(なんだっ、この女ァ……!
俺がヒーロー業界入りどころか成人もしてねえ時期に、
あたかも"ムジョウ"を知ってるみてえな発言を……!)
さては正体を勘付かれたか。
はたまたそれこそDORAARSの追手か。
何れにせよ動揺など見せちゃいられねえと、
ユウトははぐらかしを試みるも……
『……その、すみません。
一体何の――
「ンモー、何やってんのルーちゃんてばぁ〜。
名乗りもせずいきなりそんな風に言ったら警戒されちゃうでしょ〜?」
「うぐ……た、確かに……」
オネエの犬野郎に割り込まれちまう。
明らかに狙いすましたタイミング……
逃さねえって意思を感じずにいられねぇ。
「ゴメンなさいねぇ〜?
このコってば長年荒事ばっかりだったから、
こーゆーの慣れてないのよ~」
「……非礼を詫びさせて頂戴。聊か焦り過ぎてしまったわ」
奴らの口ぶりときたらやはり、
ユウトらの存在を予め知っていて、
敢えて接触すべく"相席になりに来た"意図が透けて見えるようだった。
(……やべぇやべぇやべぇやべぇ、やべぇってコレ。
レンジで温めた飯を出さないまま存在ごと忘れて、
結局腐らせて捨てるしかなくなった時よりやべぇって。
どうすんだよこの状況……てかこの二人、多分DORAARSだよなァ~)
ユウトは不安に苛まれっぱなしだった。
学生時代の、特に期末・学年末試験の結果発表を待つ時か、
さもなきゃ職場の上司から理由も告げられず呼び出し喰らった時みてーな、
そんな心境だった。
逃げ出したかった。こんな連中となんて関わり合いたくもなかった。
何せ相手は(推定だが恐らく)DORAARSの構成員だ。
あっさり死んだ地球のクロノルーラー族に代わり、
時の流れを管理する組織に所属してやがる。
しかもそれだけならまだしも、
奴らは不正なタイムトラベラーにトコトン容赦がねえ。
特に過去へ飛んだ奴らを消すとなったら手段を選ばず、
どんな犠牲が伴おうと排除しにかかりやがる。
(きっとこうして接触してきたのだって、
ブチ殺す前の取り調べが目的なんだろうぜ)
ユウトは腹を括ったが、
さりとて帰還と生を諦めたワケじゃなかった。
そしてまた、それはテリテスターターも同じだったワケだが……
「改めて自己紹介をさせて貰うわ。
時空管理機構DORAARSオヴァラー第二大隊所属、
ヴァルトルーデ・ハルトマン准将よ」
「同じくDORAARS准将、ナンヴァー第六大隊所属のモロハシ・マガイよぉ〜。
宜しくね、"遺恨リーパームジョウ"くん♪」
(や~っぱりかァ~……)
軍服女と犬オネエの名乗りでもって、疑惑は確信へと変わる……!
https://mond.how/ja/69440_Uwabami
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続きのエピソードは明日2026年5月24日に更新予定です




